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片割れがいない世界で君は笑う ――愛と執着が交錯するダーク・サスペンス  作者: 愛薆 藍


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第1章『開幕』③







「あの女、何処まで追ってくんだよ!」


「やっぱり、コンビニに寄るべきじゃなかったんじゃ…」


「しょうがねぇだろ!すぐに金を振り込まなくちゃ、俺らがどんな目に遭わされるか!」




車のバックミラー越しに、自分たちを追う女の姿が映る。


振り払ってもなお、食らいついてくるその姿に、背筋が凍る。


車で逃げているはずなのに、追いつかれる錯覚すら覚える。




(大丈夫、こっちは車だ!絶対に追いつくはずはない!)




それに、ここを抜ければ大通りに出る。そうなれば必ず振り切れる。


男は手に汗を滲ませながら、ハンドルを握り直した。






(大通りに出る前に絶対に仕留める!)


走りながら、考える。


投げるものがあれば、そう思うが、何もない。

追いかけると同時に鞄はさっき、コンビニに捨ててきた。



立ち止まれば見失う。

それだけは直感で分かっていた。


ただでさえ、自分は足で向こうは車だ。

それだけで分が悪い。


(なんにせよ、ここで止めるしかない)


そう考えた瞬間、

不意にレイの右側からクラクションが鳴り響いた。





  パァァーーーーーーーン





レイの視界がトラックに埋め尽くされた。























———————————————————————————















「あはははっ!馬鹿が!トラックに轢かれやがって!」



合図と言わんばかりにアクセルを踏む。


(…ツイてるっ!)


この依頼が成功したら俺も『ナンバー』入りができるかもしれない。


そう考えると自然と口角が上がった。




「おい、今度こそガキの口と手ぇ、ふさいどけよ」


「……」


「チッ!……おい、聞いてんのか!そもそもテメェがガキの口塞いでねぇからバレたんだろが!」



「おい、前見ろって!」

「ぶつかるぞ!」



横から声が飛んでくる。



(さっきからうるっせぇ助手席だな)



男はミラー越しに後ろの座席を見る。


後部座席に座る男は、

マスクで顔を隠し、帽子は深くかぶっている。


目線は下に落とされ、目元は見えない。

無口で気味の悪いやつ。



(何でこんな奴と組まなきゃ行けねーんだよ)



上からの命令だから仕方がない。

だが、それも今日までだ。



今度は俺が命令する番、つまり支配する側だ。



(絶対に、のし上がって見せる!)



男は、にやけたままアクセルを踏み込んだ。



















———————————————————————————

















 プルルルルルーーー…




一本の電話が鳴り響く。

今は仕事中だ。


乙は取るか迷ったが、

携帯に表示された名前を見て、ため息をついた。



「おい。何やらかした」

「やらかしたの前提かよ」



「まぁ、あってるが」

と半笑いのユズキに、頭を抱える。




「で、何をした?人様ンちの車でも傷つけたか?それとも喧嘩か?」


「それは近いうちに起こる未来の出来事だな」


「あ゙あ゙ぁん!」


「そうな怒るなよ。ちょっとお願いしたいことがあってな」


「……内容による」


「声ちっさ!そんな身構えるなって。実はな……」





——その五秒後。


乙の怒声が、部署中に響き渡るのだった。













———————————————————————————













(レイさん大丈夫だろうか…)



ユズキさんから事情を聞き、すぐにレイさんのあとを追った。


あの人のことだ。


(止まるなんて選択、最初からないだろう)


昔からこれと決めたら、一人で突っ走って無茶ばかりする。



フォローする身にもなってほしい。



……けど。



あの人の場合は、

考えるより先に体が動くから、思うだけ無駄だけど。





「っレイさん!」





走るレイさんの背中を捉えた——



その瞬間、クラクションの音が鳴る。

と同時に視界から、レイさんの姿が消えた。






轢かれた——誰もがそう思った。





だが、違う。

ごうだは、確かに見た。



轢かれる瞬間、レイさんがトラックに向き直り、

走り込みながらスライディングをする姿を。



そう、レイさんは轢かれる直前にトラックの下に潜り込んだのだ。




口を開けたまま固まっているごうだ。

遅れて、急ブレーキの音が響く。




間に合わず引いてしまった、と思ったのだろう。


運転席から、


「どうしよう、どうしよう…」


という動揺の声が漏れていた。









「…ちくしょうが!見失った!」








レイさんの声に、はっと我に返った。


運転手の動揺に見向きもしないで大声を張るレイさん。


その姿は、かすり傷ひとつ、ついていない。

せいぜい、ズボンの膝が擦れているくらいだ。


(相変わらずなんて頑丈な体なんだ)




「ふぇ、ひいた?どうしよう、ひいて」

「あー運転手さん気にしなくていいっすよ」






バイクを脇に停めて運転手の方に駆け寄る。


「轢いてないし、むしろ無傷なんで!」


と運転手を励まして、

悔しそうな顔をしたレイさんの元へ向かう。





「レイさん!」

「!?ごうだ、いいところに!」





汗を拭いながら肩で息をしているレイさんに、声をかける。


あれだけ全力で走っていれば、息が上がるのも当然だ。

それでも彼女は構わず走り続けるだろう。






「ちょっと手ぇ貸して!」

「…もちろん喜んで!」








あの車に追いつくまでは。



そう思いながらバイクの鍵を投げ、

レイさんの言葉に笑顔で返すごうだであった。














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