8、貰ったものと持ってるものと
8日目です。
今週も毎日投稿頑張ります。
今日もよろしくお願いします。
双方一歩も譲らずに睨み合っていると勢いよく扉が開いた。そこに立っているのは当学園の学園長に当たるグリム・マダドーラその人だった。
「学園長!丁度良いところに!二人を止めてください!」
「何?喧嘩なの?いいわね〜若気のいたりって感じで。」
しかし強く止めるとこはなくなんだか肯定的な態度。
「いいんじゃないかしら?やらせても。」
「学園長!」
その時教師は膝から崩れ落ち、教室は大いに盛り上がる。
「じゃ、決まりだな、どこでやる?」
「愚問ね。体育場に決まってるじゃない。」
確かパンフレットに書いてあったな…魔法戦闘訓練で、実際に戦える場所だったと思う。
「オッケー。泣いても知らんぞ赤髪の。」
「金等級の力、思い知らせてあげるわ。」
金等級か…相手に不足はない。むしろ封印している技を使っても耐えてくれそうな相手で興奮が止まらない。学校と言ったら憂鬱なイメージしかなかったがここは随分と楽しめそうだ。
初めての学校で色々と見て回りつつ体育場に向かう。もうすでに相手は準備はできており、何人か観客もいるようだった。
「遅い。喧嘩ふっかけておいて遅れるなんていい度胸ね。」
「ふっかけてきたのはどっちだよ。」
睨み合っている状況は変わらない。
「お互い気合は十分のようね。ではこの学園長、グリム・マダドーラが監督の下試合を始めさせていただきまーす。」
学園長が手を上げる。これが下がりった時が始まりの合図となる。戦闘、しかも相手は同格かそれ以上ときた。周りの音が消え、自分だけしかいない感覚に襲われる。
「始め!」
練り上げた氣をまとう。いつもよりも強い相手なので油断はしない。
「くらいなさい!」
相手は炎を飛ばしてくる。多分見ての通り炎魔法だろう。それを右手で弾き落とす。
「ぬるいな。それでも本気か?」
「いきなり本気出すのはかわいそうだと思ってるだけよ。」
複数の魔法陣をだし同じように炎を飛ばしてくる。
「何個あっても同じこと!」
両の手を使い次々と弾き落としていく。
「まぁ準備運動としてはこんなものね。少しずつ本気出していくよ!」
今度はさっきのより大きい魔法陣を展開、出てきたのはさっよりも大きい火球。
「こんなもので試されるなんてなめられたものだな。」
右手を差し出し火球を氣を使い弾き飛ばす。
「ほらほら、もっと来てもいいんだぜ?なんならもっと強いの出してもいいぞ。」
「なめたこと言ってると舌噛むよ!」
赤髪はいきなり殴りかかってくるが、もちろん避ける。しかし前回とはキレも早さも格段に増しており、なかなかに本気を出してきてくれているよう。
「へぇ、少しはやるじゃん。」
「避けながら言われても皮肉にしか聞こえない!」
「んじゃ、こっちのターンと行きますか。」
まずは腹に一発、やるつもりが避けられてしまう。まぁ早くなってるから避けれて当然なんだが。お互いに一歩も引かずに殴りあうがどちらも当てられない。
「あたりなさいよ!」
「おまえもな!」
そんな中先に動いたのは赤髪の方。
「あなたがよくやるやつだってのは認めてあげる。だけどこっからは何が起きても恨まないでよね!」
至近距離で魔法陣を展開し火球を放たれる。それで体勢を崩され一気に相手に蹴られ殴られのやられたい放題される。ガードはできているのでダメージはそんなにないがやられっぱなしは面白くない。
「調子に乗るんじゃ…ねぇ!」
足先から氣を放ち、地面を揺らす。それにより相手は体勢を崩しその隙に蹴り飛ばし、こちらのターン。だがこれもガードされ続け、まともなダメージを与えられない。とりあえず一旦距離を置く。
「よくやるなお前。褒めてやるよ。」
「別に褒められても嬉しくないし。てかまだ本気出してないのに偉そうにしないでもらえない?」
そう言うとさっきとは違った魔法陣。
「くらいなさい!私の最強魔法!」
魔法陣から解き放たれる火柱。
