1、転生
今日から毎日投稿させてもらう作者です。
夏休み期間中ですがよろしくお願いします。
「今日町外れの空き地に来い。」
そう電話があったのは朝のことだった。
あの電話のせいで目覚めは最悪、おまけに授業中に寝ていて怒られる始末。最悪な1日を送る羽目になった。
(いつ番号がばれたんだろうなぁ…)
鬱憤ばらしにはちょうどいいが。そう思っていた。この時はまだどうでもいいと思っていた日常が、めんどくさいと思っていた勉強が、人生が、平和が、愛おしく思える日が来るとは思っていなかった。
「来てやったぞヤンキーども。」
当たり前だが、すでに相手は準備できており、30名ほどが集まっている。
「まずはお前!」
不透明なオーラを纏い一人に殴りかかろうとした瞬間、重たい衝撃が背後から伝わる。
(お前らバイクで弾くのはまずいって…)
額から血が流れ、視界を赤く染める。
「そんなにやられたいならやってやるよ。」
一歩でバイク乗りに追いつき蹴り倒す。
(次の野郎は…)
シャッ
頬をかすめたのは一発の銃弾
「銃はさすがにやばいって!」
しかも全員が銃をぶっ放してくる。
(さすがに撤退かなぁ、何発かもらっちゃったし)
何人か倒したもののあちこちに刺すような痛みがある。
「今回はお前らの勝ちってことにしてやるよ!」
出口に向かって走る。
しかし目の前に現れたのは一台の軽トラック。しかもかなりのスピードでこちらに向かって走ってくる。
(不本意だが吹き飛ばすしかないなこりゃ)
衝突する寸前、両手を軽トラックに向けて出した瞬間、オーラが衝撃波となり軽トラックを弾き飛ばす。
「くっそぉ…やらかした…」
しかし右肩に激痛が走り感覚が失われていく。
「早く逃げねば…」
無我夢中で走る。走って走って走りまくる。
大通りに出る道までたどり着くと俺は安堵した。安堵してしまった。
その油断のせいでこの先過酷なことが待ち受けているということをこの時は思いもしなかった。
♦︎♢♦︎
何もないただっぴろい空間。
その中で椅子に座ってなんとなく上を見上げていた。
ここが自分の知らないところであるということに気付くまでどのくらいこうしていただろうか。
目の前には馬鹿でかい赤い肌の人型の何かが偉そうに踏ん反り返って座っている。
「あ、やっと気がついた。」
ツノとかむき出したキバがゆっくり動いた。
(しゃべんのかよこいつ)
「いやぁ色々と災難だったね、バイクとか車にひかれたり銃で打たれたり…」
車?あぁ、そうだ大通りに出た瞬間にトラックに轢かれたんだっけか。
「で?俺は死んだのか?」
「そうなるね。」
「じゃあ、あんたは閻魔かなんかなのか?イメージと全然違うけど。」
「あはは、そんなに俺は偉くないよ。俺はただの大悪魔。地獄の大臣みたいなものかな。」
「そんな大悪魔さんが俺に何の用だよ。サッサと審判済ませて地獄に行きたいんだけど。」
「君、地獄に行きたいとか変わってるね。まぁそれはできないんだけど。」
理由を聞こうとしたが、次の言葉でそんなことはどうでもよくなった。
「君を殺したのは俺だからね。」
「は?」
意味がわからなかった。
俺は車に轢かれて死んだ。それがなぜ大悪魔が殺したことになる?俺の疑問に答えるように悪魔は話し始める。
「実はお願い事があってあの世、要するに現世にちょっとだけ干渉してあの暴走族に君を殺させたんだよ。」
「あいつらが銃を持っていた理由はあんたが干渉したからか?」
「まぁそうゆうことだね。」
なるほど、これであいつらがいつも以上にやばかったのはそうゆうことか。
「しかし君もしぶといよね、普通バイクに轢かれた時点で死んでるよ。まぁ、そんな貧弱なやつだったら頼まないんだけどね。」
