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星守シオンは帰りたいっ!~ギャル、異世界転移した。と思ってたらタイムトラベルだったらしい。未来が魔法の世界ってマジですか!?~  作者: 日華てまり
第2章 探求者の国シャルム編

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56話 大丈夫だよって笑ってよ……っ!

 



「行くぞ……ッ! 出来る限り飛ばしてやるから、お前ら掴まってろよ……!」


 準備を終えて、全員が飛空艇に乗り込むと、艦内にヴォーロの声が響いて、急いで飛び立ったのか飛空艇がぐらりと揺れた。


 揺れもおさまり、安定してきた頃、バラバラと散らばっていた全員が操縦中のヴォーロの元へと集まった。


「……ヴォーロ。アムレートさんのこと……、ネージュさんにはなんて言ったらいいんだろう……。あんなに、お兄さんのことを尊敬してるみたいだったのに……」


 シオンの言葉に、ヴォーロが辛そうに俯いた。


「……フリージアの治療もこれからってところなんだ。姉貴を動揺させたくねぇ。言わなきゃいけねぇことは分かってるけどさ……今言うことじゃねぇよ」


「……そう、だよね。……でも……ッ、家族……なんだよ……? こんな大事なこと……もしも、黙ってられたって思ったら、私ならそれも結構キツいかも……」


「……ッ、分かってるよ。……けど、これは俺の我儘だ。姉貴の傷ついてるとこを正面から受け止めきれる気がしねぇんだ。いや……姉貴はきっと、俺には見せてくれねぇな……。それが凄く嫌なんだ……」


「ヴォーロ……」


 双子といっても、ネージュが姉でヴォーロが弟。その事実は揺らがない。

 姉という生き物が、弟の前では気丈に振舞ってしまうこと、弱音を吐いたりしたくないこと、シオンは痛いほどそれが理解出来てしまう。


(……きっと、私だって弟の前だったら、どんなに辛くたって笑うに決まってる。心配をかけたくないからだけじゃない。いつだって弟を助けてあげられる強いお姉ちゃんでいたい。弱いところを見せたくないって思っちゃうから……)


 例え、強がりに気づいて自分の前でも泣いて欲しいと願う弟がいるって分かったとしても、その生き方は変えられない気がして、シオンは言いかけた言葉を飲み込んだ。


「ヴォーロの言い分は分かったよ。だけど、フリージアの治療が終わったら伝えよう。酷く傷つくだろうけど、ネージュなら大丈夫。隠されることを彼女は望まないはずだよ。だって、ヴォーロ。君が一人で抱えていることの方が、ネージュにとっては耐え難いと思うからね。……これはただの僕の想像だけど」


「……イオン」


「真実を知らないままでいるよりも、知って、自分の足で立ち上がるよ。彼女は優しくて、……とても強い人だから」


「……分かった。だけど、俺から伝えさせてくれ。……イオン、お前の言ってることが正しい。自意識過剰なんかじゃねぇ、姉貴は俺を優先する。そんな事は分かってんだ」


 そう言うと、ヴォーロは一息ついて、ぽそりと呟いた。


「…………だけど、姉貴にとってはあんなクソ兄貴も、切り離せない、優先すべき大切な家族なんだ。……動揺を見せなかったとしても、冷静でいられるはずがないんだよ……」


 ぐっと舵を握りしめて、これから大切な姉を傷つけることになる兄を睨むかのように、ヴォーロは空の果てを睨みつけた。




 ◇ ◇ ◇




「これが試作品か……! 流石はイオンだな。ここからは私の戦場だ。後のことは私に任せろ」


 イオンから特効薬の試作品を受け取ったネージュが、戦友に向けるような熱い眼差しを向けて、ぽんと肩を叩いた。


「うん。頼んだよ、ネージュ」


「…………? どうした、浮かない顔をして。やはり、試作品であることが不安なのか? だが、こうしてジンガの身体から、飴の成分が分解されていることも分かったんだ。君の研究は成功しているぞ」


「それも、心配ではあるんだけど、ね。ネージュが治療にあたってくれる、こんなに頼もしいことはないよ。……詳しいことはフリージアの手術の後で話すよ」


「分かった」


「それと一つ懸念点が。ジンガが特効薬を飲んでから苦しんでいた件だけど、飴の摂取量からくる成分の分解での負荷なのか、そもそも成分を打ち消す時に生じる痛みなのかは分からない。痛みを和らげる魔法は使っていたけど効果もあったのかは分からないし……」


「分かった。ならば、イオンはサポートで入ってくれ。その副作用を中和できるか私の方で試す。君は横で観察して、可能性を上げていってくれ。大丈夫だ、この医療塔で君の指示に応えられない人間などいないよ」


「分かった。僕も君たち医療チームを信じているからね」


 イオンとネージュ、そして手術をサポートする医療塔の研究者達。お互いへの固い信頼が、不安だったシオン達の心を軽くする。


「フリージアは絶対に大丈夫だよ。誰が作ったと思ってるの? 僕が天才なのは、君たちだって知っているでしょう?」


「あ、ははっ。イオンってば自分で何言ってんの、もう……っ!」


 シオン達の不安を和らげようと、冗談めかして言うと、イオンはいつも通りの柔和な笑みを浮かべた。

「普段通り、成功も失敗も考えることなく当たり前に成功するかのように」

 その態度が、何よりも心強く感じることだと、大人達(イオンとネージュ)は知っていた。


「では、早急に手術を始めようか」


 そう言って、ネージュとイオンが手術室へと入っていった。

 施術中の赤いランプが点灯し、待合室に残されたシオン達は無言でフリージアの無事を祈っていた。


 一番死んでしまいそうな顔をして、組んだ両手を額に当ててうずくまっているジェイドを横目に、シオンは瞳をぎゅっとつぶる。


「……フリージア、お願い。早く、目を覚まして……。いつもみたいに、大丈夫だよって笑ってよ……っ!」


 施術中のランプが消えるまでの時間が途方もなく感じた。

 シオン達は皆、組んだ両手を額に当ててフリージアの無事を祈り続けていた。


 パッ、と施術中の赤いランプが消えた。




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