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表計算

 さて、話は私と結婚する前の話にも戻ります。本編では結婚して3年後話をする予定でしたが、のっけからすみませんねえ。所詮、読者の少ないシーですから・・


 ここは、食品部です。小森課長が2つの算盤を手に汗を流しています。

「小森課長、何をしているんですか。」

「おお、日下部か。今月の営業会議の資料を作っているんだが、どうも合計がなかなか合わなくてな。」

 どうやら縦横の合計が合わないようです。小森課長は定年間近です。パソコンは怖くて近づけません。しかし、電卓ではなく2つの算盤とは古風です。もうこれは、毎月の名物風景です。


「パソコンを使ったらどうなんです?」

「ははは、それはわかっているけど・・・」

「データはどれですか。1-2-3なら簡単ですよ。やりましょうか。」

「たのむよ。」

「ふんふん、ところでこのデータはどこから取っているんですか。」

「このリストのここだよ。」

「ああ、なるほどね。これを入力したらいいのですね。わかりました。やっときます。」

「助かるよ。」

 主人は、共有パソコンで、あっという間に表計算で資料を作成しました。当然のことながら計算はぴたりと合います。さすがです。


「しかし、毎月、こんなリストから入力とは大変だな。元データはどこだろう。」

主人は二村課長のところに相談に行きました。二村課長は食品部の業務課長で、情報システムの担当者です。

「二村課長、ウチの課のこのデータですけど。元ネタはどこなんです。」

 そう言ってプリンターのリストを二村課長に見せます。

「ああ、これか。情報システム部から毎月もらっているんだ。ここにあるよ。」

 そう言って、主人に8インチフロッピーディスクを見せました。

「へぇ、8インチフロッピーディスクですか。初めて見た。こんなのまだ使っているですか。」

「ホストの汎用機は古いからね。ちょっと、やばくなってきたけど。」

 当時は、5インチフロッピー全盛です。3.5インチではちょっと容量不足でした。


「ちょっと、このパソコンを借りていいですか。」

「何するんだ。」

「営業会議の資料作成です。毎月、リストから拾って集計しているらしいんですよ。そして、担当別と品目群別に集計して、会議をしているらしいんです。リストから拾うよりコピーしたほうが確実でしょう?」

「ああ、なるほど、データを直接とりこんで作ろうという訳か。確かに、入力ミスはないなあ。」

「そうでしょ。じゃあ、このパソコンを借りますね。すぐに済みますから。」

「いいよ。使いこなしているのは、ウチでは日下部君だけだしな。」

 二村課長は主人のことを「君」で呼ぶ珍しい人です。主人の喜ぶツボをしっかりと押さえいるしたたたかな課長さんです。その上、パソコンが趣味の主人と話が良く会うのです。


 ところで、当時のソフトはフロッピー起動だったことを知っていますか。起動用フロッピーがあれば、どのパソコンでもソフトがつかえました。主人はロータス123のフロッピーを入れて、起動します。そして、8インチからデータをコピーして、あっというまに資料を作ってしまいました。それを二村課長がにこにこと見ていました。

 二村課長は機械情報室、旧情報システム部の出身です。せっかく、貴重なデータをもらっているのに、コンピューターに詳しい人は少なく、使う人はだれもいなかったのです。主人は二村課長にデータを活用してくれる貴重なひとなんです。


「ありがとうございます。」

 作業を終えて、ドットプリンターで打ち出したリストを持って、二村課長に挨拶にいきました。

「もう、終わったのかい。」

「ええ、来月またお願いします。しかし、システムも古くなってきましたね。」

「近々、更新する予定だ。その折りには、データをLANでもらうつもりなんだ。」

「いよいよ、LANですか。」

「何言っているんだ。うちの部はせまいながらLANシステムだよ。こんど全社的にやるらしい。」

「えー、じゃあ、いままで、ウチにあったホストの端末はLANとは違うんですか。ふーん。さすがに、ネットワークは難しいな。ともかく、便利になるといいですね。」

 主人は二村課長が企んでいることに何も気がつきませんでした。


 1ヶ月後のことです。二村課長がにこにこしてやってきました。いつも笑顔です。今回はひときわ笑顔です。

「日下部君、こないだ言った新システムの説明会があるのだが、化学薬品課の代表として君もでてくれないか。」

「僕ですか・・良いですけど。」

「全体の説明は私がやるから、いざと言うときに、化学薬品課の世話をたのめないのか。」

「でも、僕は業務部ではないですし・・」

「他の連中は私がみるよ。化学薬品課だけでも頼むよ。パソコンのことはみんな君に聞いているだろ。その代わり、新システム導入にともなって配布するパソコンを専有機として配布としよう。」

「え?いいんですか。第1期は課長以上だけでしょ。」

 主人は満面の笑顔です。主人の喜ぶツボをしっかりと押さえています。


 こうして、主人は情報システムの化学薬品課の担当になりました。通常の仕事の上にシステム関係のお守りまで任されたのです。まあ、日常的にパソコンのことをよく聞かれていた主人はなんらかわった気がしなかったようですが、こうして、徐々にシステム担当者に引き込まれていることに気がつきませんでした。


