喫茶エコールの忘れ物4
交番からの帰り道。時刻は
僕は梨郷と手を繋いで歩いていた。手繋ぎ……最初は文句を言うくせにすぐ慣れるな。扱いやすくて何よりだ。
「結局、あの人なんだったのかしら?」
「何って、大体わかるだろ」
「……ヤンデレ?」
「ヤンデレが出てきて、なんでストーカーが出てこないんだよ?」
「ストーカー!?」
本気でわかってなかったのか。
「推測するにけいちゃんはあの男の客のストーカーなんだよ。何かの拍子に男のスマホを拾ったか盗んだかして、ピンクに塗ったり、ケースをスイーツデコで盛ったり、アドレス帳を全消去したりしてうちのトイレのゴミ箱へ入れたんだ」
「なんで、『エコール』だったの……?」
「ストーキングしてて、ここであの客がコーヒーを飲んでたのを知ってたんだろ。帰りにスマホがないことに気づけば、立ち寄ったこの店に置いてきたと思うだろうし。一度かけてきたのは、男がスマホを忘れて喫茶店に戻る時間を予想してたからだ。鳴らせば店員に気づいてもらえるし、スマホがないと戻ってきた客が入れば一応見せるだろうし」
多分、けいちゃんはこの喫茶店に来てたんだろうな。スマホを掠め取ったのはその時か。
「だから、あのお客さんは怖くなって、逃げちゃったのね」
僕でも怖い。なくなったスマホがあんな状態で戻ってきたら寒気がする。ちなみにアドレス帳を編集するには暗証番号が必要だが、ストーカーだからな。知ってても不思議じゃない……と思考を放棄してみる。
「ふーん。謎でもなんでもなかったのね」
いつの間に謎解きになったんだよ。
「ところで、梨郷」
「何?」
「明日、見に行ってやるから、頑張れよ」
「!」
目を輝かせ、滅茶苦茶嬉しそうだ。
「ま、まあ。来たいなら来ても良いけど」
「チケット持ってきたの、お前だからな」
その後、梨郷はかなり上機嫌だった。ほんとに素直じゃないな。




