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15、2週間ぶりの掃き溜めに

15日目です。

地獄2日目です。

よろしくお願いします。


 久しぶりに窮屈な学生服に袖を通す。出てくるのは袖から出てきた手とため息だけ。答えを出すまでの時間はもう数日しか残っていない。結局、あそこに入ったけど誘拐だけしかやってない。何せすぐに学生という身分になってしまったし、あの二人を見るのに忙しいし。それに情報収集などの地味な仕事はトカゲクラスの俺の管轄外らしく受けることすらできないので、限られた時間でやるには到底無理な依頼ばかり残ってしまう。しかしなぜbackyard内でもあまり信頼されてない俺を国家転覆なんてものに誘うのか。ボスの考えがわからない。それよりもあの二人をどこに逃がすかという問題の方が先だ。失敗したらbackyard付近のここが真っ先に疑われる。それだけはなんとしてでも避けなければいけない。しかしあそこにいる人たちにも同じように大切な人はいるのだろうか。多分、いるんだろうな。自分がやってることを知っているかもしれない。そんな人たちを巻き込むのって複雑な気持ちにならないのだろうか。そんな疑問ばかりが頭に湧いてくる。

「それじゃ、行ってきます。」

 前回の一件があるのでリンと一緒に登校せずに一人だけで行く。

(『マスター、国家転覆への返事は決まりそうですか?』)

「いや、まだ出そうにない。王都に行けば何かわかるそうだがあまり期待はしていない。」

(『王都に行けばわかります。』)

「なんか知ってるような口だけど見たことあるのか?」

(『この世界のガイド役が王都のことを知らないなど恥でしかありません。』)

「まぁそうだよな…」

 確か王都見学は明日だったな。連絡事項とか聞いてないけど大丈夫かな?誰かに聞こうにもグロンに聞くのは気まずいし、黄月もサナンも生徒会の人間だから多分敵視されてると思うし。でも毎年ってことは赤夏にも連絡されているかもしれない、でも俺が呼んだらあいつの周りの連中に変な印象を与えかねない。気まずいがグロンに聞くしかない。いつもより早く出たので教室には誰もいないかと思ったらサナンがいた。

「おはよう。いつもこの時間なのか?」

「生徒会として誰よりも早く来ることは至極当然のことよ。それより先日は私たちが解決できなかったばっかり問題にに巻き込んじゃってごめんね。」

「謝ることなんてない。このことに関しては誰も悪くないと思ってる。人間ってのは力を持つと誰でもああなっちまうもんさ。それより、明日のことについて連絡事項とかないか?」

「なんか上から見られてる感じがするけど、連絡事項といえば集合場所が王都前の広場ってことぐらい。」

「ありがとう。んじゃ明日はそこに行けばいいんだな。」

 なんとかサナンから連絡事項を聞けたが、早く来すぎてしまってやることがない。外の景色はいつもと変わらず人や馬があっちへ行ったりこっちへ行ったり忙しそうにしている。それをぼーっとただただ眺める。2週間前とやることはなんら変わらない。むしろ死ぬ前からずっとこうしていたと思う。喧嘩に明け暮れ、喧嘩で技を使いジジイに殴られる日々。そのせいで周りから人は離れ、どこに行っても自分だけ孤立している感覚が付いて回るようになってしまった。しかし以外にもこっちに来てからはバディがいるからかそんな感覚はあまりしない。

「トカゲっていつも外見てるけど何か面白いものでもあるの?」

「面白いものなんてないさ。ただ時間が過ぎていくというのを感じるだけだよ。」

「それって楽しい?」

「全く。逆に自分が世界の外側にいるって思うと虚しくなってくる。」

「よくもまぁ虚しくなるだけなのに続けてるわね。」

「それ以外の時間の潰し方を忘れてしまったからかな。」

「悲しいくならないの?」

「そんな感情とっくのとうに薄れたよ。」

 しばらくすると生徒が一人、また一人とどんどんクラスにはいってくる。そしてすべての生徒が俺に対してマイナスの感情を向ける。舌打ちをするもの。少しおびえた様子を見せるもの。嘲笑するもの。どうやら俺の好感度はどうやっても回復できないほどに地に落ちたらしい。回復させる気など毛頭もないが、そんなことよりもグロンのことの方が気になる。親はロクでもない奴らしいが、きちんと治療を受けられたのか。しかしその答えを知ることはできなかった。昼食も一人で済ませ午後も何事もなく終わり、いつの間にか修行場所になってしまった北の裏路地で2人と話す。

