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緑の章  作者: 叢雲ルカ
緑の章②
11/11

第3章 最強の助っ人登場?

 俺達は別の街に足を運んだ。

「ここは、まだ、大丈夫そうですね」

 とおるが見回す。

「うん」

 俺も辺りを見回し、確認する。

「とりあえず、どっかに入りますか?」

 ルルが提案した。

「そうですね。お腹空きましたし」

 とおるがお腹を抑えていた。

「分かった。そこの、お店に入ろう」

 俺達は近くにあった食堂に入った。

 食堂では、いわゆるその他大勢が、食べていた。

 この中に、パラダイス・ヒューマン以外の人、死神や人間がいるかは分からなかった。

 しかし、平和な風景であった。

「僕、ハンバーグが食べたい」

 席に着き、とおるがメニューを見て即決する。

「ルルは?」

「私は、ビーフシチューがいいです」

「分かった。すみません」

 俺が注文をしようと、ウエイトレスを呼んだ。

「って、コウ!」

 やって来たのは、フリフリのスカートをはいたウエイトレスと言うより、メイド服姿のコウがいた。

 コウは凄腕の女性剣士で、人間だ。

「君は……」

「あっ、消えた」

 コウは一目散にキッチンに潜った。

「あのー注文」

 キッチンに向かい、コウを呼んだ。

「お嫁に行けない」

 頭を抱え、泣いていた。

「大げさな」

 その程度で、行けなくなったら、世のメイド喫茶のメイド達やリアルメイド達は皆行けなくなり、人類壊滅が何10年も早くなるだろう。

「お父さんにも見せてないのに」

 じゃあ、何でそんな恰好しているんだよ。と、突っ込みたくなったが、あえて、口にしない。

「トオル様はこの恰好が好きなのですか?」

 ルルが気になってやって来た。

「えっ?」

 俺は別にと言った所だ。

 確かに、コウさんの恰好は魅力的だったが……。

「私も着たいです!」

 俺が躊躇ったら、ルルが声を大きくして言った。

「トオル君。嫉妬には気を付けてね」

「何をだ!」

 クスクス笑っているとおるに突っ込む。

 もう、好き勝手な連中何だから。


 30分後。

 まあ、そんなこんなで、ルルもメイド服に着替えた。

「似合いますか? トオル様?」

「うん。まあ」

 ルルはこの店の人に無理言って着せて貰った。

 俺は曖昧な返事をしたが、ルルは喜んで、何度もクルクル回った。

 その姿が可愛かった。

「ああ、何で、知り合いがいるかな」

 メイド服から着替えたコウが現れた。

 コウは基本的に軽装備である。

 剣は大きいが、鎧は最小限にしか纏わない。

 それが、ポリシーのようだ。

 茶髪のストレート髪にぱっちりとした目に黒い瞳。

 可愛い人でもあり、美しい人でもある。

 コウは頭を抱え、まだ、後悔しているようだ。

「あのー。コウ?」

「どうしているの?」

 涙目のコウが聞く。

「それは、こっちのセリフ何ですが」

 要はお互い様のようだ。

「私は、あれだ。ちょっとした小遣い稼ぎだ」

 小遣い稼ぎでそんな恰好をするとは……。

「と、ともかく、家の人には内緒な!」

 物凄い、威圧感がする。

「と、言っても、俺、別にコウの父親知らないし」

 コウの父親は死神のようだ。

 しかも生前の記憶を持つ珍しいタイプの死神で、尊敬していた。

 コウはそんな偉大な父親に、胸を張って会えるように、ここで修業しているのだ。

 で、ここでメイド服で、バイトしているとは……。

「ああ、そうだったね。ああ、良かった」

 コウは一先ずほっとしていた。

「それより、この世界の異変に気付いていますか?」

 俺は質問する。

「トオルって、そんなに真面目だったけ?」

 コウが確認する。

 あんたも、メイド服を着るキャラだったか?

 お互いその位しか知らないのだ。

「いや、この状況で、ふざけてもいられないかと、この世界はルルの世界でもあるし」

「まあ、確かにそうだな」

「それで、どうですか?」

「確かに可笑しいな。ここ半年位は特に崩壊が激しい」

「そうなんですか」

「ああ、いい世界何だけど、勿体ない」

「トオル様。さっきから、ルルをほっといて、話を進めないで下さい!」

 ルルが脇から入ってきた。

「ああ、ゴメン」

「トオル様は。コウさんが好きですか?」

「いや、別に」

「私とどっちがいいですか?」

「えっ、そう言う問題?」

「そう言う問題です!」

 ルルが怒っていた。

「どうして、そんなに怒るんだ。俺は別に」

「別に何ですか?」

 ルルが言い寄る。

「いや、別に、そんなに怒る事じゃ無いだろう。他の女性と話ていても」

「そうかも知れませんけど、ルルはトオル様とお話しがしたいんです」

「今は大事な話をしているだろう!」

 つい、厳しく言ってしまった。

「トオル様はルルの事が嫌い何ですか?」

「そんな事言ってないだろう」

「言ってなくてもそんな感じします!」

「どうして、そんな事言うんだ!」

 ルルも頭に血が上っていたが、俺もいい加減頭にきた。

「ちょっと、2人とも」

 それをコウが止めようとする。

「あんたは黙っていて、ルルはトオル様とお話ししているんです」

「えーと」

 コウもルルの苛立ちに困る。

 そりゃな。

「ルル。ワガママを言わないでくれよ」

「ワガママじゃありません! ルルはトオル様が好きだから、好きだから、一緒にいたいし、お喋りがしたいんです。他の女とお話ししているの見たくないんです」

 ルルは目に涙を溜めて俺に訴える。

「気持ちは分かるけど」

 俺も流石に困った。

「分かったよ。あたしは、そっちのとおると話をしているから、ルルちゃんはトオルと話をすればいいよ」

 コウが妥協した。

 コウは大人のようだ。

「それで、いいかな?」

「まあ、しょうがないか」

 とおるは承諾した。

「いいです」

 ルルも大人しく聞いた。

「うん。じゃあ、あたしととおるは席を外すから」

 とおるとコウは席を移った。

「ルル」

 俺は困った顔をしてルルを見る。

「どうして、そんな顔をするのですか? ルルはトオル様が好きで、会えなかった時間が多くて、寂しくって。出会ったトオル様は大きくなって、ルルはずっとこのままで、トオル様がどんどん遠くなっていって。ルルを独りにしないで!」

