プロローグ
登場人物
○森 明彦 [62] 作曲家。
○菅原 康夫 [36] 同。
○簾内 葉月 [44] 同。
○鹿取 清高 [37] 同。
○関端 安 [52] 同。
○大南 千栄子 [28] 同。指揮者。
○細田 剛 [31] 森の執事。
○黒河 淳也 [37] 森の執事。
○高木 恭介 [29] 森の知人。
真夜中で一人、月明かりに照らされる海をじっと眺めていた。ただ、幾度と繰り返される小さな波の音と揺らめく黒い影しかそこにはなかった。
明日は作曲家達が孤島の屋敷に集まる。その屋敷には三人の男が住み、毎年集まった作曲家達と共に宴会が行われていた。
が去年の夏、その宴会は行われなかった。その理由として一つ挙げられるものがある。
それは人が一人死んだということだ。
ああ、と一人、ため息をついた。あの日の光景がじわじわと思い出される。
死んでしまった彼も、二年前にその宴会に出席した。毎年のように曲の話をしては、苦しい生活の事情をお互いに作曲家同士語り合い、これからも楽しく活動していこう、というような話をしていた。そして最後の日の嵐の夜、彼は窓から飛び降りて死んでしまった。嵐による豪雨で体はずぶ濡れで、頭から広がる赤黒い血の海。その死体の目の前に立つ異形の像。それはすごく残酷なものであった。
後の警察の調べにより、生活が非常に追い込まれて敢えなく自ら飛び降りた、と決断し、彼の死は自殺で幕が降りた。
しかし残念ながらその死は「自殺」ではなかったと断言できる理由が一つだけある。
あれは「他殺」であり、犯人はこの自分であるということだ。
事件が発覚する前夜。彼と話をしているうちに殺したのだ。彼がすきを見せたその瞬間、自らの手で殺したのだ。彼はその一年前の宴会であんなことをしたからだ。
別に後ろめたさや後悔なんぞしてはいない。むしろせいせいしている。彼は死に値する罰を受けなければならなかったのだから。しっかり殺す用意もしておいて正解だったと今でも考える。
今年の宴会にも「裁き」が必要だ。二年前のあの日のように。二年前にあんなことをしたのだから。
突風が現実へと引き戻した。獣の唸るような音が耳を流れる。鋭く冷たい風はだんだんと体を冷やしていく。
今年も嵐になりそうだ。ふと、そんな気がした。