2話 意外とすぐ会えた件
3歳の誕生日にご馳走として美味しい鶏肉を食べ、満足して寝た夜に見覚えのある場所にいた。
「お久しぶりですね、どうぞ座ってください」
初めてきた時と変わったところはな……椅子が変わっていた。アンティーク調になっていた。高価そうと思いながら座ると、ホットココアが出てきた。美味しい。
「このタイミングで会えたのは必然ですか?それともなにかあったのですか?」
「元々決まっていたのですよ。3歳の誕生日の夜に会うことは。ああ、お誕生日おめでとうございます」
神さまに祝われるとはなんともすごい。
「本当ならばこれでお別れなのですが、少々忘れていたこともあったので話しましょうか」
オルディナの神さまが自分用にコーヒーを淹れる。出来たコーヒーを一口飲んで話し始める。
「まず気になっているだろう『複製』の件ですが、現在同じやつは40,000本中221本ですね。よく出来ている方だと思います」
ぐっ……分かってはいたけど、まだ約5分の1か。先は長いな
「それと魔法についてですが、魔力のみで生み出すのと、「存在複製」で生み出すのでは魔力効率が大幅に違います。ですので、今までの行為は無駄になってはいないので引き続き頑張ってください」
それは気になっていたところだ。そうか、効率が違ったのか。ちなみにどのくらい?
「大体100倍違いますね」
これは『複製』大事だわ。
「あと召喚された異世界人、まあ「勇者」ですが、勇者は『鑑定』というスキルを持っていましてね、それを差し上げたいと思います。これにより現在取得しているスキルなどが見えるようなります。俗に言う「ステータス」ですね」
おお!それはすごい!でも、なんで今それを?
「勝手に召喚された勇者が持っているからということ、『複製』などの狙っているスキルをいつ取得出来たのかを知るためですね。まあ、後者に関しては別の方法でも解決させたのであまり意味はないかもしれませんが」
別の方法?
「次からスキルを取得、レベルアップしたら音声が聞こえるようにしました」
ちなみに今もう『鑑定』って使えます?
「ええ、使えます」
じゃあ『鑑定』
『リオン』
『称号』「転生者*」
『種族』「プロ族」
『年齢』「3歳」
【スキル】
『剣術Lv5』『体術Lv5』
『火魔法Lv3』『水魔法Lv3』『風魔法Lv3』
『地魔法Lv3』『雷魔法Lv1』
『隠密Lv4』『鑑定LvEX*』
『木工Lv1』
「印が付いているのは他の『鑑定』だと見えないようになっています。
それとスキルのレベルは10が最大で、スキルは出来ることが増えないとレベルは上がりません。ですので矢だけ作り続けても1のままです」
うーん、聞きたいことほとんど教えてくれた。
「では『鑑定』のEXとは?」
「オマケです。勝手に召喚されている人より、神が目を掛けている転生者をサービスするのは当然でしょう?」
オルディナの神って、どこか召喚者を敵視してるよな。それが「召喚されたもの」なのか「召喚したもの」なのかは分からないが。
「さて、そろそろ時間です。何かあったりしたらまた呼びますね」
◇
目を開けると朝だった。寝た感覚はあるので、あの後そのまま寝させてくれたのだろう。
朝といっても地球の時の朝と違い、こちらは太陽が出たら朝だ。
つまりまだ朝早く、眠たい。だけど慣れてしまったので、自然と目が醒める。
両親も目を覚まし、村全体が活気付いてくる。
その訳は……
「よし!毎朝恒例「朝飯狩り」行くぞぉ!」
『おぉ!』
戦闘狂だ。
当然父さんも参加しており、「やっぱり朝はこれがないとな」などと供述している。
女子供は朝食作りを出来るとこまで始める。
プロ族はカンナ大陸に移住してきてから、狩り中心というか狩りしかしてこなかった。
なので一時期小麦の生産が途絶えたらしい。だが今は物好きとされる農業好きのプロ族がいるため、村全体で小麦で出来たものが主食とされている。
食糧事情を賄っているその家族は、物好きと言われると同時に感謝されている。
さて、戦闘狂達が帰ってくるまで、俺は矢作りをする。
最初の頃は次々と魔物を狩ってくる大人たちを尊敬の目で見ていたが、今はもうそんな風には見れない。
戦闘に人生どころか種族を、遺伝子を捧げている奴らをどう尊敬しろというのだ。
矢作りはスキルレベルが上がらないが、やはり『複製』が欲しいため頑張る。最近では慣れつつもあり、一日100本は堅いところとなってきた。そのうち一本あれば良い方なので……あと3年ぐらいで取得できるだろう。先は長い。
矢も作り終えたところで我が家の大黒柱が帰ってきた。
「今日は丁度近くに「鳥」がいてな、運良くトドメを刺したから一番良い部位貰ってきたぞ」
これには母さんと二人で驚いた。なんていったって、あのタイムセールのおばちゃんたちより激しい争いを勝ち抜いてトドメを刺したのだ。
そうだ、と思い出し『鑑定』をしてみる。
『不死鳥の心臓』
『不死鳥の頬肉』
ほ、ほー……いつも美味しいと思ってた、「鳥」とは不死鳥ノコトダッタノカ。
不死鳥って、物語の最後の方とか、滅茶苦茶強いイメージがあるんだけど、食卓に並んでる。
あぁ、神さまがいってた強い魔物ってこういうことかぁ。カンナ大陸マジ半端ねえ。
食欲には勝てず、美味しく頂き今日の予定を変更する。稽古はいつも通りするが、自由時間はある程度のものを『鑑定』しよう。
今日もまたコテンパンにやられたあと、魔法の稽古をして、まず最初にいつも使っているナイフを見てみる。
『神鉄製ナイフ』
ですよねー。よく考えてみたら、使い始めてから2年ちょっと経つけど研いだ事一度もないや。
それにあの、あのプロ族の、あのカンナ大陸での「鉄」のナイフがただの鉄な訳ないよね。
そっかぁ……神鉄かぁ。
ちなみに矢の原材料の木はというと、
『古賢木の矢(鏃・羽根無し)』
となっていた。
試しに家の裏にある作業場から見える「森」を見てみた。
『古賢木』
『古賢木』
『古賢木』
『魔賢木』
『古賢木』
『魔賢木』
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なるほど、ちなみに、ちなみになんだけどね
『鑑定LvEX』だと、詳細情報見れるらしい。
それでね?古賢木について見てみた。
『古賢木は非常に魔力が濃い場所のみ生息する賢木の樹齢が千年超えた場合進化した魔物である。動くことはなくなり、ひたすらに立ち続ける姿は御神木として崇められるほど。
魔法触媒や家具として最高峰で市場価値が非常に高く、一本丸々だと白金貨千枚の値がついた』
御神木……森になってます。
貨幣は「銅貨」「銀貨」「金貨」があるそうだが、どうにも信じれない。今度こっそり『鑑定』させてもらおう。
アベル大陸では鉄貨=10、銅貨=100、大銅貨=1,000、銀貨=10,000、金貨=100,000(10万)、白金貨=1000,000(100万)の価値となっているそう。
厳密には国によって硬貨が違うため、多少価値が違う。
大体パンが鉄貨5枚ほど。
つまりアベル大陸での古賢木は10億の値がついたことになる。
10億が森になるほどかぁ……
人間族がこの大陸に来たい理由が分かった気がする。でも、これないんだろうなぁ。
海の魔物が強いだろうし、拠点を作っても魔物の襲撃に合うだろうし……
やっぱりプロ族すごいな。
少しだけ尊敬し直した。