「ルル」

 ついに泣き出した。

「ああ、ゴメン。ルル」

「トオル様はルルが嫌いですか?」

「そんな事無い」

「じゃあ、どうして、すぐ、戻って来なかったんですか!」

「そりゃ、戻れなかったから」

「そんな事、言い分けになりません。ここは夢の世界です。望めば、扉は開かれます。なのに、あの悪魔が開けなければ来る事も出来なかったじゃない。私は悲しかったです。トオル様がどんどん遠くなっていって。ルルは……ルルは……」

「ゴメン。ごめんなさい。俺は、確かに世界を閉ざしていた。確かに、この世界を忘れようとした。確かに……ルルを……」

 忘れようとしていた。

 俺にとって、3年前のここでの出来事を全て、無い物として、忘れようとしていた。

「酷いです。ルルはこんなにもトオル様を……トオル様何て、大嫌いです!」

 ルルは泣きながら、店から飛び出て行った。

「あっ、ルル」

 俺は追いかけようとしたが、足下から魔法陣が出てきた。

「もう、こんな時間。今……」

「トオル君。帰るの?」

 とおるが気が付いて、声をかける。

「みたい」

 俺は困った顔をしている。

「すんごい、修羅場みたいだけど」

「頼む。ルルを見つけておいてくれない?」

「ううん。分かったよ」

 とおるは渋々引き受けた。

 俺はそれを確認して、目を覚ました。



「ああ、目覚め最悪だ」

 休日の朝にも関わらず、憂鬱になった。

 ああ、これで、今日デートに行くんだよな。

 俺はそのまま、朝食を食べ、デートに向かった。

「はあ」

 俺はため息をつきながら、歩いていると、目の前にスーツ姿の男が現れた。

「何だよ。又か」

「ああ、又だよ」

 ルイがいた。

「今日はおめかしして、デートか?」

「はい、悪いですか?」

 俺は素通りする。

「別に」

 ルイも着いて行く。

「どうして、着いて来るんですか?」

 大事な時にはいないクセに。

「いやさ。とおるが心配していてな。気になって、こっちに来たんだ」

「何でとおると連絡出来るんですか?」

「スミレがとおるに携帯電話で連絡したんだ」

 ああ、松本先生の力ね。

「んで、トオルと話がしたくって」

「向こうだって、いいじゃないですか?」

「いや、そうもいかないだろう? 向こうにはルルがいるんだから」

「まあ、そうですけど」

「だろう?」

「それで、ルルにも話せない事って何ですか?」

「こうなったからには、はっきり言わないといけないから、はっきり言うが、ルルは成長しないし、特別な事が無い限り出来ない。これはあの世界の掟だ。つまり、トオルとルルに溝が生じたのは、自然だし必然だが、まさか、そこまで、溝が出来るとはな」

「まさかって」

「時間のせいかね」

「そんなのん気に言わないで下さい!」

「いや、事実そうだからね。向こうで蘇ったとおるだって、同じ溝を感じているんだよ。トオルは背も伸び、声も変わったからな」

「まあ、そうですけど」

「そんな2人を抱えてこれからも旅を続ける事出来るのか?」

「それは……」

 俺は考えてしまった。

「トオル。誰とお喋りしているの?」

 いつの間にか俺は、文の家の前にいて、文が俺の目の前にいた。

「えーと」

 俺は言い分けを考える。

 だって、デートするのに、男連れて来たし。

 しかも、世界の違う男だし、そもそも恰好が葬式に行く服なのか、ホストなのか分からない突っ込みしか出来ない。

 説明に困る男でもある。

「初めまして、ルイと申します」

 俺の気持ちとは裏腹に、ルイは普通に挨拶した。

「おい、ルイ!」

 ルイの普通の言動に驚いた。

「ルイ? 本当に初めましてですか?」

 文が考える。

「ああ、初めましてだよ。もしかしたら、俺では無いが、俺であるルイに会ったんじゃないのかい?」

「そうですかね。そうかも」

 文は妙に納得していた。

「なんの話だよ!」

「ドッペルゲンガーだよ」

「知っていますが、文が信じるとでも言うのか?」

「私は信じているわよ。もしかしたら、別の世界で接点があったかも知れない」

「平行世界かい?」

「はい」

「ああ、それもあり得るかもな。その魂がまた、別の世界で巡り合えたのかもな。もしかしたら、俺達も出会うして出会ったのかも」

「そうですね」

 二人は笑いあう。

 文とルイは妙に話が合ったようだ。

『文、父さんは2人のデートを認めないぞ!』

 文の家の中で、父親の声がする。

「やばっ、いるのか?」

「ええ、非番だから」

「皇トオル。逮捕するぞ!」

 手錠を持った文の父親が出て来た。

「こら、手錠何て、振り回して」

「まあ、ここは俺に任せろよ。トオル。答え考えておいてくれよ」

「分かりました。文、行こう」

 俺は文の手を握って走った。



 この後、ルイがどうなったか?

 ルイから話を聞く事が出来た。

「まあまあ、お父さん」

 ルイが文の父親に話す。

「貴様に父親と呼ばれたく無い! ってか、何処の馬の骨だ!」

 お約束だが最もな、セリフだ。

「俺か? 俺はルイだよ」

 ルイは自己紹介をする。

「ああ、ルイさんね。ではなく!」

 文の父親はノリ突っ込みまでしたし。

「何ですか?」

「娘と不届きな男がそこにいただろう。お前はその味方か?」

「お前じゃなくルイだけどな。味方つうより、ただの通行人だよ。通行人A」

 通行人Aと言い切るにはあまりに、この世界にとって、浮いた存在だと言いたい。

 つーか、会話にブレを感じるのは俺だけか?

「じゃあ、その通行人Aよ。どいてくれ。俺は警察だ。公務執行妨害で逮捕されたく無かったらな」

 公務じゃないだろう!

