表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この瞳で見渡すセカイ  作者: カメスケ
~第1章·謎の呪い~
4/10

第3話 道中の疑問

「誰だこいつ…」


水面に映っていたのは悠来の顔ではなく、別の人間の顔だった。


「えー…マジ?」


悠来は何度も肩から頭にかけて触ってみた。が、やっぱり自分の首と繋がっている。


「うわー、イケメンだ。」


悠来の言う通りこの顔はかなり整った美青年だった。

悠来は水に映った顔を睨めつけてみた。当然睨み返してくる。


「クソー!なんだよこのクールビューティー!」


これが現実の顔だったら一生モテキだろうなぁ。

イケメンになりたいという願望が全くないわけではないんだ。って言うかかなりある。だけど別にこんなに高望みはしてないつもりだった。でも夢の中の自分がこんなにイケメンってことは、心のどこではやっぱり、望んでしまっていたのか。

と、自分にガッカリしてしまう。


悠来は立ち上がり、後ろを振り返る。すると突然声が聞こえた。


「確かにフィールはカッコイイけど、フィールって自分からそんなこと言うキャラだったっけ?」


そこにはみんなが立っていた。


「いっ!き、聞いてたのか!しかも皆さんお揃いで…」


あぁ、今度は全員に見られた…夢の中とはいえ、そろそろ恥ずかしすぎて精神的に終わりそうだ。さっきのリアスもそうだったけど、こいつら意図的に足音と気配消してるだろ。意地悪め…ちょっと警戒しとかないと。


「僕達が気付いていなかっただけで、実は昔からそういうキャラだったとか?ハハハ!まさかそんなことないよねぇ?」


「からかうな!」


悠来はつい怒鳴ってしまう。


「うそ!図星!ハハハ!」


「だから、そうじゃないって!」


「あぁ、もう、いいからいいから!早く行こ!」


スピカはニコッと笑みを浮かべる。


「そうですよ、フィール待ちですよ?」


リアスも微笑む。


「……………」


バルバスもほほえ…んでるんだよな?髭モジャで分かりづらい…


なんだ、みんな性格良さそうじゃん!安心した!

悠来はそう思うと。


「よし!いくか!」


こうして、5人は少し離れた町へ向かう。


町へ向かう途中、リアスが話しかけてきた。


「それにしても、よくスピカをあそこまで宥められましたね。あなた、今までまともにスピカを泣きやませたことなんてないじゃないですか。正直驚いています…」


「驚いたって、つまりまさか、できないと思って俺にやらせたの?」


「できてもできなくても当たり前でしょう?あなたが発端なんですから…」


「う、うぅん。そうなんだけどさ…」


「一体何をしたんですか?魔法ですか?」


リアスは興味深そうにこちらを見ている


「そんなわけないでしょ!いや、俺もよくわからないけど、『勘違いだよ』って言ったら落ち着いちゃったんだよね…」


「ちょっと。冗談言わないでください。それじゃあ、いつもの言い訳と同じじゃないですか。」


い、いつも?前があるのか?俺そんなに女の子とベタベタしたことないぞ…ただ俺は夢だから思い切ってやってみただけで…

っていうかいつまでお話続くんだろう。疲れてきた。


「俺に言われてもわからないよ…」


「そうですか…」


ふぅ……ようやくお話が終わっ……


「もう一つ気になる事があるのですが」


ってなかったわ。


「今度はなんだい……」


ため息をつきながら言い返した。

かなりコミュ障な俺からすると、こんな初対面の人間と長話するというのは超疲れるのである。


「フィール…あなた、前から一人称“俺”でしたっけ?全体的に喋り方もおかしいですし。」


リアスは疑いの表情を見せる。


えー。知らないよそんなこと。


「あー。えーっと…違ったっけ?」


悠来はじーっと見つめられる。


なんだなんだ?なんだと言うんだ?


