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星守シオンは帰りたいっ!~ギャル、異世界転移した。と思ってたらタイムトラベルだったらしい。未来が魔法の世界ってマジですか!?~  作者: 日華てまり
第3章 九龍寨城 陽華商虎編

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72話 危ういねぇ

 



「ご自分でも分かっているみたいですね。信用出来ない相手の話は聞く価値が無い。そうでしょう?」


 イオンがじろりと睨みつける。


「そう邪険にするなって、お嬢さんを悪く言って悪かったよ。そんなに、このお嬢さんが大切か?」


 このままでは話が進まないと踏んで、シオンが一歩前に出た。


「イオン、待って。話だけでも聞いてみない? 私とジンガのこと、倉庫で助けてくれたわけだし……。それに、なんかこの人が悪い人って気が全然しないんだよね」


「それは、君たちを騙す為に恩を売ったのかもしれない。いや、気を許して貰う口実に、わざと君たちが捕まった時も見て見ぬふりをしたのかも……」


「イオン。ねぇ、イオンってば! いつも冷静なイオンらしくないよ! そりゃあ、そういう可能性だってあるかもしれないよ。だけど、いつものイオンならまずは話を聞いてみようとするはずだよ。利用出来るものは利用するって、割り切るはずでしょ!?」


 そう言われて、イオンが動きを止める。情報の揃わないうちに結論を出すのは、研究者として早計だとしか言えない。

 冷静さを欠いていたことに気づいて、イオンが黙り込む。


「貴方も。わざとイオンを煽ってるでしょ。なんか……怒らせて相手の出方を伺ってる……みたいな感じ。そういう回りくどいの、私、めっちゃ嫌だから言うけどさ……信じて欲しいんだったら、信じてって最初から言えばいいじゃん!」


「……なんだ、そりゃあ。そんな言葉一つで、お嬢さんは見ず知らずの相手の言うことを信じるっていうのか?」


「信じるよ!」


 曇りなき(まなこ)で言い切るシオンに男は息を飲んだ。

 どこまでも前向きで、純粋なシオンに男は意地の悪い質問をする。


「それで、信じた相手が悪い奴だったらどうするんだ?」


「そしたら、私の見る目がなかったってだけでしょ?」


 そう言って、にっこりと笑いかけるシオンを見て、男は帽子を深く被った。


(このお嬢さんは、ただの底抜けのお人好しなんかじゃない。お嬢さんの言う()()()は、()()()()()()()、だ。なんて……)


「…………危ういねぇ」


 男がぽつりと呟いた。


「ん? どーしたの?」


「いいや、なんでもない。……いきなり嫌いなんて言って悪かったな。昔の知り合いに嬢ちゃんが似てたんだ。素直で人が良くて、俺みたいな悪い奴に騙されやすそうなところが」


「それって、大切な人?」


「……どうしてそう思う」


「だって、嫌いって直接言われたのにはびっくりしたけど……、本当に私のこと嫌ってる感じがしなかったもん。なんか、心配されてるみたいな……私に重ねた誰かに苛立ってるみたいな感じ?」


 首を傾げて、人差し指を唇にあてるシオンに、男は声を上げて笑った。


「……ははっ、お嬢さんもそいつに負けず劣らずお人好しだよ」


 男はひとしきり笑い終えると、真剣な眼差しでシオンに向き直った。


「……さて、と。気を取り直して……本題に移ろうか」


 勝手に話を掻き乱していた癖に、とイオンが冷たい視線を送る。それも、次に男の口から出てきた単語によって(くつがえ)される。


「……審判の飴。お嬢さん達は、あれの出処を探ってるんだろう?」


「……っ、どうしてそれを……っ!」


「しぃ、静かに。この街で俺に知らないことなんてないのさ」


 人差し指を薄い唇にあて、声を荒らげたイオンをたしなめる。


「どうだ、俺の話を聞く気になったか? なぁに、悪いようにはしない。審判の飴とやらをこの街から無くそうってんなら、俺の飼い主と目的は同じなんだからさ」


「貴方の……飼い主?」


「そう。知らず知らずのうちに自身の放つ熱で周りを焼き潰す、太陽みたいな怖ーい虎の子さ」




 ◇ ◇ ◇




「へぇ、シオンの瞳は()()と同じアメジストか。真っ黒な髪に淡い紫が映えるねぇ」


 何気ない素振りでシオンの髪をすくうと、さらりと指を滑らした。謎の色気を感じさせる一連の動きに、ドキリと動きを止める。気を紛らわせるように、シオンはわざとらしいくらい、声を上げてはしゃいだ。


「わーっ! この服、ちょっと透けててひらひらしててめっちゃ可愛い! めっちゃ映える〜! 学園の制服は暗い色だったから新鮮なんだけど、あれって防御魔法かかってるんだよね? 今更だけど……服変えちゃって大丈夫なの?」


「これ、魔法鉱石だろ。防御魔法はこいつにかかってるから、付け替えれば他の服でも同じ効力は得られるさ」


「あ、そっか。なーんだ、だったらもっと早く普通にお洒落すれば良かったじゃん」


「そういうもんか? 俺は随分と制服が似合ってるとおもったけどねぇ」


「あははっ、ありがと! おにーさん、怠そうにしてるわりに案外口説きなれてんね!」


 いつの間にかシオン呼びをしている男と、あっけらかんと笑うシオンのやり取りを遠目で眺めて、ジンガとイオンは複雑そうな視線を送る。


「それで。いい加減、名乗ったらどうですか」


 気分を害したお詫びに服屋に連れていってやる、と言った男に向かって、トゲのある物言いでイオンが問いかける。


「アンタらも、別に俺に名乗ってないだろう?」


「それでも、事前に知っていたのか知らないですけど、貴方は僕たちを知っている。公平(フェア)じゃないじゃないですか」


「世の中は不公平(アンフェア)に出来てるもんだぜ? お坊ちゃん」


 無駄に煽ってくる男と真面目なイオンの相性は最悪なようで、シオンが目を離すとすぐにバチバチと火花を散らす。


「ああもう! また、イオンのこと揶揄(からか)って……、一緒に行動するなら空気悪くするの禁止! 分かった!?」


 分かった分かった、と軽くあしらう男をシオン越しにイオンは睨みつけていた。




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