「公務だったんですか、それはすみません。ちなみにトオルは何罪で捕まるんですか?」

 空謝りして、何でそんな質問をする。

「娘の誘拐。監禁。その他諸々だ。手錠つけて、パトカーで、町内連れ回して、見せしめにしてやる」

 そう言うあんたは職権乱用だよ。

 部下も大変だろうな。

「そうか」

 のん気に振る舞う。

 この口ぶりだと、聞いてはみたが、それその物に興味は無いようだ。

 この男は今を楽しんでいるだけなのだ。

「お前も、捕まりたく無かったら、ドケ」

「いや、俺は通行人Aだから、道を聞きたいんだけど?」

「んなもん。交番のお巡りさんに聞けよ。俺はそんな場合じゃない。娘を連れて行かれてだな」

 それでも、道案内は公務には間違いないから。

「明らかにデートだろう?」

 ルイも流石にこの親バカに呆れる。

「何か言ったか?」

「いいや。じゃあ、近くの交番が何処かを教えてくれよ。別に民間人だって、教えてくれるぜ?」

「ちぃ、分かったよ。何処に行きたいんだ?」

 舌打ちする。

 舌打ちするなよ。大の大人が。

「ここのお店何だがな」

 地図を出して、指差す。

「ここを真っ直ぐ言ってだな」

 文の父親が説明する。

「ああ、そうか。ありがとう。ああ、そうそう。あまり、娘さんを閉じ込めると、嫌われちゃうから、気を付けた方がいいですよ」

 ルイは言われた方向に走る。

 適当に指した場所なので、ルイは場所を覚えていなかったが、とりあえず走って逃げたのだ。

「余計なお世話だ! って、文とあの野郎がいない。ルイって、言ったな覚えていやがれ!」

 文の父親は地団駄を踏んだ。

 ルイはこうやって、上手く俺と文を逃がした。

 はい。回想おしまい。



 再び、俺と文に戻る。

「ルイさんって、面白い人だね?」

 俺達は映画館のチケットを買い、映画館の中に入る。

 ちなみに映画のジャンルは学園コメディー物だ。

「そうか?」

「何処で知り合ったの?」

「そりゃ」

 話せば長くなる。

 いや、はっきり言って何処から話せばいいか分からない。

 ここは正直に話すべきか?

 俺は無口になる。

「話せない事情でもあるの?」

 いや、全然無い。

 紛らわしいだけで……。

「まあ、いいや。今度、連絡先教えてよ」

 文は本当にルイを気に入っていたが、そもそも、こっちの世界の住人じゃないから、教えられないし。

「俺もあいつの連絡先知らないや」

 ってか、携帯電話持って無いだろう。

「何で? 友人じゃないの?」

 友人か……。

 友人って言うより……。

 恩人?

 いや、恩人でも無いか。

 じゃあ、なんだろう。

 俺はやはり考える。

 この時、ルイは何て答えるだろうか?

「いや、友人じゃないな。知人でも無いし」

「中途半端な関係ね」

「まあ、そうだね」

「ねえ、ルイさんの事嫌いなの?」

「いや、そんな事は無いんだけどね」

「よっ、お2人さん」

 ルイは俺達の前に現れた。

 って、デート中ですよ!

 しかも、この人、お金持って無いよね?

 この世界に干渉しちゃいけないんだよね?

 どうやって、ここにいる!

「面白そうな映画だな」

 映画に感心があるようだ。

 そう言えば、リフィル所長と映画に行くんだよな。

「いやいやいやいや、その前に2つ3つ突っ込ませてくれないか?」

「いいけど。文ちゃんがいるよ」

 文は目を輝かせて、俺達を見ている。

「まあ、後でいいです」

「ルイさん」

「ルイでいいよ」

「えっ、いいんですか? ルイ。連絡先を教えて下さい」

「ああ、悪いな。俺、携帯電話は持たない主義しているんだ」

 向こうの世界では、しっかり持っていますよね? 黒いの。

「えーっ、今どき珍しい人ですね」

「まあ、そうかも。だから、連絡したかったら、トオルに頼むといいよ。出来うる限り、返事はするから」

「そうですか?」

「ああ、悪いな」

 何とか、回避した。

「所で、トオルとはどんな関係なんですか?」

「えっ、俺とトオル。うーん」

 少し考える。

「そうだな。友だな。うん。友人。親友と書いて友。ライバルと書いて友。戦友と書いて友。悪友と書いて友。友って、色んな意味があるだろう。トオルとはそんな関係だよ」

「へー。トオルは答えられ無かったんです」

「まあ、俺が特異な立ち位置にいるから、トオルも返答に困ったんだよ。それは、トオルのせいじゃないから、トオルをあんま責めないでくれよ。なっ」

「はい。分かりました」

 文は簡単に受け入れた。

 それでも、ルイは謎の怪しい男なのに、ある意味凄い女だ。

「それより、そろそろ、始まるよ」

 俺は時間を確認する。

「うん。そうだね。行こうか」

「ああ」

「文は先に行って、場所取ってよ。俺は、ルイと飲み物とお菓子買ってから、行くから」

「分かったわ」

 文は先に映画館に入った。

「それで、ルイはどうやって、この中に入ったんだ?」

 初歩的な質問から入る。

「上」

 指を上に差す。

「上?」

 俺は自販機に硬貨を入れて、白ブドウジュースと、コーラ、1本ずつと、お茶を2本選び、出て来た物をルイに渡す。

「窓が開いていたから、そこから乗り込んで、気配を極限まで消して、内部に突入し、ここに到着。ほら、俺って存在しているようで、していない存在だから、監視カメラや鏡には映らないだろう。楽勝だったよ」

 ルイはピースする。

 ここで、今更ながら説明せねばいけないが、ルイの運動神経の事だ。

 ルイはパラダイス・ワールドの死神なので、身体能力は向上している。

 しかし、それはパラダイス・ワールドの中での話であって、ここではそれが帳消しになる。

 特技が使えないそれと同じで死神としての力は無くなるのだ。

 では、なぜ、そんな大道芸が出来るか?

