第一章 黒バットに見られたもの(5)
闇の中で何かが光る
あいつに睨まれてからずっとそうだ
邪悪なものにつつまれている
まるで永遠に続いているような空間
見上げると多くの‘鳥’がとんでいる
急な吐き気
慌てて手で口を覆うが汚物が手の隙間から漏れる
周りの闇はあいつと自分の陰を混ぜ合わせる
肩で呼吸する
逃げているつもりだった
しかし闇の奥に奥に進んでいることがわかる
血まみれになっていた
真っ赤な血、どす黒い血
血の臭いは希望も期待も怒り辛さもなくさせ
今あるのは快楽だけ
血、血、血、血、血
液体が体に濡れて、流れて湿らせ、うねって、固まり、張り付く
いつの間にか気持ち良くなっていた。目が覚めてぼやけてる視界の中目の前に竜文がいる。
「おはよう、みー」
「わりぃ、ちょっと目の前から離れて状況教えてくれ」
「んー、簡単に言うと今は放課後で今から環境委員に行くんだよ。」
竜文は僕の視界からずれてそう説明する。
窓から見える夕日がオレンジ色をしていてまぶしかった。
委員会は入ってなかったはずだから、僕が寝てる間に決定したのだろ、おそらく竜文も同じ委員会だろうな、僕を他の女の子とくっつけたくないとか言って自分の性別を捨てそうなやつだから、実際捨ててるといっても過言でないところが怖い。
「じゃあ、行くよ。」
「了解」
その後、委員会の教室がある1階の職員室の二つ奥の部屋に話しながら向かう。
泉の入学式での新入生代表の言葉で噛んだこと、虫明が明日野球の大会の試合に出れそうなことついでに学校休むこと、千曲が珍しく授業後すぐ帰ったこと、新しいクラスメイトに僕のことを聞かれたことなど思ったより長い距離だったのでたくさん話せた。
「あれ?はくとう君もこの委員なんだ」
僕達が教室に入るとそこにはロリ先輩が、一人だけ窓際の椅子に座っていた。
「僕達が一番最初?」
僕がそういうと、ロリ先輩はため息をつきながら、でもちょうどいいタイミングだったといわんばかりの顔で
「今の時間を見てみるといいよ。君達が一番最後、そして私が委員長で最初の活動は終わったよ。といっても自己紹介だけなんだけどね」
環境委員なんて僕達の学校に限ってはいらないはずなのだ。
別に学校が掃除専門の人を雇ってるわけでも、生徒に厳しく掃除をやらせてるわけでもない。
ロリ先輩の‘マホウ’があれば環境委員は必要ない。
「みー、そんなこと言ったら駄目だよ。せっかく同じ委員になったんだから」
ちなみに竜文には隠し事が出来ないことは知ってるので僕が‘マホウ’が使えることは言ってある。
むしろ黙ったままで、ばれた時に泣かれる方が面倒なのだ。
泣かれて責められるのはいつも男なのだから。
「はくとう君、あとそろそろ学会さんから仕事が来るような気がするから準備しといて」
魔法使いもただ何もしてないわけではなく。
特別な力があるだけで、監視され人の役に立たせようとするのが人だ。
その管理、監視、役割を与えるのが学会らしい。
他にも色々あるらしいが、一応施設で魔法使い専用の学校などもあるらしい。
「準備って言ってもこれしか使えないんですけどね」
そういって少し集中して竜文に風を送る。
竜文の髪が綺麗になびき「眠くなってくる」といってくる。
「詳しい話はまた学会からきたら話すよ。もしかしたらはくとう君のところに直接くるかもね、はくとう君も正式な魔法使いになったんだし」
僕は「あなたのおかげでね」と言いながら竜文と教室をでて家に帰ることにする。