第一章 黒バットに見られたもの(8)
ラベンダーとアップルティーの混ざり合った香りの中で僕は校内新聞の記事を読む。今いる場所はロリ先輩の部屋である。
基本‘マホウ’の練習はここで行っているので、最初は非常に甘く感じたこの部屋も今では落ち着く場所となっている。この部屋主であるロリ先輩は今はいない。
いるのは俺と美華である。
「なんでみーくんはあんなところで倒れてたの?まさかあの三人になにかされた?」
「いや、話せば長くなるんだが・・・」
僕の家の電話がなったのは朝の七時だった。
今日は土曜で学校が休みのため十時くらいまで寝てようと思ったので少し機嫌が悪かったと思う。
電話の相手はロリ先輩だった。「おはよーはくとう君」
テンションの高い声が聞こえる。
「なんですかロリ先輩、こんな早くから」
「どうやらはくとう君は機嫌悪いみたいです。でも、私は師匠としてはくとう君を呼ばなきゃいけないのですよ。あと5分で緋都さんがはくとう君の家に着くはずなので外に出る準備をしてください。その後タクシーに乗って中央病院に来てください。事情は後で説明します。」一方的にロリ先輩が話した後電話は切れた。
しかし、どうやってあの竜文を起こしたんだろう?
他人の命令でくるような奴じゃないし・・・
すると玄関からすさまじい足音の後扉を叩く音が聞こえる。
「ねぇ、直接言わなきゃいけないことってなに!!わざわざ瑠璃先輩から僕を呼ぶなんてただごとじゃないよね?」
うわーロリ先輩普通に僕のこと使ってるよ。
少し落ち着かせてから扉を開けようかなと思ってると
「僕ね、覚悟してきたんだよ。みーが望むならなんだってする覚悟だよ。今までみーが僕のこと男だから親友止まりだったけどなんなら・・・」
これは扉開けないとまずいよな、しかし僕には竜文にしなきゃいけない大事な話しなんてなかった。
なぜなら竜文は僕以上に僕のことを知っているのだ。
僕は急いで服を着替える。
シャツ+パーカー+ジーパンの格好である。
そして外の竜文の声でタクシーが来たことを確認したあと、僕は靴紐をしっかり締めて扉の前に立ち一呼吸おく。
「おはよう、竜文着いてきて」
僕は急いでドレスで華麗に飾り付けされた竜文の手をとりタクシーに乗り込む。
とりあえず今は竜文と二人っきりになって会話してはいけない状況だ。
「中央病院に出来るだけはやくお願いします。」
あらためて見ると改めて竜文の性別を疑う。
それぐらいロリ先輩の電話で張り切ったのだろうが、僕には何も出来ない。
病院に着くと何とかその場にいたロリ先輩と心緑が竜文に説明してくれた。
「さて用件なんだけど・・・あーなんで昨日のうちに調べなかったんだろう。」
心緑がすごい悔しそうな声でいい、ロリ先輩も唇をかみ締めている。
「あとでニュースにもなると思うんだけど昨日この町で人が一人死んだの」
「僕が呼ばれたってことは『そっち』関係ですか?もしかして僕の知ってる人?」
僕がそう尋ねると心緑が頷く。
「話はもうつけてあるので、こっちに来てください。」
先導する心緑にロリ先輩、僕、竜文の順でこの町で一番大きい中央病院に入る。
病院に入って通されたのは緊急手術室、とはいっても見た瞬間に死んでると分かっていたらしく。ここには警察が来るまでの仮でしたないらしい。
大きい扉の前で心緑が僕と竜文に向かって話しかける。
「さっきの民汰君の質問ですが、今の私には答えられません」
その言葉と同時に扉が開く。
「なぜならその人は」
僕の目に入ったのは
「首から上が無いの」
その言葉と同時に首から上が無いおそらく昨日まで人間としてちゃんと機能していた『もの』をみて僕の記憶は途切れる。