 2ヶ月後のことです。小田さんが真っ青な顔で主人のもとにやってきました。

「日下部さん。営業システムがおかしいです。」

「パソコンじゃないのか。電源を入れ直してみたあ?」

「だれも営業システムに入れないんですよ。」

 主人がパソコンに入ってみますと、やっぱり、はいれません。

「え、本当だ。二村課長は・・ああ、休みだっけ。」

「二村課長の家に電話してみましょうか。」

「その必要はないよ。日総システムの営業の坂本さんの電話番号を聞いているから。」


 主人が電話をしてみると、サーバーの画面をみてほしいとのことでした。電話をしながら、画面に出ているエラーを伝え、指示通りの作業をしています。小一時間ほどして、

復帰しました。

「みなさん。営業システムが復帰しましたあ。」という主人の元気な声にです。

 全員に安堵の声があがりました。

「はあ。よかった。日下部さんがいてくれて助かったわ。」

「もしものことがあったら、ここに電話してほしいと言われていたんだよ。」


 数ヶ月後のことです。二村課長がまたニコニコして主人ところにやってきました。

「今度の休みにプログラムの修正作業の立ち会いをしないといけないんだ。ちょっと用事があってなあ。代わってくれないか。上司に了解をもらうけど。」

「何するんですか。」

「データを待避させて、新しいプログラムを入れ替えて、もとにもどすと言う作業だよ。ただ、その作業を見ているだけ。数時間かかるらしい。」

「見ているだけですか・・」

「問題があれば、中止して現状復帰することになっている。最後に操作画面がうまくでることを確認するぐらいかな。」

「それならばできそうですね。いいですよ。」


 日曜日です。主人が机で本を読んでいると、警備室から電話が鳴りました。

「はい。日下部です。日総システムさんがきましたか。2階にお願いします。」と主人が電話で答えました。、


 まもなく、やや太った背広をきた着た男性とやせたひょろりとした男性の二人ずれがやってきました。

「日総システムの営業の坂本です。」と太っちょさんあいさつをしました。

「ああ、こないだ故障のときにきていましたね。」

「こちらが、プログラマーの桜居です。」といってひょろりさんを紹介しました。こちらは新顔です。

「桜居です。」と言って名刺を出します。

「よろしく、お願いします。日下部美希です。」

 そう言って笑顔で名刺をわたしました。


 プログラマーがいるので、営業の坂本さんはほとんど何もすることがありません。見ているだけの主人も暇です。世間話がはじまりました。


「・・・へぇ。日下部さんはパソコンが趣味なんですか。どうりで詳しいわけだ。」と言う坂元さんです。

「そうなんですよ。おかげで、なんとなくとシステムの仕事を押しつけられてねえ。」

「いやあ。助かってますよ。なかなか、詳しいんで、故障時の受け答えが的確で、故障を確定しやすい。」

「そうですか。ウチの奥さんなんか。外国語みたいだといわれていますけど。」と笑いながら主人が答えました。

「え?すみせん。ウチの奥さん?」と驚く坂本さんです。

「う!その・・」と主人が絶句しました。

 無言時間が流れ、空気が凍りました。


「すみません。白状します。くれぐれも内密に願います。僕は男なんです。本名は日下部拓也といいます。」

 そう言って、伝家の宝刀を取り出します。

「えー。た、確かに男だよ。」と主人の運手免許証をみて驚く坂本さんです。

「ホントですか!」

 これには、仕事に没頭していた桜居さんも驚きです。

「しかも、女性と結婚しています。だから、妻がいるんです。」と言う主人です。

「結婚なされているんですか!」と驚く桜居さんです。


「おい、桜居、警告が出ているぞ。そっちは大丈夫か?」という坂本さんです。

 桜居さんは慌てて、キーボードをたたきます。

「ああ、しまった。驚いてミスっちまった。」

「大丈夫ですか?」

「いやいや、大したことはありません。バックアップありますので、すぐに元に戻しますので・・ははは・・大変だな。いえ、大丈夫ですよ。」

「大丈夫ですか? 1年ほど前ですが、やっと結婚できたんです。子供はまだですけどね。」

「子供?女性と結婚したんですよね。」

「こんな体していますけど、おチンチンはちゃんとあるんですよ。だから子供をつくれます。」

「なんか、不思議なかんじだな。」

「さてと・・少し伸びましたが、あと1時間ほどです。」

「そうですか。」

 驚きの告白に見つめ合う二人でした。


 それから、1年立ちました。主人は完全にシステム担当兼任です。故障があればみんな主人に相談しにきます。パソコンでこんなデータがでないかといろいろ相談に来ます。


 二村課長がまたニコニコしてやってきました。

「日下部君、ちょっと、話があるんだが・・」

「なんでしょうか。」

「知っての通り、今のサーバーはリース切れだ。これを機会にシステム更新しようと思うんだが・・」

「それを僕にやってほしいと?」

「私はまもなく定年なんでね。完成までいられない。」

「できるかなあ。でも、今のシステムに問題があったんで改善したかったんですよ。」

 あらあら、とうとう、ミイラ取りがミイラになっちゃいました。


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