6、一難去ってまた一難
6日目です。
一難去っても残念ながら主人公は飛べません。
今日もよろしくお願いします。
あの2人を無事に送り届けた後、backyardに戻ってきたわけだが…
「こんのバカヤロォォ!!」
怒声とともに鉄拳が飛んできた。氣でガードしたはずなのにめちゃくちゃ痛い。
「なんで誘拐して来いって言われたのに連れ戻して来るんだよ!」
「だって何も言わずに親元を離れるなんて可哀想じゃないですか?ボスには人間の心ってもんがないんですか?」
「うるせぇ!第一、テメェは自分の立場ってもんをわかってんのか?俺たちは依頼されたらどんな汚れ仕事でもこなす。そこに私情を挟むなんてことは言語道断!今回はどうにかなったが、今臨在私情を挟むなんてことはないようにしろ!わかったか!」
「わかりましたボス…」
殴られた箇所をさすりながら部屋を後にする。
(今臨在ってことは一応は認めてもらえたってことか…)
認められたはいいもののヘマをしたということで金は全額没収されてしまった。
グゥゥゥゥ
「あぁ…ひもじい。」
無一文から抜け出せると思ったがむしろ状況は悪化しているように思える。
「やっぱうまくいかねぇもんだな…」
ヤキデは仕事で今はおらず、ヤキデ以外の知り合いはいないので頼れる人はいなくなってしまった。何かしていないと死にそうなのでバディと話をする。
「なぁバディ。どうでもいいけど、今日戦った女が使ってた魔法ってどんな魔法なんだ?」
『氷魔法と呼ばれる魔法で水魔法の上位に当たる魔法です。習得にはそれなりの鍛錬が必要になるため、扱えるのは銀等級などの上位の者に限られます。』
「ところで気になってたんだが、そのなんとか等級ってなんだ?」
『ギルドが定めたギルドに所属する人のランクを表すもので下から無等級、銅等級、銀等級、金等級、白銀等級の五等級に区別され、昇格するにはそれなりの実力が必要になるため、等級間には随分と差があるようです。』
「それじゃあ、あの女がつけていたペンダントは等級をあらわすものだっていうことか。」
『そうなりますね。』
気晴らしにはなったがひもじいことには変わりない。しかしバディ以外の知り合いはいないのでこれくらいしかやることがない。
「ところでさ、バディって俺といるときぐらいしか姿見せないけどなんで?」
『この世界では精霊の価値は高く、高度な召喚術などの様々な用途で使われるため、見つかると捕まる可能性が高いのでそれで隠れています。』
「もし俺がバディを裏切ったら?」
『寂しがりやのマスターが裏切るなんてありえませんよ。』
「まぁそうなんだけど…あー腹減った…」
だめだ、何も解決しないし、解決しようとするエネルギーもないし。どうしたものか。
とりあえず上に出てみる。相変わらずの賑わいっぷりで各々好きに騒いでいる。とりあえず掲示板で手頃な仕事がないか探してみる。
(うーん殺しに、盗みに、尾行…どれも今日中にチャチャッと終わりそうにないなこれ。)
やっぱり今日は空腹に耐えながら野宿しかないようだ。
「おい、嬢ちゃん!こっから先は危ないって!おい止まれ!」
なんだか入口の方が騒がしい。門番の二人が慌てたように入ってきた。
「どうかしましたか?」
「あぁマスター、実はこの嬢ちゃんが会いたい人がここにいるから通してくれって聞かなくて…」
門番の二人の他に見覚えのある二人がいる。
多分用があるのは…
(『マスターに用があるようですが…』)
まぁ普通に考えてそうだろう。でも気付くまでは黙っていようと思う。だって面倒くさそうだもん。
「この中にいるようですし、探し人が見つかるまでならいいではないですか。」
「マスターがそうゆうなら…おい嬢ちゃん、見つかるまでだからな。」
あぁ…これ出てこないとさらに面倒になるやつだ…
「あーっと多分探してるのって俺だと思う…」
素直に言ったが相手はキョトンとした様子。もしかして気づいてないのか?試しに仮面をつけてみる。
「あ!彼です!あの仮面の人!」
人を仮面で見分けんなよ…
「で?何の用?」
「要件の前に、先ほどは迷惑をかけてすいませんでした。」
ぺこりと頭を下げられるとは思ってはいなかった。
「そのことに関しては俺も仕事でやってるから別に気にすんな。」
「そう言ってもらえるとありがたいです。」
「その前に外に出よう。ここはあまりお前がいていい場所じゃない。」
見つかるまでという約束だったので外に出るよう促す。裏路地を抜け夜の街に繰り出し、適当な店に入ってから本題に入る。
「まず、お父様とキチンと話し合った結果、勘当されました。」
「そうか…まぁちゃんと話してそうなったならいいんじゃないか?」
「はい、そのことに関しては問題はないのですが、住む場所も何も決まっていない状態でして…」
「で、俺を頼りに来たと?」
「はい…今まで外に出たことがなく、頼れるのがあなたしかいなくて…」
