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「痛い痛い痛いごめんなさいー!!」
頭を鷲掴みされてギリギリと力を込められる。めちゃくちゃ痛い。
「そりゃあ、痛いだろうねぇ?痛くしてるワケだし」
ニコリと微笑むサミュエルからは黒い何かが出ていた。
勝手にローガン用アミュレット受け渡しの窓口にしたから案の定怒られている。あと、出会ったきっかけ(八つ当たりリンチされた)のこともバレて尚のこと怒られている。
「全く。あまり無理を通させるものではないよ。反撃くらいしてしまえ」
「貴族が平民ぶん殴ってもお咎めなしだけれど、平民が貴族殴ったらやばい事になるじゃん……」
「何も正面切ってやれとは言わないよ。バレなければいいんだよ」
「そんな向いてないこと言われても困るよー!」
そう言うと、呆れた顔をされてしまった。挙句、「君は良くも悪くも素直だからね」なんて言われてしまった。そんなにか!?
「まぁ、血縁だからとマリアとかいう女をどうこうしなかったことは褒めてあげよう」
褒められるのはなかなかレアなのでちょっと嬉しい。……待て、私はこいつの犬か何かか!?
「そうそう。君のアミュレット、結構高値で売れているよ」
思い出したようにそう言って、サミュエルは私の頭を解放した。
何を隠そう、サミュエルの実家は商会を経営しているのだ。シュバルツ商会って言うんだって。王家御用達のすごい商会らしく、サミュエルは三男なのでそこまで関係ないんだけど、鑑定人として重宝されてるんだって。魔物使いとか、そうそう何かに利用されるスキルじゃないらしい。
「錬金術師を紹介してくれって言われているけど、君は出ない方がいいよね?」
「うん。あくまでお小遣い稼ぎだからねぇ」
錬金術師自体がそれなりにレアなので囲い込みとかがあるんだって。まぁ、サミュエルに使われるんだったら、恩もあるしある程度は仕方ないかもって思うけど、よその人はねぇ?
もらった詳細の書類を見ながらお茶を飲んでいると、ノックもせずにヤツが現れた。
「レオノアさん、今日は空いてますよね!?」
「ノア、君には一応何度も言っているけれど、レオノアがいつもここにいるとは限らないし、ノックぐらいしてくれ」
「大丈夫です!いない時は分かります、こう……ビビッと!」
本当に私のいない時は来ないらしい。どんな嗅覚だ。
「本当にここだったんだな」
「……ノアって犬だったのか?」
続いて、複雑そうな顔のルースとウィルが現れる。
「あれ、ウィル。剣新調した?」
「分かるか?背が伸びたから親父に言われてな」
ウィル大きいもんな。体格でいうと第一王子の側にいる騎士団長の息子に似て……いや、顔も似てるかもしれん。ま、そんな人が冒険者なんてやらないかー!
「レノン、久々にダンジョンに潜らない?」
「いいよ!」
ルースの誘いに応じるために装備品のチェックを始める。魔石補充したいですし!