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星守シオンは帰りたいっ!~ギャル、異世界転移した。と思ってたらタイムトラベルだったらしい。未来が魔法の世界ってマジですか!?~  作者: 日華てまり
第2章 探求者の国シャルム編

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53話 お手柄だね♪

 



「ここまで魔力量の多い人間を使った人体実験など、不可能に近かった。それが、適正がなく暴走したうえで、魔力量が更に開放されるという、私の望みに近い中途半端で最高の実験体が手に入るなど……夢のようだった」


 アムレートは、床に這いつくばっているジンガを見つめて頭を下げた。


「魔力量の多い人間は貴族ばかりだからな。普通は実験体になどなっては貰えない。お前の存在は本当に助かった」


「……ッ、馬鹿に……してるのか……っ!」


「いいや。本当に有難いと思っているから、こうして頭を下げて誠意とやらを見せているんだ」


 その様子にシオンは背筋がぞっとした。


(皮肉なんかじゃない。この人は……本当に本心でお礼を言っているんだ。この人に……人の心なんて、ない)


「でもでもぉ、それを言うならアンジュちゃんのお手柄じゃない? フリージアちゃんの装置をそっと切ってきてあげたから、ジンガくんが試作品でも飲もうって頑張ってくれたんだから♪」


「…………は?」


「あっ、でもねぇ〜、まさかジンガくんが飲むとは思ってなかったんだよぉ。臨床実験無しの薬の投与? だけだったら〜、フリージアちゃんの容態が悪くなったらフリージアちゃんに試してくれるかな〜って、アムちゃん言ってたもんね♪」


 アンジュの無邪気な笑顔に凍りつく。


「アンジュ……。アム、レート……ッ! アンタ達のせいで……、フリージアがどれだけ苦しんでると思ってるの……ッ!?」


 噛みつきそうな勢いでシオンが叫ぶ。

 悔しさで目尻に涙が浮かぶ。


「審判の飴など……私にしてみれば不名誉な名前をつけられたものだ。この飴に選ばれた者などいない。試作品、未完成、出来損ない。たまたま、アレルギー反応のように結果が出るか出ないか、それだけだ」


 シオンの言葉など、シオンの想いなど、アムレートには一欠片も届いていない。


「誰であっても適正などはなく、全ての摂取した者の能力を解放する。それが審判の飴の本来あるべき姿なのだ。ありがとう、この研究は私を更に高みへと導いた」


「さっきから黙って聞いてれば、饒舌じゃねぇか。そんなに気分が良いのか知らねぇが、何ごちゃごちゃ言ってんだよ、クソ兄貴」


 恍惚とした表情でべらべらと語り出したアムレートに、ヴォーロがピシャリと言い放つ。


「てめぇが飴を造っただ? 世界中に拡がりそうだっていう副作用(それ)を治そうと、睡眠時間も削って必死になってんのは姉貴なんだぞ……っ! よくもそんな自慢げに言えたもんだな……」


「……あぁ、ネージュには助けられている。あれは優れた研究者だ。副作用を打ち消そうとする研究データは飴の改良に役に立っている。ヴォーロ、お前にもいつも助けられていた。お前がいなければ、こんな辺境の地に住みながら、研究など続けることも出来なかっただろうからな。感謝しているぞ」


「……っ、この、クソ野郎……、ぬけぬけと……っ!」


 ネージュのことも、ヴォーロのことも、家族として特別に感情があるわけではない。ただ、優れた研究者として、技術者として、尊重されていることだけはわかる。


 実の兄の倫理観の欠如、それを目の当たりにしたヴォーロはかける言葉を失ってしまった。この男に、何を言っても響かないことが分かってしまった。


「以前、言ったよね。僕たち研究者は常に危ういところに立っていると。人である為に、この一線は超えてはいけないと。貴方は道を踏み外した。人の道を外れたものに未来はないよ」


 真っ向から否定するイオンに、アムレートは少しだけ寂しそうにまぶたを閉じた。


「……お前なら分かるだろう? 誰かも知らない者が敷いたその不自由な道の外れに、黄金に輝く知識がある」


「分かりますよ。けれど、それは禁断の果実だ。手にして振り返れば、そこに評価してくれる人はいない。僕たちの研究の先には人がいる。その人達を無視していては、誰もその研究を見てはくれないよ。遠回りでも……回り道をした先で、その知識を手に入れなければ意味が無いんだ」


「……非合理的だな。今のお前と話していても平行線のようだ。私はこの道を進む。……次に会う時には、お前がこちら側に足を踏み入れていることを願う」


 そう言い終えると同時に、アンジュが黒い石をアムレートに向かって投げた。すると、どこからともなく黒い霧のゲートが現れて、アムレートは間髪入れずに足を踏み入れ姿を消した。


「……あれっ! 学園で見たやつ……! ……っ! アンジュは……っ!?」


 一瞬で姿を消したアムレートに、以前アンジュ達を取り逃した時のことが脳裏をよぎる。シオンがアンジュに視線を向けると、楽しそうに笑みを浮かべたアンジュが黒い霧のゲートの傍でフリフリと手を振っていた。


「〜ってことで、解毒薬も一段落したアムちゃんの研究所をお引越ししよ〜って、お迎えに来ただけだから♪ アンジュも帰るねぇ〜♪ 今回はただのお使いだから帰らなきゃだけど……また遊ぼうねぇ、シオンちゃん♪」


「待って……っ! このっ、今度は絶対に逃がさない……っ!」


 シオンの手元が白く光る。


 ドォォオオオン!


 強化魔法で目にも見えない速さとなったシオンが飛び出すと、アンジュの首元を掴み、地響きとともに壁に向かって勢い良く突っ込んだ。




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