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大嫌いは恋の始まり  作者: 氷室ユリ
第二章 いつの間にか育まれていたもの
88/215

18-(2)


 車内にて。


「ねえ。何だか、機嫌悪くない?新堂さん」

 私のこの質問は、当然無視される。


 しばらくして、負けずに繰り返す。「怒ってるんでしょ、新堂さんってば!」

 

 すると。

「ああ。怒ってるよ」と、意外な答えが返って来た。


 こういう時は普通、怒ってないよ、と怒りながら言うものだ。


「やっぱり!何で?私のせい?」

「そうだな」と運転しながら淡々と答える。


「私の何が気に入らないの?ケガをしたのに、主治医のあなたに連絡しなかったから?それとも、海外のボーイフレンドと会ってたから?」


 あえて、ボーイフレンドという言葉を使った。


 だって、この人とは恋愛関係じゃないんだし。問題ないはず!

 こんな言い訳を考えながら、自分の言い分を正当化する。


 対する彼は、またしても黙秘を貫くつもりらしい。


「だから、その事は謝ったし、こうして病院へも向かってるじゃない。これ以上、私にどうしろって言うのよ」


 私がそう言った直後、新堂さんは突然車を停めた。


 助手席の私を見ている。

 相変わらず、何を考えているのか全く読めないポーカーフェイスで。


「何か言ってよ」たまり兼ねて、私から沈黙を破る。


「ユイ。海外でも使える携帯を持て」

 こんな事を言って来る彼に、「新堂さん!ふざけないで!」と私まで腹が立ち始める。


「ふざけてないさ」

「そんな事を言うために、わざわざ車を停めたの?」


「悪いか?」


 もう何も言いたくなくなった。

 明らかに、彼の態度はいつもと違った。


 いつもイヤな男だったけれど、ここまで理不尽な人ではなかったはず!


 車は再び動き始める。


 そして、ベイブリッジに差し掛かる。


 ここからの景色は、私のお気に入りの一つ。

 けれど…。


 今回ばかりは、私を癒してはくれなかった。


「もういい!」ついに我慢の限界で、声を張り上げた。

「何だって?」


「今のあなたを信用できない。そんな人に、治療なんてしてもらいたくない」

「何を言い出すのかと思えば…」


 有料道路にも関わらず、彼はまたもや車を急停止させた。


「ちょっと!急に止まらないでよ」急ブレーキで、体が前に持って行かれる。

 左肩を庇いながら、何とか姿勢を保つ。


「自分が何を言っているのか、分かってるのか?」

「ここは駐停車禁止よ」


「いい加減にしろ!」彼が、いきなり大声で怒鳴った。


 その後、沈黙のまま数分が経過。


「…済まない、大声を出して」彼が先に切り出した。

「ここで降ろして。歩いて帰るから」


 私はドアに手を掛けた。


「バカな事を言うな、危ないだろ。こんな所で降りるな!」


「死にはしないわ!例え死んだって、あなたなら助けてくれるでしょ。事前に依頼しておくから、代金教えてくれる?」


 勢いでそう言い終えた時。


 彼の頬に、何か光るものが流れた気がした。

 まさか、あの新堂和矢が、泣いている?どうして、こんな事で…。


「新堂、さん…?何か、あったの?」


 彼は、本当に声を殺して泣いていた。


 どうしたものかと迷いつつも、「良かったら、話してくれない?」と問いかけてみたけれど。


 何も話そうとしない。


「ごめんなさい…。私、自分の事ばかりで。あなたに何かあったかもなんて、考えてもいなかった。…本当にごめんなさい」


 きっと、新堂さんにもいろいろあるんだ。私の知らない、いろいろが。


 それなのに私は…。


 この人の事をとやかく言えないくらい、自分勝手だ。


 俯いた彼の横顔をただただ、申し訳ない思いで見つめるしかなかった。



いつも気丈な男性の涙、本当にドキリとします。いろいろな意味で…。

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