 それはどうやら、ルイの生前に関係のある事で、あまり、詳しく過去は聞いて無いが、ルイの運動神経は死神になる前から、良かったのは確かだったようだ。

 それで、簡単に俺ん家の2階に上がる事も出来るし、映画館にも乗り込んだ。

 気配を消す込みで、ルイの身体能力は常識を超えていた。

「ねえ、それ、完全に不法侵入罪だよね!」

 お菓子が売っている自販機に硬貨を入れて、チョコレート菓子を選ぶ。

「ああ、そうかも」

 楽天的に答える。

「向こうの世界でも、不法侵入罪はあるだろう!」

「あるよ」

「じゃあ、ここでもダメだろう」

「だからって、正面切って中に入るのは、色々不味いだろう?」

 何度も言うが、ルイはこの世界に干渉する事を許されていない。

 しかし、段々感じてきたが、どうやら俺を通して行うなら、許されるようだ。

 ルイの正体を知っている、俺がやった事にしたと言う体にすればいいのだ。

 要するに言い分け出来る環境が必要なのだろう。

 死神の過度な干渉で、世界が壊れる何て、嘘なんじゃないかと、俺は思い始めた。

「そもそも、デートに付き添うのが間違っているよな? 話はしたんだから、向こうに帰って、待てよ。それすら出来ないのかよ」

「うん」

 まじりっけ無い、純粋な言い方で言う。

「ガキか!」

 精神年齢が3年経っても変わらないな。

 俺より明らかに低い。

「だって、久しぶりだろう。こうやって、話をしてさ」

「じゃあ、前みたいに一緒に旅をすればいいだろう」

 いない奴がとやかく言うなよ。

「ああ、出来ればいいんだがな。今、こっちもバタバタしててな」

「じゃあ、何でここに来たんだよ。忙しいなら、向こうにいろよ」

「ああ、時間も都合よく出来ているだろう。ここと、パラダイス・ワールドって時間の流れが違うだろう。ここで二時間映画を見ても、パラダイス・ワールドでは、5分しか経っていないとか、そう言う都合がつく。だから、ここで、2時間過ごした方が有意義だろう」

「ご都合主義の醍醐味だな。だからって、デートの日に来るか?」

「それは、たまたまだ。あくまでたまたまだよ」

 ルイは悪気ない素振りで言ったが、絶対、わざとだな。

「まあ、いいですよ。文が気に入ったから」

「ああ、良かった。トオルの彼女に気に入られて」

「文はこれでも面食い何だよ」

 俺は目の前にいる、俺よりカッコいい男に悪態をついた。

 俺達はそんな言い争いをしながら、文の所に向かった。

「はい。文。白ブドウ」

「ありがとう」

 文が笑顔で言う。

 文は笑った所が好きだ。

 言った事は無かったが、自然と俺も綻ぶ。

「なる程」

 ルイは何かを納得していた。

「どうしたんですか?」

「いや、文ちゃんは笑顔が可愛いな」

 俺が思っている事を簡単に言いやがった!

「そうですか?」

「ああ、それを大事にするといいよ」

「はい。ありがとうございます」

 文は喜んでいた。

「文、間違ってもコイツだけは止めておけよ」

「何? トオル。焼きもち?」

「違うよ。コイツには、それはそれは超絶な絶世の美女が彼女なんだ」

「おい、トオル。違うから」

「そうなの?」

「ああ、俺も超絶絶世美女何て、マンガ以外にあり得ないと思ったが、凄い美女がコイツの身近にいるんだ。その美女を泣かすような最低男何だぞ」

「こら、待て、いつ、俺が、リフィルを泣かした!」

「泣くだろう。普通。幸せにしてやれよ」

「それは、出来ない」

「何で?」

 文が聞く。

「そりゃ、まあ、あれだ。なんだっていいだろう。人には話せない海よりも深い事情は誰にだってあるだろう。これもそうなんだよ」

 その海よりも深い事情が知りたいんだよ。

 とか、思っている内に映画が始まった。

 途中、ルイはスヤスヤと眠ってしまっていた。

 こいつ。

 初めから、邪魔する為に来ただけだな。

 こうして2時間の映画は無事に終わった。

「楽しかった」

 文が笑う。

「うん」

 俺も喜ぶ。

「ふわぁぁぁ」

 1人だけ欠伸をしていた。

 結局、2時間ほとんど寝ていた。

 まあ、住居不法侵入して、映画を見ているような奴だ。

 最初から見たいとは思っていなかっただろう。

 リフィル所長との映画デートもこんなだろうな。

 本当に報われない人だ。

「さて、俺は帰るかな。あとは若い者で頑張ってくれよ」

「えっ、帰るんですか?」

 がっかりしていた。

「ああ、これ以上いてもトオルには悪いからな。何、運が良かったら、また、会えるさ。その時まで、元気でな」

 ルイは風が吹いた瞬間、消え去った。

「消えた」

 文は目をぱちぱちしている。

「全く、あいつは」

「カッコいい」

 文の目が輝いている。

「絶対、辞めた方がいいからね」

 俺はあいつを少し恨んだ。



 その夜。

 俺は再びパラダイス・ワールドに向かった。

 デートを無事に終わらせた後である。

「よう。さっき振り」

 着いた場所は事務所だった。

 ルイ以外誰もいない。

「お前、何様だ!」

 俺が目の前にいたルイを指差す。

「ああ、俺様だよ」

「あんた、B型だったな」

「B型を悪く言うなよ。マイペースなだけだ」

「そのマイペースにつき合わされる身にもなれよ」

「ああ、なる程、考えた事も無かった」

 手をポンと叩く。

 考えるつもりも無かったクセに。

「で、俺は何でここにいるんだ?」

「いやさ。ルルと喧嘩した奴を向こうに行かせるのはどうかなって、思って」

「戻したのか?」

「そうだよ」

 本当に何でもありだな。コイツは。

「それに、ルルならもう消滅しないだろう。もう、存在が確立しているんだから」

「だからってな」

「さっきも言ったが、ルルは成長していないんだ。勿論、とおるもだ。成長しているのは、トオルだけ。つまり人間だけだ」

「死神は成長しないのか?」

「しない訳じゃないが、人間のしかも幼少期は青年期みたいに急激に成長したり、変化したりしない。何故なら、多くは記憶を失っている。過去がない。だから、この世界に降り立ち、これが全てだと、プログラムされる。だから、成長しずらいんだ。それに半永久に生きられるんだ。この姿で、この世界で生きる為には、己が時間を止める必要がある。それは成長を止める事になる。だから、死神は成長しずらいんだ」

