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分解を行おうとしたら、周りが真白になって、何かに引き込まれるような感覚があった。
視界に突如として現れたのは圧倒的な赤。
妖艶に微笑む彼女に思わず手を伸ばすと、その手を掴まれる。
「其方が妾の裔かえ?……勿体無いことよの、コレを外に出すとは」
呆れたようにそう口に出す。
どこかで見た彼女は……。
「赤の始祖、アメリア様……?」
思い当たった名を呟けば、ニィと口角を上げる。どうやら正解だったようだ。
「ここに至った其方故、妾の力をくれてやろう。なぁに、黄金と黒曜が耐えられたのだ。妾の裔が耐えられぬ道理はあるまいて」
鈴を転がすような美しい声が、不穏な言葉を発する。
返事をする前に彼女は私に彼女の生前の技術と知識、魔力を埋め込む。それによって私の中の魔力は膨れ上がり、身体に痛みが走った。
熱くて鉄の臭いがするそれを吐き出し、苛む痛みに耐える。
痛くて痛くて、苦しくて。
それしか考えられず、けれど意識を他に持っていくこともできずにいると、彼女は愛おしそうに私の頭を撫でた。
「熱く胸を焦がす大切な何かを、情熱的に……いや、アレらに言わせれば強欲か?そうやって突き詰めてこその“紅玉”である。其方もそのように生きると良い。妾の裔よ」
その言葉を聞きながら、「いやそれアマーリアの死亡フラグ……」と思いながら、意識を手放した。
……ら、目が覚めた時には三日が経過していた。
目が覚めても身体中の痛みが凄い。なんというか程よく死にたくならなくて「絶対死後の世界でぶん殴ってやるからな!」という決意をする程度の痛さ。死なせてくれって思う痛みでなかったのだけが幸いである。
殿下達は何故か居なくて、サミュエルとルース、ウィルが交代でお世話に来てくれていた。こういうのって普通女子に頼むもんだと思う。あとなんでサミュエルの借りてる部屋なの?
「何か考えてるみたいだけど、そんな暇あったら必死にポーション飲み込んで寝て」
「サミュエルも心配ならそう言えばいいのにな」
ウィルがそう言うと、サミュエルは結構ガチの蹴りを脛に当てていた。
まぁ、危機的な事は終わったって事で良いのかな?