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りんごの怪談記録メモ~怪談話の謎を解け!~  作者: たかしろひと
第1章
35/91

プールの中の白い手7

「そういえば、そう、かも。え、でもそれって」


 僕の質問に対し、彼女が何かに気づきかけ、眉を寄せた。あからさま過ぎた。少しまずい。慌てて僕は笑って見せた。


「塚本さんでよかったですね。判断力ある方ですし、それで助かった人も多いんじゃないですか」


「あ、そうよね。ふふ。塚本君、最近人気者なのよ」


 人気者……溺れた人を何度も助けているし、何より顔が良いのが受けたのか。


「話変わるんですけど」


 話題をリセット。と、見せかけてもう少し探りを入れる。


「ジャングルプールのあの岩って浮島じゃないんですね。浮きマットかと思ってたんですけど」


「あはは。そうそう、珍しい造りでしょ?」


「中に空気が入ってるんですか?」


「んー、入ってるといえば、入ってるわね。あの中、空洞なのよ」


 得意気に言う彼女。僕は動揺したのを気取られないように、


「もしかして、人が入れたり?」


「ええ。カメラの調整とかで入ったりするわね。って、なんの話してるのかしら。あはは」


「いや、すみません、こっちも変なこと聞いて」


 僕は梨郷の頭に手を乗せる。


「こいつが溺れなければ、乗ってみようかと思ってたんですよ」


「そっかー。じゃあ、また挑戦してみてね。おっと、もう行かないと。じゃあね」


 彼女の背中を見送って、僕は口元に手を当てた。

 塚本さんには何かあるな。


「なるほど、空洞ですか。……茅部さん、あの方……塚本さんを疑ってるんですね」


「私を助けてくれた人よね? 助けてくれたんでしょ?」


 さすがに二人も僕の考えに気づいたようだ。


「あぁ、助けてはくれたけど……あの人、梨郷が溺れた時、モニター係だったみたいだからな」


「だから、モニターを見て助けにきてくれたんでしょ?」


「ちなみに、お前に救命胴衣をつけたのは誰だ? 塚本さんか?」


「え? んーと、その塚本さんの顔がうる覚えなのよね」


「多分、違う人ですよ。ほら医務室に来た男の方です」


「ああ、あの人か」


 流水プール監視担当の交代時間らしく、塚本さんを呼びに来た人だ。

 僕は彼の姿を思い出しながら、ふと、秋野さんの足首へ視線を向けた。

 まだ手の痕が残っている。


「茅部さん……無断でわたしの美脚鑑賞ですか?」


「あ、いや。悪い。ちょっと考えてた」


 というか、変態みたいな言い方をしないでほしい。美脚?


「わたしは構いませんが、梨郷さんのほっぺがはち切れんばかりですよ」


 見ると、まるでリスのようになっていた。


「どうしたんだよ、お前は」


「知らないっ」


 梨郷はプイッとそっぽを向いてしまう。今日はやけに情緒不安定だな。落ち着きないし。


「それで、何を考えてたんですか?」


「考えてたというか」


 僕はコーラを一口飲む。


「細かいところは想像で補うとして、結論は出せそうだ」


 梨郷と秋野さんはぽかんと僕を見た。


「それは……白い手の正体と犯人がわかったと?」


「動機は分からないけどな」


 梨郷がわざわざ立ち上がってテーブルに両手をついた。


「ほんと!? わかっちゃったの!?」


 僕はため息を吐いた。


「静かにしろって」


「では、関係者を集めましょうか」


「やめてくれ……」


 なんだ、そのノリは。


「すごーい、推理ショーってやつね?」


「推理もののお決まりですよね」


 女子二人で勝手に盛り上がってる……。このままだと本当に集められそうだ。話を進めるか。


「じゃあ、順を追って説明する」


 音が反響する施設内、僕は声量を下げて、語り始めた。

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