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りんごの怪談記録メモ~怪談話の謎を解け!~  作者: たかしろひと
第3章
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雨の日の置き傘2

雨の日の置き傘の謎……謎でもなんでもなくないか。

 すると梨郷はぎこちない動きでカウンターに歩み寄ってきた。


「す、座ってもいい?」


「……許可を得ようとしたのは初めてだな」


 相当気にしてるようだ。


「別にいいぞ」


 ようやく梨郷はいつもの席へと収まった。


「で?」


「あの、その」


 もじもじと。


「トイレならそっちだぞ。漏らす前に言ってこい」


 梨郷の顔がカッと真っ赤になった。テーブルに両手をつく。


「デリカシーって言葉を覚えなさいよっ、バカっ」


 いつもの梨郷に戻ったか?


「もおおおっ、心配して損したわっ、この一週間私が悩んでたのがバカみたいっ」


「え、何を悩んでたんだ?」


「もういい。ムカつくくらいいつも通りね。このバカは」


 堂々と暴言吐くな、こいつ。


「心配してあげたのに、けろっとしちゃって、尚のバカっバカっ」


 今日、何回バカって言った?

 それはそれとして、僕は梨郷の頭に手を置いた。


「ふえ?」


「まだお礼を言ってなかったよな。あの日はありがとな。梨郷がそばにいてくれて助かった」


 なでなで。まぁ、怒るだろうな。

 梨郷の顔を見やると頬が真っ赤だった。さっきの怒りが継続しているらしい。


「私を口説いてどうするつもりよっ」


 思いっきり手を弾かれた。せっかく礼を言ったのにあんまりな対応だ。この暑いのに元気なやつだな。

 そしてリスのように膨らむ頬。


「わかったわかった、もう良いからその置き傘ってのは?」


 梨郷は心を落ち着けるように息をついた。


「雨の日だけ、傘立てに置き傘が現れるんだけど、誰もその傘を使わないんだって。で、朝には消えてるらしいわ」


「それ、どこの話だ?」


「露ちゃんが通ってる塾。面白い先生がいて、話を聞かせてもらったんだって。その後、検証したら本当に起こったらしいのよ」


「つまり、帰る時に最後まで残って、確認したらその傘はあったけど、次の日一番で行ったらなかったってことだな?」


「うん、そう。その先生が鍵当番の時に露ちゃん達で残って、一緒に塾を出たんだって。あ、車で送ってもらったらしいわ」


 鍵を閉めた時にはあったってことだな。


「それで、朝早くに行って鍵当番の先生を待ってから中へ入ったら置き傘はなくなってたってわけ」


 いや、それどう考えても先生犯人だろ。こっそり戻ってきて傘を回収したんだ。どっかのアニメ好き教師が頭に浮かぶな。


「先生が犯人だと思ってるでしょ?」


「ん? そりゃそうだろ」


「あの塾はさいしんせつびってやつなの。指紋……えっとにんしょうだから鍵当番の先生の指を黒いところにくっつけて閉めるのね。そうすると、次の日の当番の先生の指紋がにんしょうされるように切り替わるらしいの。一度閉めたら次の日の先生じゃないと開けられなくなるらしいわよ」


 最新設備、指紋認証……。なるほど、確かに謎だな。

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