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りんごの怪談記録メモ~怪談話の謎を解け!~  作者: たかしろひと
第1章
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血まみれカーブミラー 2

 翌日。

 梨郷と僕はお互いに学校が終わってから合流して、問題のカーブミラーのところへ行……こうとしたのだが、


「尚ー!」


 待ち合わせ場所で待っていると、梨郷が見知らぬ車の窓から手を振っていた。


 僕は思わず車に駆け寄る。


「何やってるんだ。知らない車に乗っちゃダメだろ?」


「失礼な! ていうか、藍沢さんにすっごく失礼だから」


「藍沢さん?」


 運転席を見ると、ロングヘアで眼鏡の女性が微笑んでいた。


 ああ、例のメイクさんとやらか。


 助手席の窓が開いた。


「こんにちは。あなたが茅部尚君? 噂は聞いてるよ」


 噂? 梨郷は僕の何を吹聴して回ってるんだ。


「さ、乗って。カーブミラーまで送って行くからさ」


「はぁ」


 助手席に座るのもあれなので、後ろの席で梨郷の隣に座った。


「なんだかすみません。付き合わせるみたいで」


「大丈夫だよ。どっちにしろ、リンちゃんに話したのはあたしだしね」


 僕は隣の梨郷を見やる。


「お前、大人を足に使うなよ」


「これは藍沢さんのご厚意よ。失礼なこと言わないでよね。恥ずかしい」


 ふとバックミラーを見ると、藍沢さんとやらと目があった。


「最近、楽しそうだと思ったら、こういうことだったの」


 誤解されてる気がするけど、聞かなかったことにした。否定すると嘘っぽく聞こえるし。


 藍沢さんが車を出してくれたおかげで、例のカーブミラーまでは十分かからなかった。


 道の端に車を止め、三人でカーブミラーへ近づく。場所は三叉路だった。車も通れるが、歩道はない。左へ曲がる道の見通しが悪く、設置されているのも頷ける。


「あれか」


 僕はカーブミラーを見上げた。


「そう、これだよ。鏡面が血で染まってたんだ」


 藍沢さんがそう言って、


「今は……特に何もないね」


 眉を寄せた。


 赤い液体の正体はわからないが、雨で洗い流されたのだろう。カーブミラーの上には帽子のつばのような雨避けがついているが。

 僕はカーブミラーの支柱へ視線を落とした。傷がついていて、微妙に曲がっている。これが事故の跡かな。


 うーん。曲がってるせいか運転してる人には少し見にくそうだ。


「ん?」


 僕は雨避けに違和感を覚え、目を凝らした。


「何か分かったの?」


「梨郷、ちょっと」


 手招きすると、すぐに近寄って来た。


「今からお前を持ち上げるから、あの雨避けを調べてくれ」


「雨避け? ああ、あれね。いいわよ。……ん? でも持ち上げるって」


 僕はすかさず梨郷を肩車した。ちなみに今日はスカートではなかったので遠慮しなかった。


「ふあああああっ、何すんのよっ、変態っ、ばかっ」


 力任せに頭を叩かれるとさすがに痛いんだけど。


「いてっ、いつっ、わかったから、早く調べろって」


「ううう」


 ようやく梨郷はカーブミラーを見やった。


「わっ、変な写り方するのね……」


 レンズが特殊的なのだろう。


「どうだ?」


「雨避けの鏡側、内側? に何かついてる。何これ」


 梨郷はそれを指で触れて、顔の前へ持っていった。


「赤い絵の具みたい。……えっ、まさか」


「原因はそれみたいだな」


 と、後ろから藍沢さんが声をかけてきた。


「赤い絵具?」


「いや、絵の具じゃないかもしれません。水に溶ける染料を厚く塗りたくっておいて、雨に反応して溶け出すようにしてたんじゃないかと」


「それ、一応雨避けだよね。雨はそんなに当たらないんじゃ」


「このカーブミラーは事故で曲がってますよね。この曲がり方なら雨が当たっても不思議じゃないですよ」


 僕は梨郷を地面におろし、


「イタズラ、ですかね」


「質悪すぎっ、誰、こんなことしたのは」


 藍沢さんは腕を組んだ。


「どこにでも悪ガキはいるもんだね」


 悪ガキか。でもこれって、事故でカーブミラーが曲がったから、発覚したイタズラだ。前から仕掛けてあったのか、それとも事故で曲がったから仕掛けたのか。


ふとカーブミラーを見上げると、何か黒い靄のようなものが僕たちの後ろにいて、


「っ」


 慌てて振り返るが、もちろん、何もいなかった。


「……」


 なんだか、こういうオカルト話に関わった後は毎回監視されているように感じる。あの首吊りの影の時から。


「いや、それにしても、あなたのこと嘗めてたわ。観察力? 凄いね」


 藍沢さんに肩を叩かれながら、僕はそのことについて、ぐるぐると考えていた。


 恐らく梨郷もさっきのあれを見たのだろう。青い顔をして、うつむいている。 

 と、梨郷が近づいてきた。


「な、尚」


 不安なのは分かる。曖昧で不確かで何となく感じるだけ、なんて。


「帰るぞ」


「う、うん」


「送ってくよ」


 僕は藍沢さんに会釈をした。


「よろしくお願いします」


「で、ね。その代わりと言っちゃあれなんだけど、あたしの友達の話も聞いてもらえたりする?」


「は?」


 僕は思わずぽかんとしてしまった。

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