「うわっとぉ!」
間一髪で避ける。当たった壁は熱で赤くなり、今にも溶けそうな状態。
「まだまだ!」
しかもこれを連発してくるので近づこうにも近づけない。
「あらあら?さっきまでの威勢はどうしたのかしら!それとももう終わりなのかしら?」
どうやら、あの秘技が必要になってきてしまったようだ。あまり使いたくないが使うしかない。相手の攻撃を避けつつも全身に意識を集中させる。相手を死なせるとして師匠からは封印するよう言われていたが、ここなら大丈夫だと思う。
「それじゃ、こちらも本気を出すとしますか…」
一気に全身の氣を爆発させるように増幅させる。全身に力がみなぎる。感覚も鋭くなりわずかな風の流れを感じられるほどになる。
「今更どう足掻こうと変わらないわよ!これで止め!」
火柱が俺目掛けて放たれるが気にしない。そのまま相手に向かって歩き出す。強い衝撃と熱を感じる。それでも足は止まらない。
「なっ…バカなの!?これを真正面からうけるなんて、あんた死にたいの!?」
「死ぬかよこんな攻撃で。」
熱かったが服ごと氣でガードしていたので火傷はおろか焦げ跡すら残っていない。
「信じられない…私の最強魔法を受けても怪我一つ追わないなんて…」
「それより力魔法の精度をあげろ。まだ終わってない。」
「それってどうゆうー」
ドゴッ
「かっ…はっ…」
答えるよりも早く行動に出てしまう。俺の一撃はみぞおちに入り相手の視線は定まっていない。そのまま地面に倒れこみ苦しそうに短い呼吸をしながら気絶してしまった。
「終わったな。」
いきなりの展開に誰もが唖然とした。
「おい審判。判定。」
「あぁ、ごめんなさい、ただいまの結果、トカゲ君のー」
「待った!」
その時客席の中から一人声を上げ、立ち上がる姿があった。
「この勝負、この僕に預けていただきたい。」
いきなりめちゃくちゃな事を言い出したのは前世の俺を殺した元凶と言ってもいい存在。
「黄月君。それはどうゆうことかしら。ちゃんと説明してくれないとおねぇさんわかんないな。」
「はい。今の勝負は明らかにフェアなものではありません。しかも女性に対する行動ではなく、同じ男としてー」
「あーあーあー。それ以上気持ち悪い言い方をしないでくれるかな。もらってばっかのゆとり野郎。」
「人の話は最後まで聞くものだよ。それになんだゆとり野郎とは、それが人と話す態度なのか。」
いかにも真面目で頭が硬く、天使たちが洗脳しやすそうな人材だと思う。こんなのが世界を救えと言われたら二つ返事でOKするに決まってる。
「じゃあ聞くけどさ、何にも持ってない奴が偉そうにモノ言っちゃってるけど恥ずかしくないわけ?」
そうゆうと周りの反応が次第に変わる。
(「あいつ、身の程知らずにもほどかあるだろ。火炎の嬢王様に勝ったぐらいでこの学園一位の黄月さんにさからうとか。」)
(「なんなのあいつ。黄月様にあんな態度とって、一体何様のつもり?」)
氣が高まり切った状態だからこそ聞こえたが、普段なら聞こえない声量で会話をされる。
「本当に君は立場をわかっていないみたいだね。僕は学園の一位でここの誰よりも強いんだ。まぁ今日入ったばかりだからわからなくてもしょうがないけど。」
完全に見下されている。天使からもらった力がなきゃ今の地位にも立てないやろうが…
「一位?だからどうした?一位だからお前みたいなやつにへーこらしてなきゃいけないのか?」
「別にそうゆうわけじゃない。ただ、この学園を乱すような行動は謹んでもらいたいと言うだけだ。」
「悪いが言葉じゃわからない人でね。黙らせたいなら拳で黙らせてくれよ。」
「この僕に挑んだことを後悔するなよ。」
不穏な空気の中、黄月が下に降りてくる。
「では、黄月 龍君とトカゲ君の試合を始めたいと思います。」
チッ、相変わらず見れば見るほどむかつく顔だ。イケメンってのを全身で体現したようなまさに主人公属性持ちの奴め。本当に美味しいことだけ持って行こうとしているところが物語の主人公らしい。
