分かれ道の先で3
スポーツドリンクは程よく冷えていた。水分補給用に僕と梨郷の分を持ってきてくれたらしい。
「梨郷さんも、ちゃんと飲んで下さいね」
「うん、ありがと」
さりげなく頭をなでなでされてるけど、それは完璧な子ども扱いだぞ? いいのか?
「それじゃ行きましょうか」
「私もハイキングの格好してくればよかったー」
「なら今度、普通にハイキングに行きましょう。見晴らし台はこの道と逆で上り坂なので、良い運動になります。残念ながら今日は検証が目的ですし」
「それってお弁当持ってってこと?」
「ええ」
梨郷のお世話を全部秋野さんにお任せすれば、僕が苦労しなくてもよくなるんじゃないか? 例えばこの前のプールだって、一緒に女子更衣室に入れたわけだし。
「あ、そうだ。聞こうと思ってたんだけど、ここへ来た人は絶対に迷っちゃうの?」
「伝え方が甘かったですね。絶対に迷うわけではないそうですよ」
「じゃあ、時々?」
「そうですね。そう聞いてます」
迷った人のその時の状況を聞きたいな。
「秋野さん、その迷った人は」
「初めてこの場所へ来た人ばかりだそうですよ。時間帯はバラバラですけど、暗くなってからの体験談はないそうです」
さすが、僕が聞きたいことをまとめておいてくれたらしい。
「え、え? 暗いのに迷わないの?」
「ええ。ちなみに晴れ、曇り、雨の日の体験談もあります」
昼の間だけで天気は関係なさそう、か。なんだろうな。視界がそれなりに良い時に迷うのか?
霧が出やすいのかとも思ったけど、そうじゃないらしい。
「尚、わかったの!?」
僕はため息を吐いた。
「この話だけでわかるわけないだろ。とりあえず、歩いてみないと」
「なーんだ」
短期なヤツだ。
と、少しして前の二人が足を止めた。
「ん? どうした?」
「見て」
梨郷が指差す先には二股に分かれた道があった。真ん中の看板には『碧華池↑』となっている。
「右の道……ってこと?」
さっきの分かれ道は左、今度は右に行くのか……?
「この看板、さっきのと違って安っぽいですね」
確かに手書きだし管理者が立てたものっぽくない。
「もしかして、迷う人が多いから立てたのかしら?」
噂があるなら、利用者の人が善意でって可能性もあるのか。
「ふうむ」
イタズラの可能性もある。僕達は二つの道を念入りに見比べた。
「お二人とも、どうですか? 私は看板通りだと思います」
「はい! 私も!」
僕も挙手をした。
「僕もだ。右だと思う」
決め手はなんだろうな。でも看板の矢印もそうなってるし、なんとなく。
「では、行きましょう」
右の道へ。相変わらず珍しい種類の木々が並ぶ。間に通った道を抜けて、歩いて行くと。
目の前に看板が現れた。
『見晴らし台』




