11、計画
11話目です。
イナイレが復活しましたね。(今更)
今日もよろしくお願いします。
夕食を終え、一人仕事場に向かう。
「久しぶりだな、トカゲのにぃちゃん。」
「しばらく見ないうちになんかやせ細ったように見えるぞ。」
「しばらくって、まだここに来てから一週間経ってないでしょう。」
「まぁ、そうだな。」
門番の二人と軽く話してから中に入る。
「マスター、ヤキデは来てますか?」
「ヤキデさんなら宿でまだおやすみになられていると思います。それと、ボスがお呼びでしたよ。」
「ヤキデのところに寄ってから行きます。」
「そうですか、ではお気をつけて。」
階段を降りて下の宿に向かう。705号室に目的の人物はいた。
「ヤキデ!起きてるか!ヤキデ!」
「あぁもう、うるさいな!誰だよ一体!」
「俺だよ、金を返しに来た。」
「なんだ、トカゲか。それより金を返しに来たってなんの冗談だよ。金は全額ボスに取られたんじゃなかったのか?」
「それがあるんだよ。ほら、釣りはとっとけ。」
ヤキデに向かって二枚の金貨を投げる。
「おし、確かに受け取ったぜ。それより、よくこんな金あったな。また飯でもたかりに来たのかと思ったぜ。」
「依頼主の父親が迷惑かけたって言ってくれたんだよ。」
「まじかよ、いい父親だな。」
「あぁ、そうだな。んじゃ、今日はこれで。」
「なんだよ、金返しに来ただけかよ。」
「ほかにもやることあって忙しいんだよ。またな。」
ヤキデのところを後にすると借りていた防具などを返し、新調する。足当てと籠手だけだが、それでも皮の防具よりもマシである。
武器は鎖鎌に付け加え、日本刀を買った。なんでこんなにレパートリーが豊富なのかわからないが欲しいものを買う。少し遅くなったがボスの部屋に向かう。
「遅い!俺が言ったことはいの一番でこなすのが常識ってもんだろ?また殴られたいのか?」
「もう殴られてます…」
口よりも先に手が手でしまう大人にはなりたくないと思う。
「それよりも本題に入る。これを聞いたらもう後戻りはできない案件だが、お前には必ず聞いてほしいことだ。ちゃんと聞いてほしい。」
「そもそもここにきた時点で後戻りはできないと覚悟しています。」
「ならいい。これからお前に話すことは俺たちが目指している目標について話す。その目標ってのがこの国をひっくり返すことだ。」
「そりゃでっかい目標ですね。」
「おいおい、期待どうりの反応してくれないとこっからどう話し進めりゃいいかわかんなくなるだろ。」
だってすごい目標だなぁとしか言いようがないしそれ以外の感想というのが思い浮かばない。
「まぁ聞いてくれればいいわ。この国は腐り切っちまってると思わねぇか?俺はそう思うぜ。魔法という力がありながらも立場の弱い者が虐げられ、立場の強い者が幅を効かせる。弱い奴らも力があるのにもかかわらず、ただ物を奪われることに耐えることしかできない。要するにこの国の法律ってのは強い奴ら有利になるように作られてんだよ。そんなの許されるわけがない。」
「しかし、大半の依頼があなたたちの嫌いな力のある貴族連中からの依頼になってますが?」
「そう、そこだ。俺らみたいな奴らがどんなに頑張っても最後には偉そうな奴らがあれこれ言ってくるんだよ。だからこの国の根底から変えるしかない。そのためにもお前の力が必要だ。貸してくれるか?」
まさか軽い気持ちで入ったところが国家転覆を企んでいるとは思わなかった。とりあえず今ははぐらしておこうと思う。
「今の僕の立場から言いますが、僕がこの国に来てからまだ一週間も経っていません。ですから、返答は少し待っていただけたらと。」
「今すぐに答えろ、と言いたいところだがお前今学園に入ってるんだろう?だったらそこでこの国の内情を見てこい。ただし期限は一ヶ月後までだ。その期限を過ぎた時点でお前はここから追放させてもらう。」
