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17.近所迷惑なんだよ

たくさん評価頂きありがとうございます。

深く感謝いたします。

17.近所迷惑なんだよ


「ああん、なんだぁ、貴様は?」


黒い巨体の怪物・・・もう鬼みたいだからダークオークでいいか。ダークオークは宿に二階から自分を見下ろす俺の存在に気付いたらしく見上げて聞いて来る。


「あのなあ、お前。さっきからうるさいんだよ。しかも俺の聖域を破壊しやがって。どう落とし前を付けてくれる気がなんだ?」


俺は見下ろしながら言い放つ。


周りにいる騎士たちは俺の突然の登場にどう反応して良いか分からず戸惑っているようだ。


だが唯一、俺と面識のあるボーリンさんだけが口を開く。


「に、逃げろ、ミキヒコ殿! これは魔術師ごときが立ち向かえる敵ではない! ファイヤーボールすら無効化する相手だ!!」


いや、あんな程度のファイヤーボールで「無効化」て。


そりゃ、あんなんじゃあ、相手に通用しないのも無理はない。


見たところ、本当にただの火の弾を投げつけているだけのようだったからな。


多分だが、俺のスキルである『極小攻撃』の何十分の一程度の攻撃力しかないだろう。


・・・それに俺はここで逃げる訳にはいかないのだ。


そう、俺の唯一の人生の目標である怠惰を極めるには、引きこもる部屋が必須なのである。


しかるに! それを破壊した目の前のモンスターは万死に値する!!


「くっくっくっ、ぐわっはっはっは!! 人間風情がこの俺様にそんな口をきくとはな!! お前もこいつらみたいにひき肉になりたいのか?」


その言葉を聞いて俺は「はぁ」と大きなため息をく。


「おいド低能。俺の言ったことが聞こえなかったみたいだな? だからもう一度言ってやる。部屋を壊した落とし前、どうつけてくれるんだ? 今すぐ土下座するなら、いちおう許してやるぞ?」


そんな俺の親切な忠告も無視して、ダークオークは更に笑う。


「わーっはっはっは!! こいつは傑作だ!! 人間が俺を許すだなどと、お前頭がおかしいんじゃ・・・」


「はい、時間切れ~」


「は? へぶぅうぅうううううううううっっっ!?」


極小攻撃を意識的に発動する。


と同時に俺の体がスキルに引っ張られる形で自動的に動いた。


俺は宿の2階から跳躍すると、一瞬にしてダークオークの頭のある位置まで移動していたのだ。


そして、俺のこぶしが鋭く奴の横っ面を思い切り殴りつけた!


敵は俺に痛打され、その巨体を嘘のようにバウンドさせながら10メートルほど転がる。そして民家の壁に突っ込んでやっと静止したのである。


俺は空中でクルリと一回転してから着地すると、瓦礫にうずもれたモンスターに向かって口を開く。


「なあ、さすがにコレくらいで死んじゃあいないだろう? だから、親切な俺は、お前の質問に答えてやろう。ようく聞いとけ、雑魚モンスター。俺の名はミキヒコだ。最近俗界に下りて来た”無心流魔術士”だ。よく覚えておけ」


「ぐ、ぐふ・・・ば、ばか・・・な」


「なんだ、あれくらいでもう立てないのか? かなり手加減してやったってのに」


「ふ、ふん、舐めるでないわ! 無論、ダメージなどない!!」


お、立ち上がった。


ふむ、だが確かに奴の言う通り、ダメージ自体はあまり通ってないみたいだ。ちょっと驚いただけ、と言ったところか。


さすがに固いな。


だが、モンスターは何を思ったのか突然笑い始めた。


「くくく、ミキヒコとやら、いい気になっていられるのも今の内だぞ? なぜなら、今の攻撃で俺はお前の実力を完全に把握したんだからなあ」


な、何だと?! まさかコイツ、相手の能力を把握する能力でも持っていたのか?


まずいな、俺の能力が怠惰ポイントを使用してスキルを使っていると知れれば、長期戦に持ち込まれれば敗北は必至だ!


「なぜならば、今の不意打ちがお前の全力攻撃だったのだろうが、俺にはほぼノーダメージだ」


・・・へ?


「つまり、今の攻撃をしのぎ切った俺の勝利!! お前が俺を打倒するすべはもうないというわけだ!!!!」


はぁ~?


「対して、俺はまだ全力攻撃を繰り出してはいない!! お前は人間にしてはなかなかやるようだが、所詮は同じ人間よ! 俺の攻撃を防ぎ切ることは出来まいて!!」


え、あ・・・はあ。


「がっはっはっは、怖くて何も言えないらしいな!!」


俺は馬鹿笑いする雑魚モンスターに対し「はぁ」と二度目の大きなため息を吐く。


「呆れてるだけだ、この馬鹿雑魚モンスターが。所詮は頭に知恵が巡り兼ねた低能なモンスターということがよく分かった。人間の家畜にもなれないゴミだな。話の内容が的外れ過ぎて真面目に聞いた俺が馬鹿みたいじゃないか。はぁ、もういいからかかってこい。お前が俺に対抗できるとしたら、かろうじてその腕力くらいなんだからな」


俺は人差し指をクイクイと曲げて、掛かって来るよう挑発する。


そんな俺の心底バカにした態度に、敵は一瞬で怒りに沸騰した。


「貴様ぁぁああああああ、手加減はせんぞ!! 愚かな人間めが!!!」


「お前に手加減する余裕なんてある訳ないだろ? 雑魚らしく全力で来いよ?」


「その減らず口、今すぐ閉じさせてやるわ!!!!!」


そう言って真っ直ぐに俺の方へ突っ込んでくる。


ボーリンさんがかつて言っていた通りだ。巨体にもかかわらず早い。


・・・だが!!

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