「ルイもか?」

「そうだな。そうかもな。俺も成長していないはずだよ。だから、所長とは一緒になれない訳だし」

「一応、気持ち分かっているんだな」

「そりゃ、長く働いているからな。成長じゃなく、学習に近いだろうな。まあ、所長の場合、初めに気持ち言っているし」

「で、じゃあ、何で付き合わないんだ?」

「そりゃ」

 何か躊躇っている感じがした。

「デートの邪魔したんだ。答えろ!」

「ああ、分かった。分かった。実は俺は妻帯者何だよ」

「はっ?」

「だから、妻と子供がいるんだ。生前にいたんだ。残して死んだんだよ。だから、易々と付き合えないんだよ。勿論、その事情を所長は知っている」

「知っている上で、恋人になりたいって言っているのか?」

「そうだよ。俺の心は生前のまま止まっているんだ。だから、付き合えないんだ」

「そうだったんだ」

 意外過ぎて、言葉選びに困る。

 この人は一途に、その人の事を思い続けていたんだな。

 そして、所長は報われない恋を抱いているんだな。

 それはそれで、悲恋だな。

 そう、見えないけど。

「ってか、その家族は何処にいるんだ?」

「トオルとは別の世界にいるよ。今は何しているんやらな。元気にやっていればいいな」

「会いに行かないのか?」

「行くには許可が必要だからな」

「俺の世界には簡単に来たな」

 しかも、短期間に2回も。

「ああ、そりゃ、簡単だよ。俺はその世界に存在しない。知り合いがいないんだ。俺の世界には知り合いが多すぎる。世界に影響を与えて、滅ぶ可能性がある。どんなに腐った世界でもそこにいる人間まで、巻き込む事は出来ないからな」

「じゃあ、俺や文は巻き込まれてもいいのか?」

「そう言う事、言っている訳じゃないよ。ただな」

「何だよ」

「トオルの世界の事も知りたかったし、トオルの心も知りたかったしな」

「俺の?」

「そりゃ、パートナーだからな」

「パートナーか」

「だから、トオルに何があっても信用する事が出来るし。バックアップに徹したい訳だよ」

「だったらよ。何で、向こうの世界に来ないんだよ」

 こっちは色々大変何だよ。

「だから、忙しいからだよ」

「どう、忙しいんだよ。そうやって、誤魔化して。あんたも汚い大人だな」

「おい」

「口では何とでも言えるけどよ。どうせ、大した理由じゃないんだろう。いいよ。あんたが、向こうに行かせたく無いなら、行かせなくって。無理矢理向こうに行くから!」

 俺は今日1日で溜まったストレスを全て、ぶつけてしまった。

 ぶつけた後で後悔したのは言うまでも無い。

 ルイは怒って、殴るかと思ったが、そんな素振りを見せなかった。

 それ所か、俺の正面に座って、黙って聞いていた。

「そうか」

「何だよ。反論しないのかよ」

「別に反論しないよ。まあ、そうだよな」

 ルイは頭を掻いていた。

「俺も、トオルの立場だったら、おんなじ事言っていると思うよ。多分」

「だったら」

「そうだな。納得させる為には、ちゃんと話すべきなんだろうな」

「じゃあ、教えろよ」

「ただ、どっから話せばいいか分からなくってな」

「じゃあ、俺がいなかった空白の3年間からでいいよ」

「それもそうだな。この世界では1年ちょっとしか経ってないが、確かに変化はあった。まずは、俺だな」

「あんたが?」

 見た感じ、接した感じ特に変わりは無かったが……。

「俺はトオルの知っている俺であって、違う俺だよ」

「何言っているか意味が分からないんだけど?」

「俺は確かにルイだよ。トオルも知っているルイだと思う」

「思う?」

「俺は1年程前、トオルと別れてすぐに消滅したんだ。1度」

「だったら、普通ここにいないだろう!」

 そう、死神やパラダイス・ヒューマンの消滅は人間の死とイコールだ。

「ああ、いないよ。いないけど、今、ここに俺がいるだろう?」

「ああ」

「だから、俺はトオルの知っている俺であって、違う俺になる。俺は元々、死神として生まれる為の要素が足りなかったんだ」

「要素?」

「俺はトオルと違って、人間の時にこっちの世界に足を運んでいなかったんだ。死神はここの住人になった人間が死んで、魂がパラダイス・ワールドに漂流してなるんだ」

「それは、昔聞いた」

「んでも俺はここに足を運ばずに死神になった。それは、美春が、俺の妻となった女性が、ここの神様に頼んだんだ。俺を病気から解放して、自由にして欲しい。と。それで、最初の俺は死神になった。でも、時間が限られていた。美春の……」

「人間の寿命か?」

「ああ、俺の存在は死神とパラダイス・ヒューマンの中間だった。パラダイス・ヒューマンは、人間の存在で確立される。俺もそうだ。美春が死んだら、俺は存在出来なくなる。だから、俺は消滅した」

「じゃあ、今のあんたは、どうしてここにいるんだ? 今のあんたは何なんだよ?」

「今の俺は正真正銘の死神だよ。神様が俺の生きている世界に足を運び俺を強制的に覚醒者にしたんだ。まあ、その時の俺はこっちの世界に足を運んで無いんだけどな。今の俺は昔の俺の記憶を半分位しかない。バックアップが間に合わなかったからな」

「バックアップって」

 そんなゲームみたいな事を。

「俺の能力は留める力だぜ。俺は消滅する前に、俺自身の記憶を、物体に留めたんだ。半分だけな。だから、俺の記憶は大分欠落している。トオルの事は覚えていたが、トオルとの旅は大分欠落している」

