終章 終わりの扉
あれから、3年と言う月日が流れた。
俺の病気はすっかり治り、高校に無事進学した。
俺はあれから、あの世界に足を運んでいない。
松本先生とも、それ以降はその話をしなくなった。
もう2度と足を運べないと考えると悲しいからだ。
松本先生も話を振らなくなった。
俺は2階にある1人部屋で、机に向かい、宿題をしている。
時間は夜。
閑静な住宅街の間から、満月が見える。
月もあの世界も同じ位不思議だ。
俺は不意に月を見る。
ゲームの世界のように月に魔力があって……。
んな訳無いか、俺はもう高校生だ。
そんな妄想は止めよう。
あの世界の事だって、いつかは忘れるんだから。
俺は机に向かい、数学の宿題の続きをやった。
コツコツ。
しばらくすると、窓を叩く音がする。
どうせ、近所の猫か、局地的な強い風だろう。
俺は無視をした。
コツコツ。
又、同じ音がする。
コツコツ、コツコツそれが複数回続いた。
今日は何処の猫だ。
俺は部屋に1つしかない窓を見る。
「ルイ」
俺は驚く。
そこは2階にも関わらず、いや、その前にルイは死者だ。
現実の世界に足を運ぶ事だって、出来ないはずなのに……。
でも、スーツ姿の長躯の青年、紛れもなく、ルイの姿だ。
もしかして、超常現象?
俺は真意を確かめる為、窓を開けた。
すると、ルイが窓を全開に開け、器用に僕の部屋の中に、するりと入り込む。
凄い腕力だ。
「久しぶりだな。トオル。さっ、冒険の旅に出掛けようぜ」
無邪気に笑うその姿は、間違いなくルイだった。
ルイは手を出し、僕をパラダイス・ワールドに誘う。
俺はまだ、状況が飲み込めないが、俺は手を握り、握手をした。
どうやって、ここにいるのは分からないが、ルイは迎えに来たのは分かる。
俺はそんなルイに従う事にした。
それが、俺の為だと思ったからだ。
俺は知らずにルイを、いや世界を求めていた。
だから、手を握る。
こうして、俺の楽しい冒険は再び始まる事になった。
終わり