「始め!」
試合が始まったので余計な思考はここで辞める。
「早速だが本気で行かせてもらうよ!」
大きな魔法陣を展開し何やら大技を繰り出そうとしている模様。するとその魔法陣から大きな雷が落ちてくる。当然避けない。
「どうだ。やっと君と僕の間には圧倒的な力の差があるということがわかったか?」
「あぁそうだな。圧倒的すぎて何をされたのかわからなかったよ。」
最大まで開放された氣のおかげでもちろん無傷。それどころが一歩も動いていない。
「…どうやらもっとキツイお仕置きが必要のようだ!」
先のものと同じものを複数個展開し、しかも本人は宙に浮いている。そんなにやって魔法使えなくなったらどうなるのかと少し思う。「くらいたまえ!」
何度も雷を浴びせられるが結果は変わらない。まぁ当てられてばかりでいい気はしないし、正直鬱陶しいくらいである。
「もうさ、めんどくさいから本気でかかってこいよ。転生者君。」
それを聞くと黄月の顔色が変わる。
「君、どこでそれを…」
「悪魔から聞いたんだよ。お前らのお守りをしろってさ。全く嫌になるぜ。」
「悪魔からだと…しかも僕たちのお守りだって…くっふふふっハハハ。」
黄月は笑いを抑えきれずに吹き出してしまった。
「なんの冗談だ。君みたいなやつが僕たちのお守りで、しかも悪魔からの頼み?全く冗談にもほどがあるぞ。」
「俺は他人から色々ともらってるくせに偉そうにしてるやつのほうが冗談だと思うぜ。」
「なんだ。皮肉でも言ったつもりか。」
「それ以外に何がある。人に生かされてるくせに偉そうにしやがって、むかつくんだよ。そうゆうの。」
「生かされているだと?僕はきちんと自分の意思で生きている。誰にも生かされてなどいない!」
「じゃあてめぇはなんでここにいる。死んだからか?それともここに来れたからか?いや、違うね。天使から世界を救うとかいう理由もらったからだ!それなのによく生かされていないなんて言えるな!それに付け加え、その魔法の力も身体能力の高さも言語理解の能力も!何もかも天使からの貰い物だ!てめぇの意思どころかここにいるお前の存在自体が天使からもらっものだけでできてるくせに何が自分の意思で生きているだ笑わせる!」
「君だってもらってるだろう同じように!生きる理由も力も!何もかも!」
「じゃあこの力をてめぇは使えるってかよ?使えるわけがない!これは俺が前世で鍛えた俺だけのオリジナルだ!てめぇ等にはない、ましてや貰い物でもない、俺が持っている力だ!生きる理由だ!ちゃんと俺は自分の意思で生きている!どうだ!生きているぞ!」
「ならば偉そうに御託を並べるより態度で示したまえ!僕を否定したいならば!」
「望むところだ!」
そう言い放ち力強く跳躍。ゆとり野郎の顔面に一発ぶちかます。
「一瞬であの距離を…」
「まだだ!」
空中で繰り返される応戦。だが俺の方が有利に戦いを進める。黄月の攻撃は何もかもが遅い。自分の力を理解できていないから殴る動作一つにしても無駄がありすぎる。その隙に畳み掛けられて終わるのがわからないのかと言わんばかりに胴を殴る。一発、二発、三発。
「ぐはぁっっ!」
黄月を地面に叩きつける。
「なんだよ、天使からちゃんと相手の動きがよく見えるようになる力とか、筋力アップとかの力をもらわなかったのか?」
相手の顔にはもう余裕の表情はなく、悔しさに顔を歪ませている。
「認めない…悪魔のほうが天使より強いなんて…」
「悪魔じゃねぇ、俺のほうが強いんだ。」
「ふざけるな…ふざけるなふざけるなぁ!僕は!僕たちはここで負けられない!世界を救う身として!正義の代行者として!」
「悪いが負けイベントだ。諦めろ。」
黄月の背中に手をかける。
「な…いつの間にー」
全力で氣を放ち、壁まで吹き飛ばす。正義の味方気取りの一般人には黙っててもらう。
「勝者!トカゲ!」
学園長がそう告げると同時に1時間目 の終了を告げる鐘がなる。
関係ありませんが今日はそろばんの日らしいです。