「ルルの事は?」

「完全に忘れていたよ。ルルと再会して、トオルの名前が出て、ようやく繋がった位だ」

「じゃあ、今でも分からないのか?」

「ああ、ルルとどんな会話したのか覚えていないさ」

「でも、同棲してただろう?」

「確かに俺の部屋でルルは、寝泊まりしていたが、付き合ってもいない、男女が1つ屋根の下って言うのは色々不味いだろう?」

「まあ、確かに」

 その辺の倫理観はあるんだな。

 少し感心した。

「俺の節操にも問題が出る」

「あんたの節操がちゃんとしているかは、どうだっていいよ」

 ってか、気にしている事の方が問題だ。

「だから、世話は基本的に所長にやらせて、俺は荷物を取りに帰る程度で、こっちで寝食していたよ」

「随分、ルルに優しいじゃないか?」

 死神とパラダイス・ヒューマンの溝はかなりの物だったが、これは意外だった。

「まあ、記憶が無いにしても、トオルが大事にしている事は分かったからな。感覚的だけど。だから、保護して、トオルをこっちに戻すように世界を繋げる事にしたんだ」

「そうなんだ。って、あお君は?」

 そう言えば、2人は面識があるような感じだったが……。

「ああ、青山な勿論知らないよ。でも、スミレは知っているだろう? 一応相談してな。せっかくならって、言うんで、創造したんだ」

「そうだったんだ」

「まあ、お互い知る必要があるから、遊んだりはしたよ。ゲームとかしたし」

「ルルは知らなかったみたいだけど、いつやったんだ?」

「それは企業秘密だ」

「秘密にしなくていいじゃねーか!」

「教えたらつまらないだろう。これもご都合主義な世界の醍醐味だ」

「死神がご都合主義って言うなよ!」

 全く。

 この男はこの世界に適し過ぎている男だ。

 まあ、それが、コイツなんだろうけど。

「だから、旅に着いて行かないのか?」

「まあな。すぐにボロが出そうだからな」

「そんな逃げ腰な」

「逃げ腰で何が悪いんだ? ルルを悲しむ誰かよりマシだろう?」

「俺は別に好きで悲しませや訳じゃねーよ」

「そりゃそうだろう。好きでやっていたら、ぶん殴っていたよ」

 殴られなくって良かった。

 こいつのパンチ絶対痛そうだし。

 しかも逃げ道無いだろうし。

「一緒に来ない理由は分かった。あんたはただ、逃げているだけだって、事が」

「まあ、そう、思うならそれでもいいよ。さて、話は戻すが、この1年に起こった俺の事はそれで、いいだろう。さて、次はこの事務所だ」

「この事務所にも何かあるのか?」

「別に大した事は無いよ。問題を抱えた犬を飼い始めた位で」

「何だよ。その犬!」

「犬は犬だよ。ただの犬じゃねーけど」

「何処が?」

「白いな。真っ白だ」

「白いのは普通だ」

「腹は黒いし、美女が好きだな。所長とか」

「普通じゃ無いがたまにいる」

 テレビで見た事がある。

「喋るのは普通だな」

「寧ろそっちが普通じゃねーよ!」

 コイツって、こんなに疲れる奴だったけか?

 どうやら。知らなかっただけのようだ。

「まあ、そんな犬がペットになったよ」

「他は?」

「その位かな」

「あんま変わってねーじゃないか!」

 聞いて損した気分だ。

「そうだったか? で、その喋る犬がさ」

「その犬の話は長いのか? つーか、愚痴るなよ」

「ダメか。ちぃ」

「舌打ちするな!」

 どうやら、最終的には愚痴りたかっただけのようだ。

 しかも、俺に愚痴を言いたかったようだ。

「全く、油断も隙も無いな」

「それが、俺だ」

 ドヤ顔をする。

「そうだったな」

 俺は呆れるしかなかった。

「まあ、そんな俺に事情があったとしても、俺はトオルが危なくなれば、助ける約束はしただろう?」

「まあ」

「それは、やっぱり、トオルが心配だからだな」

「なあ、あんたは、あの世界の事どの位分かっているんだ?」

「分からない。訳じゃないな」

「どっちだよ」

 歯切れが悪い。

「分かるのは、世界がどうやって出来ているのか。逆に壊れる理由も分かる。だけど、どうして、壊れてしまうかの原因が分からない。そう言う意味だよ」

「じゃあ、どうして壊れるんだよ」

「そもそも世界その物が人の夢によって出来ている。だから、あのエリアも基は人間の夢のって事になる。これは何度も話たよな?」

「まあ、そうだったな」

「じゃあ、壊れるのはその逆。人がその世界に夢を乗せなくなれば、世界は崩壊する。あの世界のように」

「でも、世界には人間もいるんだ。壊れる何て」

「だから、理由が分からないって、言っただろう。そんなアンバランスな世界何て、そうそう無いだろう。夢がなくなれば、すぐにでも、世界は崩壊する。だから、ヤバいって、言ったんだよ」

「そうだったんだ」

「んで、本題に戻るが、これから本当にどうするつもりだ? ルルとちゃんと向き合えるか?」

「向き合うつもりだ」

「つもりなら、連れて行くつもりは無い」

「無理でも行くぞ」

「安心しろ。それなら、何度でも連れ戻す」

「それは、死神の規定に反しているだろう。人間の望まない事をしているんだから」

「構わない。その位の罪で、人間が守れるんだ。安いもんだ。命の価値は平等って言うが死神と人間の価値は全く違う。死神は1度死んでいるんだ。死している者にそもそも価値なんて殆ど存在しない。俺が死ぬより、トオルが死ぬ方が、問題が起こるんだよ」

「問題って」

「とおるの時だって、そうだっただろう? こっちの世界は肉体が無いから、消えるだけだが、現実世界はそうもいかない。肉体があるんだから不届きで、死なせる訳にはいかないだろう。こっちは世界を支えて貰っている立場なんだから」

「そこまでして、罪に問われたらどうなるんだ?」

「さあ、その罪の重さにもよるが、最悪は死罪だよ。消滅するな」

「その覚悟あんたにはあるのかよ」

「あるよ。あるから、ここにトオルがいるんだ。分からねーか? 俺は消滅する事に躊躇いは無いよ」

「本当にそうなのか?」

「ああ、だから、トオルの世界にも無断で行けるし、それで、毎日楽しんでいられるんだ」

「そうなんだ」

 きっと、1度目の消滅も、後悔していなかったのかも知れない。

 恐らく、ルイの周りがルイを求めたんだ。

 俺はそう思った。

 しかし、俺の世界に無断で、来るとは……。

 無断?