「僕、だっけ?」


リアスは、違うと首を振る。


「おいら?」


リアスはまだ首を振っている。


「あっし?」


リアスは睨みながら首を振る。

これ、結構ヤバイ状況かもしれない。かなり怪しまれてる。


「わっ…私?」


「それです。」


リアスの首は、やっと動きを止めた。が、まだ睨まれてる。疑っているようだ。

しかし、そのリアスの視線とは別にさっきから他の視線を感じていた。

その視線の主はすぐにわかった。スピカだ。


「おーい、リアスさん?スピカがこっち見てますよー」


「なっ、ホントですか……」


すかさずリアスはスピカの方を見る。

スピカは風船のようにほっぺたを膨らませ、


「楽しそうで何よりだよ!」


と、イヤミ混じりに言ってからそっぽを向いてしまった。

それを見たリアスは、まだ悠来に何か言いたそうだったが、うつむいてしまった。


ありがとう、スピカ。今のでとりあえず危機は脱出したよ…


悠来は『ホッ』とため息をつく。

なんか…なんだろう。すごく気を使う。疲れてきた。でもこれで、しばらくは落ち着くだろう。

と、思ったのだが。

またリアスが大きく息を吸う音が聞こえる。


「フィ、フィール。あなた今スピカのことをスピカとおっしゃいました?」


リアスは指を顎に当てて、口をポカンと開けていた。


「それ、僕も思った!」


シュミーも口を合わせて言う。


「………」


バルバスも、多分同じことを言いたいのだろう。


「…?えっと、なんで驚いてるんだ?スピカはスピカだろう?」


みんな口をぽかんと開けている。


すると、スピカは自慢げに言った


「ふっふっふー!フィールはね、ついに私のことをファーストネームで呼んでくれるようになったんだよ!」


「いっ、いつの間にそんな!」


リアスは「なるほど」と手を叩く。


「スピカは、認めてもらったから、上機嫌になったんですね?」


まだ皆、口をポカンと開けている。

え、すごい気になる。


「ね、ねぇ、シュミー。なんでそんなに驚いてるのか説明してくれない?」


「いやいや、だって今まで意地でもファーストネームで呼んでこなかったじゃないか!そんないきなり…あのさ、二人の間で何かあった?」


シュミーは恐る恐る質問する。


「いやぁ…特に何もないけど。」


「特に何もなかったけど、フィールは私のことを、いつの間にか!みとめてくれたんだよねー!」


スピカはとても嬉しそうに笑っている。


「まぁ、別にいいけどね。僕らはもともと認めていたんだし、そもそも今までフィールが意地張って認めてこなかったのがおかしいんだけどね。おめでとうスピカ!やっと認めてもらえたね!」


シュミーはニコッと笑う。

この世界での俺ってどういう性格だと思われてるんだろう。


「ちょっと待ってくださいシュミー!こんなに突然な事おかしいとは思わないんですか?!」


「いいじゃないか!今までの面倒くさいやり取りがなくなるとおもえば!吉報!皆さん聞いてください!ついにフィールがスピカのことを認めました!」


シュミーとスピカは高々と手を上げ大笑いしている。


「バンザーイ!!」


「まったくもうリアスったら、いつまでそんな顔してるのさ!ほら!町が見えてきたよ!」


少し変な空気になってしまったものの、シュミーのお陰でちょっとした騒動は収まった。


///////////////////////////////////


町が見えてきた。


「スゲー…」


思わず感嘆の言葉が漏れる。


街の入り口には大きな門が構えており、特に検閲などもなく、皆観光地に来たかのようにはしゃいでいる。治安はかなり良さそうで、安心した。


それはそうと、シュミーにあの場を収めてもらったお礼をしないとな。明らかに、俺のことを思っての行動だったように見えたし。


「良さそうな町だ。」


「そうだね!安心だ!」


「あのさ、シュミー…ありがとう。」


「いやいや、いいってことよ!だってフィール自身が決めたことなんでしょ?それは、僕らに口を出す権利なんてないよ。」


シュミーは親指を立てて悠来につきだす。


「シュミー…君は良い奴だよ…」


「ハハ!そんなこと言っても何もあげられないよ!」


この、シュミーってのは良い奴だし…シュミーとならコミュ障を発動させずに仲良くできそうだ!


「それより…言いたい事があるんだけど、いいかい?」


シュミーは目を大きく見開いて、いきなり顔を近づけてきた。


「どっどうしたの?」


「フィールさ、今まで僕のこともファーストネームじゃ呼んでくれなかったよね。」


シュミーは真顔で、しかし口元だけなぜかニヤついたような顔で言った。


「はっ…」


「どういう風の吹きまわしか知らないけど、いきなりそんな反応になったらさ、何かやましい事でもあるんじゃないかって疑っちゃうよね。」


「ごっ、ごめん…」


「謝らないでよ。君そんなにすぐに謝るような人じゃなかったはずだよ。そんなプライドもない、メンタルも弱い男についてきた覚えはないよ。しっかりしてよ。」


「…………」


「冗談だよ!早く行こう!」


いや、俺には分かる。今のは本気だ。目の変わり方が天部にそっくりだった。

前言撤回、こいつ苦手なタイプだ。シュミー、あいつの目の奥には何か黒い感情を感じた。さっき俺をかばった時の笑顔は表面上もので、心の底ではあいつも俺のことを疑っていたんだ。恐ろしい。なんだよ今の威圧感は。下手なこと言うと何されるかわからない。


悠来の体はは気付かないうち、恐怖に震えていた。


「これは、夢だ。これは夢なんだよ。夢なんだよな…夢のはずなのに!」


震えが止まらない!クソ!なんで夢の中でまで怖がらなきゃいけないんだ!現実でも、夢の中でも怯えて過ごさなきゃならないのかよ!


「フィール!何やってるの!早くきなよー!賑わってるよ!」


スピカの声が響く。


「あ、あぁ!今行く…」


悠来は震えながらも皆を追いかけた。


////////////////////////////////////////////////


「ミッドガルドへようこそ!」


門の下では、延々とその言葉が響いていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