「執事さんのツテとかっていうのは?」
「私はもとは別の出でして、北の方には執事として最近来ましたので全くありません。」
「まじかよ…俺もここに来たのは最近で宿暮らしなんだよ。」
要するに積んでいる。
「まぁそうゆうことだ。頑張れ。」
エールしか送れないのでエールを送っておく。
「まっ、待ってください!直接的な解決ができなくてもせめて二人だけにしないでください!」
「なんでだよ。別にお前達を助ける義理なんてないしそもそもあれは依頼で…」
グゥゥゥゥ
最悪のタイミングで腹が鳴る。
「…もしかしてお腹空いてるんですか?」
「恥ずかしながら。」
「ではここで夕食にしましょう。」
「無理だ。金がない。」
言いたくないことを言ってしまった。しかもそれを聞いて相手は得意げになっていく。
「じゃあ私が払います。」
「断る。嫌な予感しかしない。」
「ひもじい生活を続けたいって言うんですか。ならいいんですけど。」
くっ…金があるからって嫌味な言い方しやがって…
(『ここは従っておいたほうが吉だと思われます。』)
おいおいバディまでそんなこと言っちゃうのかよ。
グゥゥゥゥ
腹までもがここで断るべきではないと言い始める。背に腹は変えられないとはこのことだと腹をくくる。
「わかった、わかったよ。一緒にいてやるから、飯食わせろ。」
「人に頼む時にそんな言い方って普通しますか?」
このガキ、ぶん殴ってやろうかと思う。
「飯食べさせてください。お願いします。」
頭まで下げてお願いする。
「よろしい。じゃあ交渉成立っていうことで今後ともよろしくお願いします。」
お互いに不本意ながら合意したので席に座って注文を頼む。
♦︎♢♦︎
「あー食った食った。ご馳走様です。」
「それではこれから何をしていくか会議を始めたいと思います。」
「普通に今日は宿だろ。んで、明日は明日で考えればいい。」
「うーん。それが今できる最善手ですかね?」
「それじゃ、宿取りにいくか。」
店を出て早速宿を取りに行く。なんか死ぬ前にもっと旅行しておけばよかったかな、なんて今更思う。ホームシックになりそうなので思うだけにしておこう。
「それでは三人で二泊三日、1万2千ゴールドですね。」
一晩4千ゴールドになるのか。ちなみにだが、字が読めないのでゴールドという表記は今初めて知った。
「バディ、1ゴールドって向こうの何円だ?」
(『だいたい10円ぐらいの価値があります。』)
「一人頭4万円…それってここじゃ普通だったりする?」
(『いえ、探せばもっと安く泊まれるとこもあるはずです。』)
まじかよ…まぁ元貴族だから金はあるんだろうけどこれでこの先大丈夫か不安になってきた。
「宿取れたから早速部屋に行きましょう。」
言われた部屋までついていく。そこまでで制服姿のイケメン的オーラを出してる奴にすれ違う。ザ・主人公って感じなオーラ。
「なぁ、もしかしてあいつ…」
「?どうかしました?」
「あ、いや、お前じゃない。」
もう俺は一人じゃないことを忘れて、普通にバディと話そうとしていた。バディの立場上、あまりこいつらの前で話すのはやめておこう。部屋の中はさすが4万円するだけあってベットはふかふかで窓も大きく、なかなかにいい場所だった。
「なかなかいい場所取れたじゃん。」
会話をしようにも返事がない。つかれていたのかベットダイブしてすぐに寝てしまっている。
「あー寝ちまったのか…じゃ、後のことはよろしくお願いします。」
「承知しております。ところで、あなた様に渡したいものがございまして、後でよろしいですか?」
「あー全然いいですよー、面倒ごとでなければ。」
そう言って隣の部屋に移る。
「やっと休めるって感じだな。」
『そうですね。ところでさっきのはなんだんたのですかマスター。』
「あぁ、廊下ですれ違ったあの男ってもしかして天使側かなと思って。」
『ちょっと待ってください…あ、ありました。流石マスターです。あの一瞬で人を見分けるとは。』
カンを鍛えておけと散々師匠から言われていたおかげだ。
『名前は黄月 龍。剣道の達人で元日本一でした。』
「みんななんかの日本一なのか?」
『いえ、他の人はそんなことはなく、彼だけが戦闘要員として選ばれたと推測されます。』
「他の奴は一般から選ばれた人なのか…」
コンコンコンとドアを叩く音がした。多分さっきの渡したいものってやつだと思うけど。扉を開けるとやっぱり執事がそこに立っていた。
「どうぞ中へ。」
「失礼します。」
「早速本題に入るようですが、何ようですか?」
「実は旦那様からあなた様に渡してほしいものがあると言われまして。」
随分と立派な袋に入ったものを机の上におく。
「これは?」
「今までちゃんと娘と向き合っていなかったせいで手を煩わせてすまなかった、とのことです。」
中を見ると金やら綺麗な結晶やら色々と入っていた。
