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悪いなと思いながらも鑑定を使うと、「橙の魔法使い」と出たので、あきらかにそっちの方が腕っ節強いのに威嚇する彼を呆れ半分に見つめた。念のために防音魔法をかけて、向き直る。
「えっと、色々秘密にしておいて欲しいんですけど良いですか?」
「秘密だと?」
「いやだって、生家が関わると私ちょっと困るんですよ」
ガルシアに行く気はないし、ハーバーはなおのこと。むしろ滅びて欲しい。もう何かしようって気はないけど、胃が痛くなるから。
「あと、愚かやら何やら言ってたけど私まだ全部を知ってるわけじゃないから事情が分かりません。でもとりあえず、錬金術師としてはアミュレットはもっと良いものを持つ事をオススメします」
こんなやつが近くにいると知っていたら、私だって作って持ってきたんだけどね。同類同士潰し合うなんてしてもロクな事にならないっぽいし。
「……聞いていた情報と少し違うな。赤の魔女という生き物は苛烈で残忍だと伝わっているが」
「あ、そういうのないっす。祖母も母も大人しめだったらしいですし!ちなみに私は五歳から超良心的な平民の両親に育てられたのでそう育ちませんでした」
「……赤の家だって愚かじゃないか」
そう呟いて、彼は椅子に沈み込む。ふと魔力を感じると、彼の髪は栗色に、瞳は深海のようなブルーへと変化していた。
「俺はローガン・アウラ。今の君は何という名なんだい?」
「私はレオノアっていいます。アウラ様」
「仲間内で話すときはローガンでいい。いつも通りに話せ」
疲れたような声音が痛々しい。マリア一体何したの。
「先ほどのアレが何か、お前に心当たりはあるか?」
「これはあくまで私の予測だけれど、マリア・ハーバーは聖女ではないかと思ってる」
「聖女……?どこをどう考えたらそうなる」
忌々しげにそう言うローガンに同類から聞いた話をすると、納得したような顔をした。
「ローガンさえ良ければアミュレット作るけど、貴族なんだしお金かけたらもっと良いの買えたりする?」
「いや、レオノア。君に頼みたい。実家の連中とは反りが合わなくてな。貴族といえども、俺はそう金ももらっていない」
私たちの条件って家族に恵まれない事なのか?
……そうでもないかな。イザベラは家族と仲良しだって聞いたし。
「じゃあ、冒険者ギルド二階の第三鑑定室のサミュエルってやつに預けておくから」
明日以降取りに行ってねって言って私は保健室を出た。材料はあるし、連絡用にと預けられている梟に括り付けて預かってもらおっと!
……勝手に窓口にしたから怒るかな。