 無断で!

「おい、1つ確認していいか?」

「いいけど、何だ?」

「何で、今日だったんだ? たまたま、デートの日に当たったんだよな?」

「ああ、そんな事か。今だから話すが、カレンダーに花丸が書いてあったから、何の日かと、思ってな。前からトオルの世界見て見たかったし、だったら、この日にしようかなあ、って、思っただけだよ。時差の計算が大変だったが、ピッタリで良かったよ。まさか、その日がデートだった何てな。花丸の下に『文』って、書いてあったから、てっきり、地図記号かと思って、学校かと思ったんだが」

 ルイは薄ら笑いを浮かべる。

 こいつ、わざとだ。絶対。

 何で、カレンダーに花丸と一緒に、地図記号を書くんだよ。

 普通書かねーだろうが。

「ついでだから、話すけど、トオルのエロ本もこっそり読んだよ。まさか、あの手の女性が好きだったとはな。いやー、相棒が男で、良かった。そして、大人になったんだな。なあ、今度何冊か貸してやるよ」

「読むなよ!」

 俺の個人情報がどんどん洩れていった。

「でも、貸してやるぞ。とびっきりの奴を隠しているんだ。勿論女性達には内緒だよ」

「えっ、俺好みの?」

「勿論、トオルの好みは把握したぞ。任せろ!」

 この上なく、自信満々に言っている。

「ああ、じゃあ、貸して下さい」

 俺はこの人に、当分、勝てない事が分かった。



 俺はルイに連れられ、再び、ルルの世界に来た。

「ルル……」

「まあ、上手く仲直りしろよ」

「分かってるよ」

「じゃ、俺は戻るよ」

「ああ」

 ルイは一瞬にして消えた。


「さて、行くか」

 俺はルルに謝りに行った。

 ルルは俺を見ても話かけてはくれなかった。

「なあ、ルル。俺が悪かったよ」

「別に、トオル様何か、もういいです」

「そこを何とか」

 何か会話が夫婦喧嘩で夫が仲直りを求めるような感じになっていた。

「ルル。これからはコウ様と旅に出ます」

 何だか俺のいない間に、コウと仲良くなったようだ。

 後でとおるに話を聞こう。

「まあまあ、トオルだって謝っているんだ。その位で、許してやったらどうだい?」

 ようやくコウが助け舟を出してくれた。

「まあ、コウ様が言うなら、コウ様が困るから、トオル様と仲直りします」

「あっ、どうもありがとうございます」

「じゃ、次何処に行くか話そうか」

「あっ、はい」

 コウのお蔭で、何とか先に進んだ。



 とは、言っても、ルルはずっとコウの所にいた。

 ので、コウも一緒に着いて来る事となった。

 まあ、強い訳だし、これは良かった事だ。

「所で、コウ様はお父様に会わないのですか?」

 ルルとコウはが手を繋ぎ前を歩き、後ろに俺ととおるがいた。

 そう言えば、コウの父親は死神で、死神の父親に自慢話をする為に、旅をしていた。

「まだ、会って無いよ」

「会わないんですか?」

「そうだな。会いたいな。でも、ルルちゃん死神は嫌いだろう?」

「嫌いと言うより、変な人が多いんです。それが嫌なんです」

「変な人か。まあ、確かに一筋縄じゃいかない人ばっかだね。私の友人の死神も父もそうだったし、まあ、ここの問題を解決するまでは会うつもりは無いな。こことは別の世界にいるからね」

「そうですか。ありがとうございます」

 ルルは丁寧にお礼を言った。

「どういたしまして」

 コウも笑った。

 そんな平和的な状況だったが、急に地面が揺れた。

「なっ、何」

 その揺れは大きく、地割れがして、全員がバランスを崩す。

「ルルちゃん。捕まって」

「はい」

 ルルはコウが保護した。

 俺はとおるを保護し、安全な場所に移動した。

「何が起こったの?」

 ルルが興奮する。

「分からない。でも」

 コウは背中の大剣を取り出し構える。

「敵が目の前にいるのは確かね。ルル、安全な場所に逃げて」

「はい」

 ルルは安全な場所に隠れる。

「とおるも」

「はい」

 俺も腰の剣を抜き構えた。

 地面が割れた所から、巨人が現れた。

「何だよあれ」

 俺は驚く。

「さあ、少なくとも、あたし達に敵意を感じているみたいだね。倒す必要があるな」

「はい!」

 俺はコウに従う。

 コウさんが巨人を正面から切りつける。

 その間に僕は回り込んで、後ろから足を狙う。

 コウさんは大剣なのに素早く動く。

 そして、確実にダメージを与える。

 重い武器だと思うが、ちゃんと使いこなして、やっぱ、凄い人だ。

 だが、巨人は凄い速さで再生する。

 なんだ。これ。

 凄い、嫌な感じがする。

「この巨人め」

 コウさんは一呼吸置く。

「コウさん?」

「分かっている。不気味だ。早く片付け、ここから逃げよう。トオル、少し下がってて欲しい」

「大丈夫ですか?」

「多分、だけどね」

 コウさんは、大剣に力を込める。

 すると、刃が消え去り、そこから、日本刀が出て来た。

 日本刀?

