お化け屋敷の中で4
石井、野上、天川の男三人組と男性スタッフ(首から提げているネームカードは『赤城』となっている)、カップルの久野さん、計四人は焦りの表情。
永友さんと女性スタッフ(首から下げているネームカードは『相野』となっている)の二人が困惑したように僕を見ていた。
僕、おかしなこと言ってないよな? さりげなく幽霊の存在を否定しつつ、現実的な提案をしたのだ。
……まさか全員グルか? 何らかの理由で大賀いづみに対し、幽霊騒動を仕掛けた?
いや、この反応の違いはもう少し考慮すべきか。壁時計を見上げると、十二時まで後十二、三分と言ったところだった。
「お巡りさん」
ドアが開いて、白衣姿の男性が顔を出した。医療スタッフだろうか。
「大賀さん、大分落ち着きました。どうします?」
「ふむ。では先にお話を聞きましょう。皆さんは引き続き待機でお願いしますよ」
お巡りさんはそう言って医療スタッフと共に出て行った。
本当に長くなりそうだ。
そして梨郷がそわそわし始めたので、僕は彼らへ視線を向けた。
「なんだか、大変なことになりましたね。皆さんは……大学生ですか?」
社会人もいると思うんだけど。
バイト中のノリで愛想よく聞いてみると、この場の雰囲気が少し和らいだ。
「俺らは大学二年。天川だけ一年。お前らは?」
野上さん、初対面でお前扱いかよ、と思ったけどまあ、良い。
「僕は高校生でこっちは小学生です」
「妹さん? かわいー」
破顔した永友さんの問いに曖昧に笑って返す。梨郷も会釈をした。
ほんと、スイッチが入ってない時は人見知りだな。服の裾を掴まないでほしい。
「俺達は社会人一年目です。俺が二十三で彼女が一つ下ですね」
久野さん達は予想通りだったな。
「スタッフさんは?」
僕が問うと、二人は目を瞬かせた。
「わたし達もですか?」
困惑した様子の相野さんに僕は頷く。
「はい」
二人は顔を見合わせた。
「えーと、この公園の管理会社に所属しています。今回は大きなイベントだったので駆り出されてしまって」
赤城さんがそう答えてくれた。
「なんなんでしょうね、幽霊って。僕はあんまり信じてないんですけど」
皆の顔色を伺う。
「俺はいると思うが」
そう口にしたのは石井さんだった。
「俺もっす」
と、天川さん。
頷きつつ同調する男子三人組みで、久野さんも頷いていたのでまあ、そういうことなんだろう。
こいつらは幽霊の存在肯定派のようだ。
「んーあたしも信じないけどね? 幽霊見たことないし」
永友さんの発言。そして何度も頷く相野さん。
女子は否定派だな。
つまり、市ヶ谷憲二を幽霊が連れ去ったということにしたいのは男勢で、幽霊の仕業じゃないということにしたいのは女子ってわけだな。
さて次の質問だ。
お巡りさんさんが戻るまでに、なんとかヒントを見つけたものだ。




