3、主人公≠正義
3日目です。
今日もよろしくお願いします。
一通りぶらつけるところはぶらついたが、言葉も文字も全くわからんので、何もわからなかった。わかることとしたらチーズがうまい。好物がうまいのはいいことなのだが買う金もないし言葉も話せないと、買うまでにいろいろ問題があるので言葉から解決していこうと思う。
「で、頼れるのがバディしか居ないんだけど、頼める?」
『いやです』
「その心は。」
『わたしの存在意義が一つかけます。』
「そんなことない。現に魔法がわかるってだけでほんとうに役に立っている。」
『それでもかけるのは嫌です。』
はぁ…変なとこで頑固だなぁこいつ。それでもなんとか説得し、数時間ぐらいでぎこちないながらも話せるようになれた。バディの教えがいいのかそれとも元々日本語に近い言葉の組み立て方だったのか割と短時間でできた。
『わたしの存在意義…』
なんかふてくされてるけど機嫌を直す方法がわからないのでとりあえず無視。それよりも気になってきたことについて聞いてみる。
「そういやなんで初対面の時臭いなんて言ったんだよ。」
『私の存在意義を返してくれたら話します。』
捻くれて変なとこまで頑固になっちゃったよ…
「返すも何も普通に考えてわかってたほうがいいだろ。」
『そうやって私の存在意義を一つ一つ無くして、最終的には捨てられる気ですよこれは』
めんどくせぇなこいつ。スキンシップとかしてやりたいが変態って言われそうだし触れそうにもないし。とりあえず放置。
とりあえず求人広告が貼ってあるところで仕事を探そうかといろいろ見るが…うーん文字がわからん。
「バディさん読んでくれますか?」
『そのうち自分でも読めるようなりそうなので却下します。』
うわ、職務放棄?てやつかよ。
「使わなきゃ存在意義も何もないだろ…」
あぁもうなんでこうめんどくさいやつになっちゃったかな。いつも俺の周りにはめんどくさいやつしかいなかったし…あぁ、まだ向こうにいたやつのほうがこいつよりも聞き分けはずっといいわ。
「ちょっとそこの旦那。」
フードを深くかぶった背の低いおっさんに声をかけられた。
「俺…でいいんだよな?」
「そうです、あなたです。」
どうやら言葉は通じるみたいだし、相手の意味も理解できる。
「実はここだけの話ここにある求人広告よりももっと割のいい仕事があるんですよ。」
随分とあやしいが聞いてみる価値はあると思い話を聞く。
「この街の裏路地の一番奥にあるんですけどね、そこがいわゆる何でも屋的ところで、入ってくる仕事は危険なものばっかですけどその分報酬はだいぶ高くもらえます。見たところあなた、だいぶできるでしょ?」
「まぁ誰にもってわけじゃないが半端やつには負けないぐらいには。」
「ご謙遜を。見たところ、ギルドでいうとこの金等級ぐらいはありますよ。」
そんな簡単になれるほど金等級は簡単なのかとも思ったが悪い話じゃないとは思う。
「そうか、ならばこの話受けよう。」
「本当ですか!ならばその場所に着いたらトカゲの尻尾といえば通してくれるはずです。」
フードの男は満足気に持ち場に戻っていく。世の中にはいろいろな仕事があるもんだなぁと常々思う。
「おいバディ道案内頼む。」
しかし返事は返って来ない。全く困った相棒だよ。誰かに聞かれると困るので人気のないところにいく。
「なぁ、聞いていなくてもいいけどさ、以外と俺はお前のこと頼りにしてんだよ。道案内とかそういう意味じゃなくてさ。なんかここにいる人たちとは根本的な所で分かり合えないみたいな、そんな感覚があるんだよ。でも、お前がいるからなんとかなりそうな気がする。そういった意味では何にも変えられないお前だけの存在意義だと思うんだわ。だからこれからもよろしく頼みたい。いいか?」
(ここまで語って何にも無かったら恥ずかしいんだけど…)
『…全く寂しがり屋のマスターを持つと疲れますね。』
なんとか機嫌を直してくれたみたいで良かった。突っ込みたいところもなくはないがまぁ一件落着ってとこかな。
「で、さっき言われたとこってどこにある?」
『裏路地の奥にあるということだけでは特定しずらいです。他の情報とかはないんですか?』
「いや、それ以外俺も言われてない。しかしその情報だけでいけるとなると、すべての裏路地から行けるっていうことでいいのか?」