「『氣』のせいだな、このモヤモヤしてるやつ。体にまとうことで鎧みたいに使えるし、衝撃波みたいな感じで放てば20メートルくらいヨユーで飛べるし。ま、その分疲れるんだけどね。」
なるほど、とつぶやきしばらく大悪魔は考えるようなポーズをとる。
「うん、やっぱり君に頼むことにしよう。」
「だから何をだよ。さっきから頼みごととかー」
「君には転生して世界を救ってもらおう。」
「そうか、ふーん。ん?世界を救う?」
「うん、世界を救う。これが君に対するお願い事さ。」
呆れて声が出なかった。
転生?そんなことは妄想の中の話かと思っていたし、何せそこから世界を救うときた。
「ばかじゃないの?なんで別の世界なんかを救わなきゃいけないんだよ、ふざけんなよ。」
悪魔は話しを聞いていないように話しをする。
「実は君に行ってもらう世界にはもともと4人だけで行ってもらうつもりだったんだけど、それって天使が決めたやつでさ、色々と便利な力を授けたって言ってたけど、正直卓上だけの話しで世界救えるって言われても信じられないんだよね。だから実力のある君にその4人をサポートして欲しいんだよ。」
「話聞いてますか?ふざけんなって言ったんですよ?」
「まぁまぁ、君だって18歳で死んじゃってまだまだやりたいこととかあったわけじゃん?そこで新しい人生を初めてみるのもどうかと思うんだよ?べつにそう考えれば悪い話じゃないと思うんだけどなぁ。」
「俺がやりたかったことは現世でしかできないことだ。それ以外の場所でできるはずなどない。」
そのままの勢いで語り尽くしてやる。
「そもそもだ、自分から望んだわけじゃないのになんで無償で別の世界を救わなきゃいけないんだよふざけんなよ、わざわざ生き返ったのになんで死にに行くようなことするのか、その精神がわからん。生き返ったんだったら死にたくないって思うのが普通だろうが、なんで世界を救うなんていうめんどくさいこと…」
「あーうるさいよ君。そもそも君は転生しなきゃこの空間すら出れないからもう道は決まってるんだよ。」
そう聞くと言葉をなくした。
単純にふざけんなとも思ったし、二回も死ねるかとも思った。
しかし断ろうにも断る術も断った先もない。
(腹くくるしかないっぽいなこれ。)
これからのことを考えると頭痛もするし、ため息ぐらいしか出てこない。
「わかったよ、行ってやるよ、これでいいんだろ?」
「やっとわかってくれたようだね。じゃあ行く前に君に渡したいものが一つあります。」
「チート能力か何かか?俺はもう強いからいらねぇよそんなもん。」
「いや、向こうで言葉も場所もわからないだろうからガイドみたいなものを渡そうと思うんだ。」
(言葉わからんのか…)
そう言って大悪魔が取り出したのは青い白い光る球体だった。
空中にフヨフヨ浮いてるところがなんかファンタジーぽい。
「この精霊を君に贈呈しよう。本当は俺が君に言語理解とかの加護みたいなのつけられればいいんだけどね。」
精霊は俺の前に来ると周りをくるくる回ったかと思うと、
『臭い』
「あぁ?」
いきなり喧嘩売られるとは。しかもこれからの相棒に。
「なんだよこの野郎そんな体で俺とやろうとはいい度胸じゃねぇかよオイ。」
だが相手は何も答えずシカトをかます。
クッソ俺が一番嫌いなタイプに当たるとはやっぱ今日は最悪の日だ。
「んじゃファーストコンタクトも終わったみたいだし、飛ばすよー。」
俺(ら?)の周りに魔方陣が展開されていく。その陣が上に迫ってる。
足、体と感覚がなくなっていくのはちょっとしたホラー。
「おい俺こんな性格なやつと一緒にやっていけるわけないって!なんか別のやつにk…」
完全に言い切れずに転送が終わるってしまったらしい。
(あぁ、こんなことなら死ななければよかった。)
後悔しながらも新しい世界に足を踏み入れる。