追憶
一番、幸せな頃の夢をみていたわ。
ここは、ローザンヌの精神病棟。
睡眠薬をたくさん飲んだはずなのに、私はまだ、生きてる。
薬で、うつらうつらして、たくさん夢をみてる。
幸せだった頃の夢ばかり。
結婚の約束をしていた私達だったけど、果たされることはなかった。
おじいさまは、派手に政府の高官に賄賂を渡してた。それを告発しないかわりに、私との結婚を申し込んで来た男と私は結婚したのだから。
男は、財閥の後ろ盾を、得られれば、私が誰と付き合おうと、かまわないと言った。私は、彼に、とどまる様に頼んだけど、彼は、私の間男になるのは嫌だと別れることを選んだ。
「あなたの妻になりたかったわ。」
「そんなら、オレと来いよ。どこでだって、やっていけるさ……」
「無理よ……お願い、この家にとどまって、私のそばにいて。」
「おまえの間男なんて、ごめんだぜ……明日の朝、発つ。もう二度と会うことはねえ。」
彼が去って、私のお腹には彼の子供がいた。父親が誰であろうと、私の子供は、生まれながらの財閥の跡継ぎだ。
子供は双子だった。
死産だったと告げられたもう一人の息子は、私の知らないところで、養子に出された。