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この瞳で見渡すセカイ  作者: カメスケ
~第1章·謎の呪い~
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第4話 ミッドガルド

いつもより少し長めです。

「ミッドガルドへようこそ!」


門をくぐると、そこには栄えた中世の町並みが広がっていた。


「いらっしゃい!新鮮な魚揃ってるよ!」


「ミッドガルド限定のお守りはいかがぁ?!」


「新鮮なお野菜!新鮮なお野菜!」


このミッドガルドという町は思っていた以上に賑わっていた。その明るい町の雰囲気に釣られて悠来の顔から笑みがこぼれる。


「中世とはまたなんともよくあるパターンだなぁ……」


「みてみて!あそこ!きれいな噴水があるよ!」


「待ってくださいスピカ!観光目的じゃないんですよ!あくまで食料と転移魔法具の調達が目的なんですからね!」


リアスは慌ててスピカを呼び止める。


「リアス、その呼び方は時代遅れだよ。今時は転移魔法具じゃなくて、オーガポーターでしょ。」


「そ、そうなんですか?」


なんか魔法さえなければ現実世界でも普通にありがちなやり取りだなとか思いつつ、悠来はため息をつきながら店先の椅子に座り込んでしまった。


「あー、疲れた…」


「あれ?フィール?どうしたの?大丈夫?」


スピカはまたいきなり顔を近づけてきた。


「うわっ!だ、大丈夫だって!」


「ホントウ?」


「あぁ、本当だよ。大丈夫、ちょっと疲れただけだから。先に行っててもらえないかな?あとですぐに追いかけるから…」


「じゃあ、私もここでちょっと休憩する!みんな先行ってて!」


スピカは悠来に抱きつく。角が目に当たりそうで凄く怖い。


「うぉっ…いや、ちょっと一人にしてくれないか?」


「えぇ?そんな…でも…」


「スピカ…フィールの言うことを聞きなよ、これでもこのチームのリーダーなんだから。これでもね。」


「ちょっとシュミー!それは…今はフィールの言う通りにしましょうスピカ。」


スピカはさっきまで元気そうにブンブン振っていた尻尾をしなりとさせる。


「分かった…すぐ追いかけてきてね…」


そう言って、皆は行ってしまった。


なんだろうこの罪悪感。


スピカはいつも俺のことを心配してくれる。優しい子だ…まさかスピカも実は俺のことを疑ってたりしないよな。まさか、そんなことはないよな…


スピカはなぜかいつもベタベタしてくるし、多分嫌われてるってことはなさそうだ。今のところはな……


今考えるとスピカはちょっとボディタッチが多い気がする。そりゃ、あんな可愛い子にベタベタされるのは男としてはとても光栄なことなんだけど、コミュ障からするとすごーく会話がしづらくなる行為だ。やめてほしい……とは言わないけど。


まさか…距離を縮めてくるのは、俺のことが好きなのかな?なーんてな。んなわけない。好かれることなんて一度もしてないどころか、会ったばっかりだ。言うならば、過去に誰かがプレイしたギャルゲーのデータをそのまま引き継いでプレイするような感覚だ。過去に誰かが高感度をあげて……


「ん?」


高感度…前に誰かが…もしその誰かというのがフィールなのだとしたら彼女が好きなのは、俺じゃなくて、このフィールという人間のことが好きということになる。

ん?フィールという人間…?


「は!」


わかったぞ!このフィールという名前と体は夢異世界での“アバター”のようなものかと思っていたがそれは違うんだ!


これは『入れ替わり』の設定だ!


もともと異世界で生活していたフィールという人間と、現実世界にいる松尾悠来がひょんな事で入れ替わる、ドキドキストーリーって訳だ!なるほどな、これなら今までのことも説明がつく!


「あ?」


今シュミー…


『これでもこのチームのリーダーなんだから』


とか言ってたっけ?シュミーのやつ『これでもね』って。完全に喧嘩売ってるだろ。


それと…


『プライドの無い、メンタルが弱い人間についてきたわけじゃない。』


とか言ってたっけ…

それはつまりこのフィールというのは、5人チームのリーダーで、プライドが高く、メンタルの強い人間だった訳だ!


「うぉー!」


なんか知恵の輪が解けたみたいに、一気に辻褄が合ったぞ!

