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星守シオンは帰りたいっ!~ギャル、異世界転移した。と思ってたらタイムトラベルだったらしい。未来が魔法の世界ってマジですか!?~  作者: 日華てまり
第2章 探求者の国シャルム編

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54話 アンジュちゃんが殺っちゃうよ♪

 



「ゲホッ……ッ……も〜、シオンちゃんってば手荒だなぁ。あっ、これ、もしかして壁ドンってやつじゃない? アンジュ、初めてされちゃったぁ♪」


 シオンに掴まれたまま、壁にめり込んでいる状況にも関わらず、アンジュは余裕そうに軽口をたたいて笑いかける。

 アムレートの家の壁は衝撃に耐えきれずに壊れ、瓦礫の崩れる音が響く。


「……っ! いっつもヘラヘラして……、遊び半分で……、アンタ、自分が何してるか分かってないの!?」


 珍しく怒りをあらわにして、シオンが怒鳴る。


「……ふふっ♪ アンジュ、分かんなぁい♪ ノア様が今よりずっといい世界にするって言うんだもん。それって絶対に正しいんだもん♪」


「……ノア様? それが、アンタ達のリーダーってワケ? こんなやり方で今より良い世界なんて作れっこない。何様だか知らないけど、こんなことやってる奴が正しいわけない……っ!」


「……なぁんか、シオンちゃん、ちょっとムカつく。……恵まれてる子には分かんないよねぇ♪」


「え?」


「……ねぇ。恩人のノア様のこと悪く言われちゃって、アンジュ、カチンってしちゃった……♪ そんなにノア様のこと知りないなら……力づくで聞き出してみたら?」


 アンジュの身体が霧状になって、するりとシオンの手から抜け出した。

 苛立ちを隠しもせずに、アンジュは好戦的に瞳を細めて、挑発するように口角を上げた。


「来ないなら、アンジュちゃんが()ッちゃうよ♪」


「……ッ!? 速……ッ!」


 シオンは咄嗟にネックレスを掴んで魔力を込めた。

 一瞬で懐に潜り込んだアンジュの両手に握られた短剣が鈍く光る。


 キィィイイン!


 間髪入れずに振り抜かれた剣先を、シオンの手に握られた長い棒が受け止めた。


 見かけによらないアンジュの激しい剣さばきに、シオンはやっとの思いでついていく。

 強化魔法で強化された動体視力で、二つの剣の向けられた先を見切ったシオンは、達人技とでも呼べる動作で一本の棒を自在に操って防いでいる。


「このままでは、まずいね……」


 イオンが口元に手を当てて、眉をしかめる。


「どうしてですか? 俺達は目で追えていないけれど、シオンはあの攻撃についていけてる。互角なんじゃ……」


「そこだけ見ればね。シオンは強化魔法で動体視力と身体能力を上げている。そして、特訓で身につけた棒術を活かすべく、慎重に相手の攻撃に合わせてしのいでいるだけなんだ。魔法の持続と慣れない戦闘での棒術、集中力がいつまで持続するか分からない」


 ジェイドの問いかけに、神妙な顔で答える。


「いつまで耐えられるか分からないシオンに比べて、アンジュっていう子はかなり戦い慣れているね。剣さばきもそうだけど……動作に余裕がある」


「余裕……」


「それに、あの子はまだ魔法を使っていない。全力を出さずに、シオンの反応を見て楽しんでいるみたいだ」


 ギャィン……ッ!


「……まずい……っ! シオン……ッ!」


 両手の剣を振り抜いて、シオンの持つ棒を打ち上げる。シオンの手から離れた棒が、カランと音を立てて地面に転がった。

 無防備になったシオンに、アンジュの双剣が振り下ろされる。


星ノ白雪(ほしのしらゆき)(バク)!!」


 キィィン……ッ!


 星空のように無数の小さな白い光の玉がシオンの周りに浮かぶ。その一粒に触れて「(バク)」と唱えると、眩い光を放って爆発した。


「どうなったんだ……っ!? シオン……ッ、返事をしてくれ……ッ!」


「何をしている、星守シオン……ッ! 応えろ……ッ!」


 閃光弾のような強い光で見えづらくなった視界が徐々に戻り、ジェイドとジンガの焦り声が響く。


「……うっ、ふふっ♪」


 もわもわと立ちのぼる煙の中から聞こえたのは、アンジュの笑い声だった。




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