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この国、実はめちゃくちゃ雪が降る。
しかも春先まで溶けない。
おかげで冬季の長期休暇は冒険者ギルドでの寝泊まりとなった。寮?閉まってるよ!
無理をして馬を走らせても無事に帰れる保証がない以上は王都にいる方がマシである。エヴァとお茶したり、ノアも誘ってダンジョンへ行ったりしてるので、家族と会えない以外はあんまり困ってない。嘘です。家族と会えない時点で超困ります!
ルースとウィルは忙しいらしい。まぁ、おそらく貴族な二人だから、新年のパーティーだとか挨拶回りだとか、貴族特有の面倒そうなイベントがあるんだと思う。イザベラも来ないので静かなもんだ。
そういえば、クリスマスではないけど、この世界にも聖夜とかいう概念がある。女神が祝福を与えた日なんだって。女神がこの世界を作ったみたいな神話あるけど、その祝福を受けているはずの聖女が聖女なので、どこまで神話信じて良いのかわかんない。
祈りの能力的に突き抜けた女が聖女って呼ばれるのであって、魅了の方はあくまでサブスキルってとこが怖いよね。役目終えたら消えたりとかしないんだろうか、魅了。
なんというか、平和になった後の聖女の記述ってあんまり残ってないみたいなんだよね。
……うーん、気になるようなそうでもないような。
そんな聖夜はサミュエルとご馳走食べてた。サミュエルに「帰らなくて良いの?」って聞いたら「平気」って言ってたけど本当だったのかな?
最近ちょっと周囲というかサミュエルがピリピリしてるように見えることがあるから、私の知らないとこで何かしら起こってるのかもしれない。
思えば知り合いも増えたし、自分が血筋的に割と重要な立ち位置にいた感じのことも知ってしまったから、大変だった。
でも、きっちり自分の立場を整理できたのは良かったと思う。
もう厄介な事起こらないでほしい。
冬季休暇終わったら魔法の実技訓練が始まる。魔力量によって三人一組とかでチームを組む。
上位クラスなのでみんなそこそこの魔力量なんだけど、原作では王子とその学友の二人とアマーリアが組まされてたからそうなるんじゃないかと思うと怖いわ。
身分。身分を考えて組んでほしい。
「やだ……王都すごい。お餅が出回るなんて。これはお米もあるのでは?」
それはともかくとして、今は休暇中。
年末年始のマーケットは賑わうものだ。
私は女神様の神殿で「平和に過ごせますように!」とお祈りをして、すぐに城下のマーケットへ来ていた。
その出店でお餅と醤油ときな粉を買ってギルドにある部屋へと向かおうとすると、「レノン」と声をかけられた。
「あれ、ルース?」
「大荷物だな。持つよ」
珍しく一人の彼に荷物を持ってもらうと、ギルドの部屋まで運んでもらえた。
「新年だけど挨拶回りだとかは良かったの?」
「最低限はこなしてきたよ。弟を跡継ぎにしたいらしいから僕は居ても居なくても一緒なのさ」
「へー」
その後、サミュエルも巻き込んで普通に三人でお餅焼いて食べた。
ダンジョン産の砂糖混ぜたきな粉美味。……ダンジョンでお砂糖とか蜂蜜とらないと高くて買えたもんじゃないんだよね!世知辛い!
あけましておめでとうございます。
とりあえず一月中に第一部が終わればいいなぁ、と思っております。