「いやいや、こんなにもらえませんって。」
「ここは旦那様に変わり是非共受け取ってもらいたい。」
あの執事が口調を変えるほどに受け取ってほしいらしい。
「そこまで言うのでしたらお受け取りします。わざわざありがとうございます。」
「こちらもキチンと渡せて良かったです。今後ともよろしくお願いします。」
「こちらこそですよ。お金のない僕にここまでしてもらえるなんて本当に運が良かったと思います。」
「ではこれで失礼します。」
そう言って執事は部屋に戻っていく。
さて、渡されたはいいがこれの使い道が謎すぎる。
「バディ、この結晶の使い方ってなんなの?」
しかし返事はなく、代わりに可愛い寝息が聞こえてくる。執事と話している間に寝てしまったらしい。バディも寝るんだなと少し新発見だった。
「じゃ、俺も寝ますか…」
そのまま床に着き新しい朝を迎える。
まずは別のとこで朝食を済ませ今日することについて話し合う。
「とりあえず自己紹介的な感じかな。俺の名は…まぁ、トカゲとでも読んでくれ。」
「本名はなんて言うんです?」
「あーっと、ほら俺って一応犯罪する人だからさ、名前は伏せておきたいっていうか…」
「そうでしたね、失礼いたしました。私はリンナ・ハーデントと申します。」
「私は執事で構いません。」
「ん。じゃあ今日のことの前に一ついいか?」
「なんでしょう。」
「風呂入りたい。確かあったよな?」
「そういえば昨日は入っていませんでしたね。まずはそうしましょうか。」
どうやら泊まった宿の中にあるそうなので使わせてもらう。
「あ゛ぁ〜っあぁ〜、フゥ〜〜」
相変わらずこう言ってしまうの本当におっさんだと思う。この大浴場には宿泊客が大勢おり、様々な種族、様々な人がいてなかなか面白い。
(あの下手くそさえいなければもうちょっとゆっくりできるんだけどな…)
黄月とか言う奴が自分のオーラを全開にしたままいるせいでどうも緊張して落ち着かない。力を完全に使えてない証拠である。確かに大悪魔が心配になる理由もわかる気がする。剣の達人すら扱えていないものが一般人に扱えるはずがない。今は何するわけもないのでとっとと体を洗って風呂場を後にする。
「そいうや女の風呂って長いんだよな…」
昔師匠と一緒に行った小旅行を思い出す。師匠と俺は早く出たのだが、妹弟子に当たるのがなかなか出てこなかった思い出。あいつが生きていれば今頃あのくらいなんかな。
「お待たせしました。では今日は何しましょうか?」
「家を買うだけの金はあるのか?」
「そこまでのお金はなかったと思います。」
「ちゃんと不動産屋で確認したか?」
「ふどうさん?って誰ですか?」
あぁそうかこの世界には不動産っていう単語を使わないのか。
「俺の国の言葉で家を買うとこだ。」
「あぁそうだったのですね。そこまではしてませんが…」
「よし、じゃあ今日は家を探そう。訳あり物件だったらもう少し安くしてもらえるはずだ。」
ということでやってきた、不動産屋だがやはりどこも高い。マンションのような集合住宅はないので本当に何から何まで自分で買わなければならない。
「やはりどこも買えそうにありませんね…」
そう思うのも無理はないがまだ当たっていない場所がある。
「北の裏路地に家ってないのか?」
「ありますけど…やめておいたほうがいいですよ。あそこはゴロツキどもがうろついていますし、迷いますし、日当たりも悪く住むにはだいぶ不便な場所になりますよ?」
「構わん。見せてくれ。」
相手の忠告を突っぱねて家を見るとまぁ安い安い。さっき言ったみたいに不便すぎて誰の手もつかなかったせいで価格が手の届くとこまで落ちている。その中で一番良さげな家を買うことにした。やめておいほうがいいですよ?と何度か言われた気がするが気にしない。早速買った物件を見に行く。普通の人なら迷うのだろうがバディがいるので迷わずに目的の場所まで行けたのだが。
「ボロボロ…ですね。」
俗に言う4LDK家で庭付きの二階建てなのだが、なんとまぁボロボロとしか言いようがない。人が住まなくなって長いのか、草木は生え放題で外壁は色あせ、ツタが伸び放題に伸びていた。しかし中は意外にも綺麗にしてあり、ホコリこそ被っているが掃除すれば住めなくもない。
「よし!掃除だ!」
三人で掃除するには少し広いが頑張って掃除する。時間こそかかったがなんとか人が住めるまで綺麗にできた。
「いやーこんな物件が5万ゴールドで買えるなんて全く幸運だったよ。」
「そうですね。トカゲさんのおかげでなかなかいい買い物ができました。」
紅茶を飲みながら居間でくつろぐ。
「疲れたしもう寝るは。じゃおやすみ。」
「おやすみなさい。」
俺と執事さんの部屋は二階の二部屋を使って一人ずつ、一階の一部屋はリンナの部屋となった。少し硬めの布団に潜りなんとかうまくいきそうだと思うと少し安心する。