……知恵の輪解けたことないけど。


あとは、入れ替わっていることをあいつらに伝えるかどうかだ。


伝えたら、もう嫌な目で見られなくなるだろうか…?

それならいいんだが、逆効果の可能性も捨てきれない。


『貴様!今まで演じていたのか!嘘をついていたんだな!死ね!』


これは最悪の場合だな。


だけど伝えないと物語が進展しないんじゃないか?いや、隠し通しながら物語を進めるなんてこともできるか…思い切って伝えるか、どうするか。もうあんなに冷たい目で見られたくないしな…


あぁもう!ゲーム感覚で面白いんだが、どうせ夢ならもっと楽しげな異世界生活を送らせてほしいね!


って言うか、本当にこれ夢なのか?あまりにも長い気が……


「おーい、にーちゃん、ホントは聞こえてんだろ。返事ぐらいしてくれや。」


「え?あっ!はい!なんでしょう!」


黒のオールバックにエプロンをしたおっさんがずっと俺に話しかけていたようだ。全く気付かなかった…

鋭い眼光がこちらを睨みつけている。


「もう一度言うぞ!そこはうちのお客さんが座るところなんだよ。そんなとこでボーッとしてるかと思えば『は!』だの『うぉー!』だの、迷惑極まりないんだよ。そんなんじゃお客さんが逃げちまうだろ!こっちがこれだけ注意してるのに、あんた全然聞いてくれないし、困っちまうよ!どんだけボーッとしてんだ!」


悠来が座っていたのはカフェのテラス席で、いきなり話しかけてきたのはそのカフェの店主だった。


カフェの店主にしてはがたいがいいな。


「あぁ……すいません……。」


やばい…泣きそう…ダメだ泣くな、お前は今フィールなんだぞ。お前はプライドが高く、メンタルが強い男だぞ。ちょっとぐらい、なりきってみせろ!


「うん…?ちょっと待て?お前はまさか、ひょっとしてフィールか?」


えぇっと…


「え?!あ、あぁそうだとも。私はフィールだ。」


フィールの喋り方ってこんな感じかな?


悠来は自分なりになりきってみる。


「おー!やっぱりそうか!俺のこと覚えてるか?!」


態度急変…嘘だろ。知り合いかよ。下手に知り合いのふりをすると面倒なことになりかねない。ここはあえて覚えてないとでも言っておこう。


プライド高く、プライド高く…


「いや、残念ながらあなたのことは覚えていない。」


「えー、そうなのぉ?ほら!君、こーんな小さいときに、君のお父さんとお母さんに連れられてさ!うちの店に来たんだよ!そしたら君が……」


なんだろう。長くなる。俺はわかるぞ、この流れは超長話に突入するやつだ。コミュ障である俺の第六感が逃げろって言ってる。

うまいこと回避しよう。


「ほんで、それがまた美味しそうに食べるわけだよ!で、そしたら…」


「おじさん。」


「大切なお洋服をよごしてっ!あらもー…フィーちゃんったらぁ!」


ダメだ聞こえてない。


「おじさーん。」


「そんでもってよー!俺が怒ったら泣き始めちゃってよー!」


話が聞こえてないのはそっちも同じじゃないか。


「おじさん!!!」


「だから、おめぇに俺は言ったんだよ、食う……あ?なんか言ったか?」


「残念ながら私は急がねばならない。そろそろ仲間のところへ戻らねば。」


「なんだ?おじさんの話を聞くのがめんどくさくなったのか?」


当たり前だろ!


「まぁ、いいよ、行きなや。でもまたいつか来るときは食べに来いよ!」


「ええ、そうします。」


二度とくるか!こんなとこ!