「教える前に今日はお前らに紹介したい奴がいる。」

「誰?もしかして三人目?」

「三人目ではないが俺の大切な相棒だ。バディ、出てきてくれ。」

『初めまして、バディと申します。あまり人に知られたくないのですが、お二人は信用できるので姿をお見せすることにしています。』

「うわー!すごい、ふわふわ浮いてるよ。ファンタジーって感じ!可愛い!」

「これって精霊ですよね?どうやって契約したんですか?」

「悪魔にもらったんだよ。言葉とか地形とか全くわからないからガイドとして連れて行けって言われてな。」

「と言うと今までずっと一緒にいたんですか?」

「基本はいつも俺の影に隠れているけど、風呂とかの時は部屋にいてもらってる。」

「えっ!じゃあ私と出かけた時も一緒に?」

『はい。ついでに言っておきますと服屋の場所を調べたのは私です。』

 それを聞いて赤夏はなぜかショックを受ける

「ひどい…二人きりだと思ってたのに!なんでこっそり連れてきてるのよ!」

「いや、バディいないと文字読めないし、どこに行こうにも道がわからないしで頼らなきゃ生きていけないって、てかなんで怒ってんの?」

「知らない!」

 えぇ…わけわからないことで怒るってなにさ。女子って本当なんなんだろう。

「まぁ、話はこのぐらいにして今日のメニューはいつもどうりだな。昨日と何も変わらない。」

 赤夏はまだむくれてたが気にせずにつづけた。

「それと明日はお互いに忙しいし早めに終わらせよう。」

「わかりました。それでは早速お願いします。」

「それじゃ遠慮なく。」

 昨日と同じ事を少し短めにやり終えると明日はここに集合するということで話がまとまり中等部も同じところに集合ということでリンも一緒に行くこととなった。

「まさかバディが他の人に姿見せるなんて思ってもみなかったな。」

『関係のない人なら断りますが天使の使者となれば私のことを知っていた方が何かと都合がいいと思いまして。』

「まぁそうだよなぁ、この世界のことなら大体知ってるし、道案内とかもできてすごい便利だもんな。」

『もしかして私をスマホか何かだと思っていませんか?』

「そんなことないよ。スマホなんてただの機械だろ?あんなものが心を支える事なんて出来ないよ。」

『私がいると安心しますか?』

「あぁ。する。いざという時に頼りになるし、俺のことちゃんと知ってくれてるし、わかってくれている。」

『そこまでマスターが重症だと思いませんでした。』

「うるせ、俺は根っからの寂しがりやだよ。」

 あぁ、この時間がずっと続いていけばいいのに、それでも朝はやってくる。硬いベットから起き上がる。今日起こる事がこの後の俺の、俺たちの運命を左右する結果になることを頭に入れて冷静に、感情的に判断しなければならない。それよりこんなことを考えていてあの3人にばれないだろうか。リンと赤夏にはばれそうな気がする。なんとなくだけど2人によく見られている気がするので注意しなければならない。

「おはよう、二人とも。」

「おはようございますトカゲ君。それとリンナさんも。」

「お前、後輩相手にさん付けかよ、何度も会ってるんだしそろそろ普通に呼んだらどうだよ。」

「年下にも敬意を払うのは生徒会長の立場としても、私の主義としても当たり前のことです。」

「逆に初対面の相手に向かってほっぺたつねったりするトカゲの方がデリカシーないのよ。」

「あれは完全にお前が悪い。」

「良い悪いとかそんな話じゃないくて、人と接する上では普通はあり得ないよ。」

「ふーん…じゃ初対面の相手に深淵の何たらかんたらーっていうのは普通なんだ。」

「あれは忘れてよ!」

 恥じらいからか赤夏の頬が少し赤くなる。こういうタイプはいじっていて楽しい。

「先輩方。遊ぶのはいいですけどそろそろ行かないと時間がなくなりますよ?」

「あぁ、悪いリン。それじゃあ行きますか。」

 この国は北ブロック、西ブロック、南ブロック、東ブロックの4つのブロックに分かれており、その真ん中に位置するのが王都となる。一ブロックがめちゃくちゃでかいので総じて国自体が大きくなる。まぁ真ん中にあるから王都はそんなに大きくはないがそれでも街一つ分ぐらいよ大きさがある。バディ曰くこの国はこの近くの国と比べるとだいぶ大きいほうだという。そのせいなのか移動用の魔法が他の国より発達しているらしい。人の足で行くには半日以上かかるところが魔法で一瞬で付くという。魔法っていうのは本当に便利だな。今回は転移魔法を使っての移動になる。

「一回使うのに十万円…高いな。」

「電車みたいに安いものはないの?」

「あまり前世の文化と比較するものではありませんよ。赤夏さん。それに今日は学生証を見せるだけで使えるのでお金はかかりませんよ。」

 国がその代金を肩代わりしているので今日はそれだけで乗れるが、多分今日以降使うことはないだろう。

「ちなみにリンはこれ使ったことあるのか?」

「いえ、家には馬車があったのでその方が安いですし、そもそもここの貴族は急ぎの用でなければ使わないものなので初めてです。」

 リンが俺に向かって敬語を使うのは珍しい。

「なんだ?他の先輩がいるからって無理してんのか?」

「なんでトカゲ先輩はそういうことにだけ察しがいいんですかね。」

「そういうことだけってなんだよ。」

「わからないのであれば結構です。」

 そんなことを話していると自分たちの順番がくる。楕円形の人一人が入れるようなポットに入ると魔法が作動し浮遊感とともに下から感覚が無くなっていく。ちょうどこちらの世界に来た時と同じ魔法らしい。元の世界に戻れるかもと思ったりもしてしまう。まぁ行った先も同じ世界なんだけど。出口から外に出ると目の前には大きな城壁と城門。実にファンタジーだと思うが万里の長城とかも城壁だから別に珍しくないと思ってしまう。とにかくここでの行動が俺のこれからを左右する。気合を入れていこう。

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