ここの情報屋は優秀すぎて逆に自分プライベートが心配になってくる。
「時間をくださってありがとうございます。」
なんとか一発しか殴られなかったが、代わりにこの国の運命を左右する決断を迫られるとは思わなかった。学園でこの国の内情を見てこいとのことだが、本当に見れるのか心配になってくる。
「マスターはボスの目的って知ってました?」
「はい。むしろ知らなかったのは新入りのあなただけだと思います。」
どうやらここにいる奴ら全員が関わっているみたいだ。
「まぁ座れよにぃちゃん。」
隣にいるごついマッチョマンから座るよう勧められる。
「あんた、トカゲだろ?ヤキデから聞いてるぜ。一撃でなんでも吹き飛ばしちまうんだってな。」
あいつ、俺の初仕事を見てたのかよ。全く気づかなかった。
「学園での暴れっぷりも聞いてる。白銀等級と金等級も一撃で仕留めたってな。そこまでの実力があるなら俺らの目標も達成間近ってもんよ!」
「一体どこまで僕の生活は見張られているんですか?」
「学園の中に一人ヒトミがいるから、そこまでだと思うぜ。」
一人だけだったら注意していれば完全に見張られっぱなしということはなさそうだ。
「早いですけど、もう夜も遅いのでここら辺で帰らせてもらいます。」
「おう、いい答えを期待してるぜ。」
その言葉を聞いてbackyardを後にする。
「バディ、この話どう思う?」
(『確かにこの国の法律は平等に生きることよりも、いかに魔法を使える範囲を狭くするかに絞られている気がします。』)
「まるで原爆と同じ考え方だな。」
人1人が原爆にもなり得るからこそ、自由を奪い、限られた人間が支配することで平和を取り繕う。全く本当にどこに行っても人間の本性は変わらないようだ。
「それで、バディ的にはこの話を受けることはどう思ってる?」
(『個人的にはマスターに人殺しは似合わないと思います。』)
「ほう。その心は?」
(『優しすぎるからです。』)
「ドス黒い匂いがするって言っておいて、そういうのはなくないか?」
(『まだお互いをよく知らなかった時期ですからそれはしょうがないです。』)
「物は言いようだな。」
もう夜は更け、町の人は皆明日に向け好きに時間を過ごしていた。
「行ってきまーす。」
「行ってらっしゃいませ。」
昨日と同じように学園に向かう。
「どうだ?クラスには馴染めたか?」
「うん、みんないい人で友達も何人か出来たよ。」
「そりゃよかった。」
「トカゲは出来た?」
「何人かな。」
「へぇ、よくできたね。」
「おいそれってどうゆう意味だよ。」
「なんでもなーい。」
前世ではクソみたな空間だと思っていたが頑張ってみると以外と楽しくやっていけるものだと思う。
「はーはっは!良く来たな!我が生涯の好敵手よ!」
朝っぱらからあのテンションで来られるのはきつすぎるが、相手も良く朝っぱらからあんなテンションで来れるものだ。その点だけは感心する。
「えっと…トカゲの知ってる人?」
「悲しいことに友達だ。」
「あんな人とどうやったら友達になれるの…」
リンは引き気味である。
「おい、妹分が引いてるからやめてやれ。」
「ふん!何をやめろというのだ!このレッドブラットデーモン・シルバーデビルの姿である今の姿が本当の姿、それ以外は存在せぬは!」
「どうやらほっぺたをつねられたいようだな。」
「それだけはやめて!」
「わかったらとっとと行くぞ」
「なんかよくわかんないけど…うん、よくわかんないや。」
「わからなくていい。」
三人で学園に向かって歩く。
「そういえば、お前の名前聞いてなかったよな。」
「余の名前はレッドブラットデー…ひたい!ひたいからひゃめて!」(いたい!痛いからやめて!)