「では。」


「おう!」


フレンドリーなおじさんだな。あれはコミュ障の敵だ。


あ、せっかく回避できそうだが一つ聞きいてみるか。一人の大人としての意見を。


「おじさん。」


「おっ?どうした?」


「やっぱり、結果がどうであれ、伝えるべきことは伝えなきゃならないですよね?」


答えによっては皆に入れ替わりのことを打ち明ける決心が…


「お?恋か?恋の悩みか?そういうお年頃か?」


聞かなきゃよかった…


「やっぱりなんでもないです…」


もっと違う人に聞くべきだったな。


「待て。」


呼び止められ、悠来は振り返る。そこには真剣な表情に一変したおじさんがいた。


「君が……何を伝えたいのかはしらない。誰に、何を……。だけどな。伝えなきゃならなくても、伝えないほうがいいときもある。それだけは、覚えておくんだ。」


突然真剣な返答をしてきたので、「何かあったんですか」とか聞きそうになってしまった。そんなことをしたら今度こそ話が長くなるどころの騒ぎでは無くなりそうだったのでぐっとこらえて、


「わ、わかりま…った、ありがとう。」


「おう!まぁ、言って後悔するか、言わずして後悔するかどっちかっつうことだ!次いつ来れるんだ?」


そしておじさんはまたフレンドリーモードに入る。


「もう、しばらく無理かもしれません。今日は目的を果たしたらすぐにこの町を出ると思うので。」


悠来は適当なことを言って、もう来れないことをアピールする。


「そうか、残念だな」


「それでは、またいつか。」


「先のことをよく考えて行動するんだぞ!じゃあな!」


何やらワケアリな過去をお持ちのようだが……それはさておき、ただの面倒くさいおじさんかと思ったら、意外と真剣に答えてくれたから良かった。


言って後悔するか、言わずして後悔するか。行動して後悔するか、行動せずして後悔するか。はっきり言って俺はかなりチキンな方だが行動しないで後悔するほうが俺的には嫌だ。それに…


夢の中くらいチキンを克服したい。己の心に打ち勝つのだ!本当に夢ならの話だが。


そう、つまり俺の結論は、


「無理!言わない!」


いや、違う。言えない。いま想像してみたけど怖すぎて気絶しそうになった。そうだとも。お気づきの通り俺は根っからのチキンだ。


「それにもう言うタイミングを逃してるよな。」


目覚めたすぐに言うのが多分一番だったんだろうな…


でもまぁ…なんとかごまかしながらもう少しやっていけるだろう。


さあ、すぐに皆を追いかけないとまた変な目で見られるぞ!


悠来は今の決断が全く無意味になるとも知らず、店を出て軽快に走りだした。


その瞬間、地面の石畳が一気に吹っ飛び、大量の砂埃をあげ、轟音とともに猛スピードで突き進んでいった。そう。悠来はまたやらかしてしまったのである。


「わすれてた!この体、力のコントロールできないんだった!」


悠来は、通りすがりの屋台やら野菜やら、売り物を吹き飛ばしながら進んでいく。


「ありゃ…止まらない…」


花畑でやらかした時は岩という障害物があったからすぐに止まったが、驚いたことにこの先だいぶ何もない直線の商店街の様なものがが続いている。


通りすがる町の人たちは驚きを隠せない様子。


「誰か止めてぇーー!」


何百メートルか進んで、目の前にアイスの屋台と、おばさんが子供にアイスクリームを渡しているのが見えてくる。このスピードでぶつかったら、多分想像以上のことが起こる。


「やばっ!ブレーキ!ブレーキ!」


悠来はダメ元でかかとを思い切り地面につけ、急ブレーキをかけた。そのブレーキのおかげでその人達は助かったが、道には大穴があき、終いにアイス屋台と子供の持っていたアイスの部分だけが突風で吹き飛んだ。


「なっ…なん…なにしてるの?あなた…」


子供とおばさんは髪の毛をボサボサにして呆然としている。


「ははは…えーっと…」


辺りは騒然としている。


「アイス、欲しいなーって、ははは…」


しばらくするとブーイングが飛び交い始める。


「何してくれてんのよ!」


「何やってんだ!」


「責任取れ!」


どうやら、とんでもない事をしてしまったようだ。


この現場をあいつらに見られたらもう言い逃れはできそうにない。


そんな中、そのアイス屋台のおばさんはこちらをじーっと見つめこんな事を言う。


「あなた、フィール?フィールよね?」


…???


「みんな!この子、絶対フィールよ!」


「あら、フィール?」


「フィールなの?」


「本当だフィールよ!」


おい、フィールとやらよ。お前この町にきたことあるな?


「あ……えっと、わっ私のことを知っているのか。」


「知ってるに決まってるじゃないの!」


いきなり反応変わったけど、俺はこの町をめちゃめちゃにしちゃったんだよ?現行犯だよ?


とりあえず謝っておこうかな?