『ビンゴです、マスター。どうやら北にある裏路地がすべて「backyard」と言う酒場に行き着くみたいです。』
「お、さすが有能です。じゃあ早速行くか。」
振り向くともう日はくれ月が夜の始まりを告げていた。
「全部の裏路地が繋がってるんじゃないのかよ…」
北の路地裏を歩き回ってかれこれ数時間。もう月は真上を通過したがまだ見つからない。
『特定のルートを通らなければたどり着かないようですね。今からルートを指示しますので少しお待ちください。』
(初めからそうしてくれれば楽だったのに…)
そんなこと思ってると目の前に青い線が浮かんできた。
「この通りに進めばいいのか?」
『そうですね、時間にしてだいたい10分くらいで着きます。』
「やっと休めそうだな…」
疲れ切った足に鞭を打つように頑張って道なりに進んでいく。
「やっとついたァ!」
backyardと書かれた看板。どうやら地下にあるようで下向きに矢印が向いている。
「おいそこのにぃちゃん、ちょいと待ちな。」
いかにもガラの悪そうな二人組に話しかけられる。
「ここの酒場はちょっと特別でな。普通の人は入れらんねぇんだ。まぁ、例の物を知ってりゃ話は別だがな。」
「例の物っていうとトカゲの尻尾…とか?」
二人は少し驚いたように顔を見合わせる。
「おいおい、久しぶりに使えそうなやつが来たぜ相棒。」
「まさか西に続いてこっちでも出るとはな。驚きだな。相棒。」
(なんだか興奮気味だが、この暗号になんか意味があるのか?まぁ金等級ぐらいともなるとそうなるのか…)
二人は俺に向き直す。
「ようこそ。歓迎するぜ、新入り。」
選ばれたやつにしか通れないだけありなかなかに重そうな音を立て扉が開く。
中には人が多くおり、活気があった。
「酒場の主人から依頼を受けられる。まずはそこに行ってみな。」
勧められるがままにマスターの所に行き適当な席に座る。
「見慣れないお客さんですね。入ってくるときの暗号は覚えていらっしゃるでしょうか。」
さすがマスターとだけあって大人の雰囲気というか、ダンディな雰囲気がにじみ出ている。
「トカゲの尻尾…だっかな。それがどうかしました?」
するとマスターどころか周りの人すらも驚いたように一瞬静まり返る。
「えっと…なんかまずかったですか?」
「いえ…お手数ですが、あの扉へお進みください。この酒場のボスがおりますので…」
(おいおい、いきなりボスと対面とかそんなに特別なのかよ。少し休めると思ったのに…)
奥の扉に手をかけ、 開けるとそこは酒場とは違った暗い雰囲気。真ん中のソファーには横になり眠っている人がいた。
「ボス。新入りです。ボス。起きてください。」
何度もマスターが呼びかけたりゆさぶったりするがなかなか起きそうにない。
「トカゲがきました。」
その一言でいきなり起き上がる
「馬鹿野郎!そうゆうことは早く言いやがれ!」
申し訳なさそうにマスターは後ろに下がる。
「えっと…よく来たな。お前がトカゲか。なるほどな…ふーん…ほぉーう…」
なんかジロジロ見られている。されていい気分ではない。
「まぁ、さすが勧誘屋が選んだだけはあるな。素質はある。だが、それだけで信用はできねぇな。」
なんか勝手に話進められてるけど、なんて言ったらいいかわからないので一応このまま話を聞く。
「お前、この依頼をやってこい。そしたら認めやるよ。」
紙一枚を渡され内容を確認…しようとしたが読めなかったので小声でバディに頼む。
(「バディさん…翻訳お願いします。」)
(『しましたが…後悔しないならお伝えします。どうしますか?』)
伝えてもらうに決まってる。そう答えると意味が頭の中に流れてくる。
(えっと…三日後、西門で貴族の娘をさらってこい?)
「はぁ!?」
びっくりしすぎて声に出てしまった。
「どうする?やめるなら今のうちだが?」
今引き返せばもっといい働き口もあるかもしれない。しかしそんなことをしていてはいつ別の転生者に会えるかもわからないし、完全な悪になってみたい気持ちもなくはない。
「わかりました…やります。」
今回ばかりは好奇心に負けた自分を少し恨む。
「それでいい。じゃあいい結果を期待してるぜ。」
ボスと呼ばれたオトコは上機嫌に一人笑っていた。