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彼を好きになったのは

いつからだろう――


初めは、話していて気のいい人だった


一緒に話して

一方的にからかって

やりすぎたこともあったけど

自然と惹かれていた


彼に恋をしていると

気づいたのは

いつからだったのか


それすらも分からない

でも、気づいたら

彼のことばかり考えていて

考えるたびに

胸が締めつけられて

苦しかったけど

心のどこかで

心地よく感じていた――


友人や仲間たちに

「彼のことが好き」と

伝えたら


みんながみんな

「あいつが好きなんだなと

君の行動を見ていて

分かっていた」と


口々に言われた


仕事で有能な人たちにも

話していて面白い人たちにも

からかっていて面白い人たちにも

気の合う友人たちにも


誰からも言われてしまった


気づいていないのは

恋している彼と

その友人である変人だけ


変人には昼食を取りながら伝えたから


実質的に知らないのは

彼一人だけ


みんなに知られながらの恋は

どこかくすぐったく感じて

恥ずかしくも感じていた――


みんなが気を利かせたのか

彼と一緒にいる時間が増えた


でも、彼に想いを伝えようとすると

なかなか正直になれなくて

つい、からかってしまう


我ながらヘタレだと思うけど

どうしてもヘタレになってしまう


溜め息をつきながら

愛猫を抱きしめる


愛猫のお腹や肉球をこねくり回しながら

撫でまくっていると


少しは気晴らしになったかな――?


昼休みに職場の同僚と

会話を楽しんでいたら

彼についての

良くない噂話を聞いた


男女に関連する悪い噂

どちらかによる二股疑惑


押し寄せる不安

違うという自己暗示による

疑惑へのささやかな抵抗


平気なふりを装って

でも、中は不安で一杯で

真実を知りたくて

知ることが怖くて


仮面を被っているような気持ちが

心の中で根付いていた――


心が不安で満ちてから

数日が過ぎてからの昼食時

変人と一緒にとっていたら

会話の流れを縫うように

変人が話を始めた


「彼に関する噂話だが

デマだと言うのが発覚したから

もう不安に駆られんでもいいぞ」


「へっ? どういうこと?」


突然に告げられた言葉に

一瞬分からなかった


「二股疑惑はデマだったと

話しているが?」


変人はそう言うと

「話を聞いているのか?」と

首を傾げるジェスチャーを

一瞬だけ取ると


食事を再開し始める


変人の言った言葉を

理解したその瞬間


心の中を暗闇のように

覆っていた不安が

消え去っていくのを感じた


変人の気遣いは

どこか分かり難いけど

どこか安心してしまう


もう少し分かりやすければいいのにと

心のどこかでそう思っていた――


家での食後の団欒の時

祖母が唐突に言った


「あんた、このまま年とって

恋人とかいなかったら

あたしの友達の孫と

お見合いさせるからね」


あまりにも唐突なお見合い話


そのお見合い話を詳しく聞くと

数年経ったら

昔何度か会った

祖母の友達の孫とやらと

結婚させるとのこと


で、相手は了承しているらしい


それは嫌だ、と伝えたら


「あんたが25までに

恋人を作って

家族に見せればいい


25でこのままだったら

本気でお見合いさせるからね


ああそうそう、飼い猫が恋人ですって言ったら

今すぐお見合いの準備をするよ」


祖母は有言実行を宗とするから

お見合いの話は本当だ


25まであと数年

だというのに

サビのようにこびりつく

焦燥感が

心に広がって痛くて

愛猫のお腹を撫でても

焦燥感が拭えなかった――


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