「すまない…この通りの売り物を駄目にしてしまった。それに道を壊してしまった。まっ、町の皆に謝らなくては。」


「そんなことどうでもいいのよ!それよりお祝いしなくちゃ!」


え?どうでもいいの?だいぶやったけど。


「よし!皆にフィールが帰ってきたことを伝えてまわれー!」


「おーう!」


「宴だ!宴だ!」


辺りはとんでもない騒ぎになっている。


「いったい…何がどうなって…?」


「フィール、これはいったい何事です!?」


「は!」


どうやら騒ぎを嗅ぎつけてリアスたちからこっちに来てしまったようだ。


「えーっと…スピカはどこに行ったんだ…?」


「あなたがスピカを除け者にしたから、拗ねて一人で観光中です。そんなことよりこの騒ぎは…」


「いや、その……」


と、悠来が返答に困っていたところ。


「やぁやぁ…フィールや。懐かしいのう…」


このドタバタのさなか、静かに話しかけてきたお婆さんがいた。深くフードをかぶっていて顔がしっかり見えない。


「フィール?このお婆さんと知り合いなんですか?」


「………?い、や……?」


「フィール!質問にしっかり答えて下さい!」


「これこれ、喧嘩は良くないのう。」


「うぐっ…」


リアスはお婆さんに注意されて縮こまる。


「ところでフィールや、いきなりで悪いんじゃが、お前さん今何か困っていることがあるな?」


「え?!」


「ふふふ…」


なんだろうこのお婆さん。普通じゃない。そう悠来は確信する。


「まぁいい、この騒ぎじゃ落ち着いて話もできん。昔話でもしにうちへ来なさい。」


文脈から察するに、このお婆さんもフィールの知り合いだ。だが、この町にいる人達とは何かが違う。


この人、入れ替わりについて何か知ってるかもしれない。そう思った悠来は答える。


「わかりました。行きましょう。」


「フィール!?この胡散臭そうなお婆さんに付いていくんですか?!」


「胡散臭いからついていくんだ。」


「ホッホッホッ。そういう事は本人に聞こえないように言いなさいな。」


そうして4人はお婆さんに案内されるままついて行った。

大通りを横切り、迷路のように入り組んだ路地に入り、階段を登ったり降りたり…


バルバスはもともと無口で大人しい性格だから分かるが、シュミーもさっきから一言も喋らず杖をつく音しか聞こえない。


一度腹黒い一面を見てしまうと黙っているだけで何を考えているのか怖くなってくる。


「フィール。町の人たちの反応からして、あなたこの町に訪れたことがありますよね?」


「それが、全く覚えていないのだよ。」


「本当に覚えてないんですか?」


「あ、あぁ。本当だ。」


「では、周りが散乱していたのはなぜです?」


「あれは騒ぎのせいじゃないかなぁ?」


「とぼけないで下さい、また力の加減を間違えたんじゃないですか?」


「そ、そんなこと、この俺がするはずないだろ!?あっ、私が…」


「フィール、あなたさっきだって!…」


「喧嘩はやめろと言ったであろうに!」


おばあさんは怒鳴る。


結局そこから家につくまで沈黙が続いてしまった。


//////////////////////////////////////


しばらくすると、一軒の小さな家が見えてきた。


「ここじゃ、まぁ入りなさいな。」


『ぎぃ』と音を立てて開いた扉の向こうは、何やら怪しげなものがいっぱい置いてある棚や、怪しげな本棚、怪しげなピアノ、怪しげな絵……とまぁ怪しげな物のオンパレードだった。


しかし、外装は少し小汚かったものの、家の中はとても整理されていてお婆さんの几帳面さが伺えた。


「そこに椅子があるから人数分取って座りなさい。私は茶でも入れるでな。」


「お婆さん、お茶は結構です。」

「お婆さん、お茶はいらない。」


毒でも盛られると思ったのか、リアスとシュミーは口を揃えて拒否した。


「そうか…では、早速本題に入るとしよう。」


「本題?」


「そうじゃ。」


悠来はゴクリとつばを飲む。


「フィール。ここにいるのはお主の仲間でよいな?」


「え…?はい。そうです。」


「では、ここにいる仲間のフルネームは言えるな?」


「なっ…!」


悠来は突然の事でフリーズしてしまった。




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