「次からお前がふざけたらほっぺたつねることにする。慈悲はない。」
「ひどい…いつか絶対に復讐してやる。」
「で?名前はなんていうんだよ。」
「赤夏 鈴って言います。」
「俺はトカゲ。学年は?」
「高等部の2年です。2年3組。」
「俺は高等部の3年2組だ。今後ともよろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。」
「私はリンナ・ハーデント。中等部の2年です。」
「リンナちゃんもよろしくね。」
「お前リンになんか吹き込んだらそのほっぺた引きちぎってやるから覚悟しとけよ。」
「わかってるって。」
本当にわかってるのか心配になる。
「じゃ、放火後、昨日と同じ場所で。」
「わかってるよ師匠。」
「なんかその言い方は癪にさわるが…まぁいいか。」
「トカゲって放課後何かしてるの?」
「特訓ってやつだな。」
なんだか妹分はつまらなそうな顔をするがすぐに中等部の教室に向かっていった。
高等部3年の廊下で金髪のイケメンオーラを醸し出した男に目掛け助走をつける。
「朝一番にドーン!」
しかし振り向きざまに避けられる。
「おっとっとっと…どうやら力は制御できてるようだな。」
「師匠、おはようございます。おかげさまでいつもより体が軽く感じます。」
「まさか1日で習得されるとは思わなかったがな。さすが主人公。ちなみになんだがそのコツってのを聞きたい。」
「まさか僕のような人間が師匠のような人にアドバイス出来ることなんて…」
「あるんだなーこれが。」
「それはどのようなことでしょうか。」
「なんとなくだが、前世よりこの世界の方が力の制御が思ったよりも簡単なんだよ。だから俺が苦労して習得したものを、いとも簡単にお前が習得できたと思うんだわ。そう考えるとイレギュラーもつきものかなと思ってな。」
黄月は少し考えてから話し始める。
「昨日、自分の中に力を集中した時に自分のトラウマを見せられたんです。」
「俺もそうだった。何度も墜ちて苦労した。で、そのあとはどうだったんだ?」
「何か神々しいものに『これがお前が力を望む理由か?』と聞かれました。」
これが、この世界でのイレギュラーか…
「それで、どう答えた。」
「自分が望むのは自分の守りたいものを守る力だって答えたら、何も言わずに消えました。」
「で、制御ができたと。」
「はい。」
これだけではあいつも同じようにうまくいくとも考えられないが、あの性格で克服できるとも思えない。となるとかけてみるしかないか…一応天使の使者の一人だし黄月だけってわけでもないだろう。
「参考になった。ありがとうな。」
「僕でよかったらいつでも相談してくださいね。」
「おう。今後もそうするわ。」
そういって黄月と別れる。
教室はいつも通り俺を無視して進んでいく。一人だけここにいない感覚。この感覚を忘れられないうちは人を拒み、排除しようとするかもしれない。そんな思考にとらわれる。
「はい、皆さん席についてください。ホームルームの時間です。」
それを聞いた生徒達は自分の席につく。
「休みはグロン君と…後はいませんね。それでは皆さんが毎年楽しみにしていると思いますが王都見学遠足のお話をしたいと思います。」
一人耳を疑った。王都見学?まさにこの国の内情を知る絶好のチャンスじゃないか。
「では3週間後の見学に向けて色々準備を進めていきましょう。」
3週間後というとちょうどボスが言ってた一ヶ月という時間にも当てはまる。なるほど、ボスはこれを見てこいと言っているのか。
「まずは準備を進める上で必要な班員を決めてください。今年で最後ですので、自由に組んでもらって結構です。」
よっしゃー!といった声や○○ちゃん一緒になろーといった声も聞こえてくる。どちらにしろ俺には関係のない話。俺の世界の外側で起こっていることなど気にしない。そう思っているとその外側の世界から拳が飛んでくる。当然のように避ける。
「相変わらずの喧嘩っ早さをどうにかしようと思わないのかよ。」
「あいにくこれが私の長所だからどうにかしようなんて考えた事なんてなかったわ。」
そこにあったのはサナンの姿だった。
「体調の方はもういいのか。」
「ばっちし。誰かさんが手加減して戦ってくれたおかげかしらねー。」
ノーガードの相手に本気で殴るほど人間は捨ててはいない。
「で、何の用だ。」
「この時間で話しかける目的って言ったら一つだけしかないでしょ。組も、私と。」
「断る。」
「なんでよ。」
「グロンと組むからいいわ。」
「残念、三人一組でした。」
心の中で舌打ちする。なんでこんな奴と組まなきゃいけないのだ本当に。
「では決まったようなので各班で何を調べるかテーマを決めてください。」
先生、調べ学習に精霊を使うのはありですか?と聞きたくなるが仲間を売るほどまた、人間は捨ててはいない。
「テーマ何にしよっか。」
「とりあえず眠いから寝るわ、おやすみー。」
「職務放棄しないの。」
「じゃ適当にこの国の法律の仕組みとか成り立ちとかを調べりゃいいんじゃないか?」
「あーそれいいかも。それにしよっか。」
「もうそれにしよう。面倒くさいし。」
「このままだとこれから先が不安になるんだけど。まぁ、いいや。それにしても王妃が大変なのによくやってくれるよね。」
「それってどういう?」
「なんか、毒を飲まされたせいで体がうまく動かないんだって。」
「ふーん…じゃ、眠いから寝るは。」
「どれだけ寝たいのよもう。次の時間までには起きててよね。」
「善処する。」
この王都見学でこの国を知ったら俺はどっちに転ぶのだろうか。まだわからないが自分で決めたことにはきちんと責任を持ってやりたいと思う。