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りんごの怪談記録メモ~怪談話の謎を解け!~  作者: たかしろひと
第2章
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茅部家と大浴場の怪4

 茅部家居間。

 テーブルに肘をついてテレビを見ていた梨郷は大きなあくびをした。

 部屋着に着替え、足を伸ばしていた僕はちらりと様子を伺う。


「眠いのか? さっさと風呂入ってこいよ」


「眠くなんかないわよ」


 浮かんできた涙を拭いながら、頬を膨らませる。


「なんでそこで強がる」


 僕が相手だとなんでも反抗したがるんだよな、こいつ。


「もうっ、うるさいわね。そんなに言うなら入ってくるよ」


 不機嫌過ぎる。


「風呂で寝るなよ」


「言われなくても大丈夫よっ。言っておくけど、覗いたら殴るわよ」


「土下座して頼まれても覗かないから安心しろ」


「バカ尚っ」


 そう言って、大浴場へと向かって行った。

 疲れと眠気で不機嫌MAXだな。



 梨郷は大浴場へとやって来た。長めの暖簾を手で避けて、木戸の取っ手に手をかける。


「あれ?」


 木戸が少し開いていた。赤津さんが入ったのかもしれない。そう思って中へ。

 脱衣場は温泉旅館並の造りだった。もちろん、それより狭いが五人一緒に入っても問題なさそうだ。広い棚には脱衣籠がいくつか。その一つにタオルとバスタオルがたたんで置かれていた。


「凄い……」


 恐る恐る籠のバスタオルを取り出して、服を脱ぎ、タオルを持って曇りガラス戸へと歩み寄る。

 と、その時。


「ひっ」


 水を含んでひんやりと冷たいお風呂マットに驚いたのだ。曇りガラス戸の前に置かれていたので、もろに踏んでしまった。


「だ、誰か入ったのね。あー、びっくりした」


 赤津さんはなんとなくまだ入っていなさそうだが。


「そういえば、尚には妹がいるのよね」


 何故か言いたくないようだったが。

 梨郷はそんなことを考えながら、浴室へと入った。ちなみに浴室への戸も少し開いていた。


「わっ」


 そこはやはり、温泉旅館のようだった。もちろん、旅館の風呂よりは狭いが。個人宅の風呂とは思えない。


「え、露天風呂まであるの?」


 入り口の向かいの戸に『露天風呂』と書かれたプレートがさがっているのだ。


「尚……何者なのよ」


 梨郷の偏見だが、普段の彼からは想像も出来ない自宅だ。

 気を取り直して体と頭を洗い、浴槽へ。

 足の指で熱さを確認してからゆっくりと湯に沈める。


「はぁ~……」


 丁度良い温度だった。


「悪くないわね。……あれ?」


 水の音がしたような。それは露天風呂の戸の方から聞こえてくるようだ。

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