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大嫌いは恋の始まり  作者: 氷室ユリ
第二章 いつの間にか育まれていたもの
83/215

17-(2)

ルクソール、テロリスト集団のアジトにて。



「(ユイ!こんなに早く、また君に会えるとは思わなかった!)」


 運良く。

 エリックの留置される場所に連れて来られた。


 まさに狙いどおり!


「(嬉しいよ…!)」私に抱きついて、エリックが言う。


 そんな彼から体を離し、「(早かったでしょ?)」と、上から下まで見下ろす。

「(…どうやら、今のところ無事のようね)」

 

 所々、殴られてアザになってはいたけれど。

 ひとまず、無事は確認できた。


「(ごめんよ、こんな場所に呼び出して)」


「(連絡が入れられるなら、軍隊とか警察にでも、通報した方が良かったんじゃない?)」

 呆れた調子で言い放ってみる。


「(それはダメだ。この足じゃ、僕も捕まってしまう…)」

「(え!足、…ケガしてるの?ちょっと、大丈夫?)」


 思わず大声を出した私に、見張りの男が何やら叫んだ。


「(あの人、今何て?)」

「(…ああ。黙ってろってさ)」


 エリックはアラビア語が分かるらしい。


 私達は監視の目をやり過ごすため、しばらく沈黙を続けた。


 少しして。

 再びエリックと小声で作戦会議を開く。


「(で、なぜ敵は、あなたを殺さないのかしら)」


「(利用価値があるからだろ。もちろん、それは君にも言える事だ)」

「(どんな?)」


「(何しろ、僕は有名人だから!)」と胸を張る。

「(…なるほどね。とすると、連中は何か、大きな事をやらかそうとしてる、とか?)」


 有名人を捕まえれば、話題になって宣伝にはもって来いだ。


 私の言葉を受けて、彼が掌にギリギリ収まる大きさの石を差し出して来た。

「(何それ)」と覗き込む。


 ただの黒い石に見える。


「(奴等から戴いた。これがあれば、軍事業界で一儲けできるぞ…)」

 笑いを隠せないといった様子で言う。


 何でもその石は、ある物質と結合すると強力な妨害電波を発するらしい。

 そんな物が世に出回ったら大変!


 テロ集団が、世界を掌握する…?

 そんなバカな事、あってはいけない!


「(なぜそんな物が、こんな所に…?)」

「(さあ。僕も経緯は良く知らないんだ。でも連中は今、これがなくなって大騒ぎさ)」


「(あなたが奪ったって、気づいてないの?)」

「(さあ…)」暢気な表情を見せる。


「(じゃあ、なぜ捕まったの?)」私は質問を変えた。

「(潜入がバレた。今回の変装はイマイチだったな~、僕とした事が!)」


 変装も彼の特技の一つだと聞いている。


 そんな、おどけていた彼だったけれど。

 ふいに真剣な表情に変わって、手にした石を私に握らせて来た。


「(何よ…。いらないわよ?こんな物!)」


 私の声に、見張りの男がジロリと睨んで来る。

 思わず小さくなって顔を背ける。


「(今回の報酬って事で。ダメかな?相当の額になるよ)」とウインクを飛ばす。


「(だって、あなた、これのためにここに来たんでしょ?)」

 今度は慎重に小声で答える。


「(命を捨ててまで、手に入れたくなんてないよ。世界中の女が泣く姿を、見たくないしね)」


 こんな状況で、こんなセリフを口にできるなんて!


 複雑な心境ではあったけれど。

 取りあえず、この場は受け取る事にした。


・・・


 それから、三日ほど経ったある日。


 見張りの男が、持ち場を離れたのを見計らって、対策を練る。


「(そろそろ脱出を考えないとな)」

 この言葉に私も頷く。

「(当然、君の相棒も持ってかれたよね…)」と私を見て続ける。


 コルトの事だ。

 あれがあれば、とっくに鍵を壊して飛び出している!


「(それにしても、見張りの男、戻って来ないわね。どうしたのかしら)」

「(逃げるなら、今じゃないか?)」


「(そうよ!エリック、鍵開けるの得意でしょ?)」鍵の方に顔を向けて彼に促す。

「(道具がないと、さすがの僕も無理だな)」


 そんな彼の前で、おもむろに髪から、金属製の髪留めを外して見せた。

「ちょっと貸して!」エリックがそれを奪う。


 そして数分後には。

 南京錠型の鍵は、彼の手によってあっさりと開けられていた。


「(どんなもんだい!)」


 自慢げな彼をよそに、「(さあ、逃げるわよ。歩ける?)」と、彼に手を貸して逃げる準備を進める。


「(歩くのは問題ないが、走るのは無理そうだな…)」痛そうに顔を歪めて言う。

「(仕方ない、行ける所まで行きましょ)」


 敵に見つからない事を天に祈りつつ、脱出。


 ところが…。

 外へ出た所で、いくつものカラシニコフ銃に出迎えられた。


 どうやら、罠だったようだ…。



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