「行きます」

 コウさんは巨人の頭上まで一気にジャンプする。

「いっけー」

 そして、頭から真っ2つに斬った。

 巨人は倒れ消滅する。

 凄い。

 でも、この姿どっかで……。

 コウさんは着地した。

「トオル君。早く逃げよう」

「はいって」

 俺とコウさんの足下が大きく揺れ、巨人が、コウさんの下からもう一体出て来た。

 そして、コウさんを掴んだ。

「コウさん!」

 俺はコウさんを掴んだ右腕を切りつけたが、俺の能力は強くなく、上手く斬れる事が出来なかった。

「ああ」

 コウさんが痛みで叫ぶ。

 巨人が握り潰しているのだ。

 その反動でコウさんは、持っていた日本刀を下に落としていまった。

「どうしよう」

 俺にはどうする事も出来ない。

 こういう時にアイツがいれば。

 ルイがいれば。

「何やっているんだよ。バカルイ!」

 俺はつい、ルイの名前を叫んだ。

「はあ、さっき、別れたのに、もう、呼び出しかよ。あと、バカはねーだろう。呼び出しといて」

 俺の後ろから、ルイが現れ、俺の髪を掻き毟り、巨人と向かい合う。

「さて、お仕置きと行こうか、お前の罪は重いぜ」

 ルイは日本刀を出す。

 そして、襲い掛かる左腕を簡単に切り裂く。

「トオル。ルルととおるの所にいろ。こいつ退治したら、すぐ逃げるから」

 ルイは黒い翼を広げて飛ぶ。

「でも、コウさんは?」

「分かっているよ。ちゃんと助けるよ」

 ルイが言うと、巨人がもう2体出て来た。

 いったい何体いるんだよ。

 俺はコウさんの日本刀を回収し、ルルととおるの所に向かう。

 その間に、ルイは左腕を切られた巨人の残った右腕も素早く斬っていた。

 コウさんは真っ逆さまに落ちたのをルイが上手くキャッチする。

 コウさんの意識は無かったが、どうやら、無事みたいだ。

 ルイは俺達の所に向かい、すぐにテレポートをした。



「ふう。助かりました」

 とおるが安心する。

 どっかの草原の真ん中にいた。

「まさか、あんたに助けられる何て、それより、コウさんは大丈夫ですか?」

 ルルが心配する。

 しかし、ルイには刺々しい。

「大丈夫だよ」

 ルイはお姫様抱っこをしたままだった。

 コウさんは目を覚ます。

「お父さん?」

「久しぶりだな。コウ」

 優しく微笑む。

「お父さん。怖かった」

 コウさんがルイに抱き締められたまま泣き出した。

 ルイは優しく頭を撫でていた。

 へー。

 知り合いだったんだ……。

「って、親子!」

 その場にいた俺とルルは叫んだ。

 とおるは笑っていた。

「あれ、気付いて無かったの?」

 さらっと、とおるが言った。

 気付いていたとおるに驚きだよ。

「ってか、子供がこっちにいたの?」

 俺が聞く。

「ああ、まあ、さっき話しただろう、生きていた時の子だよ」

 ルイはコウさんを降ろす。

「コウ。また大きくなったか? 美春に似て美しくなったな」

 ルイが急に父親の顔になる。

 ああ、この人もこんな顔するんだ。

「べっ、別に。あたしは……」

 コウさんが照れている。

「それよりルイさん」

「どうしたとおる?」

「この写真、買って欲しいんだけど」

「なっ、なんと」

 とおるに連れられ、ルイが俺達から遠ざかる。

 何か嫌な予感が……。

 コウさんは着いて行った。

 俺も気になって追う。

 ルルも追う。

「こ、これは、コウのメイド姿。いくら欲しい?」

「とりあえず、10万で」

「よし、買った」

「買うな!」

 コウさんが顔を真っ赤にして、怒った。



「何で、俺まで」

「僕は悪くないのに」

 ルイととおるはコウさんに殴られた。

「全く、油断も隙もない」

「いいじゃねーか、コウのメイド服姿の写真位」

「位じゃない!」

「でも、後で貰うからいいや」

「お金、忘れないで下さいね」

「おうよ。振り込んでおくよ。だから、これからも頼むよ」

「はい」

 何か、妙な連携が2人に出来ている。

 つーか、仲がいい。

「撮るな!」

 それをつかさず、コウさんが突っ込んだ。

「いいじゃないか、コウの可愛い写真何か、ここでしか見られないんだから」

「うっ」

 可愛いと言われ、更に顔が赤くなる。

 コウさんもこんな顔するんだ。

 いい顔だな。

「次は猫耳をご所望する」

「親父!」

 持っていた大剣でルイを殴った。



「コウさん。怒っていましたけど、大丈夫ですか?」

 俺はルイに確認している。

 コウさんは向こうの世界に帰った後である。

「大丈夫だと思うけど、ううっ、父親を寄りによって、剣でぶつなよ。よりにもよってさ。瘤になっているじゃないか」

 ルイは鏡で瘤を確認している。

「仲のいい2人ですね」

 トオルが聞く。

「そうかな。何もしてやれなかったからな。アイツには寂しい思いをさせてばっかだよ」

 ルイは苦笑いをした。

「あいつが生まれる前に俺は死んだから、初めは俺を恨んでいたよ。そりゃそうだ。アイツの母親でもある俺が唯一愛した美春に負担かけてたしな。元々、アイツは俺を殴りに会いに来たんだよ。許してくれた今が、とても嬉しいんだ。だから、つい、あんな事言ったが、本当はもっと父親らしい事したいんだよな。最もやり方は分からなんだけどな」

「そのままででいいと思いますよ。上手くは言えませんが、コウさん凄く、ルイの事、尊敬してましたから」

「そうか、嬉しいな」

 ルイは満更でも無い様子。

「それより、いつまでいるんですか?」

 ルルが棘のある言い方をする。

「そうだな。そろそろ帰るかな」

「ルイ」

「また、何かあったら呼んでくれよ。コウの写真が撮れたとかさ、ああ、今日の写真は枕元に置かないとな」

「お前、やっぱ、帰れ!」

 これ以上いれば、また問題が起きると思い、俺はルイを帰した。



「全く、どうしようもない。親バカだったな」

 僕はとおるの所に戻る。

 そこにルルがいなかった。

「あれ、ルルは?」

「さあ、いません。声を掛けても出てこなくって」

 とおるが困っていた。

「なんだって! どうするんだよ」

「探すしかないでしょう」

とおるが当たり前に言い返す。

「まあ、そうだな」

 俺たちは探しに行くのだった。




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