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星守シオンは帰りたいっ!~ギャル、異世界転移した。と思ってたらタイムトラベルだったらしい。未来が魔法の世界ってマジですか!?~  作者: 日華てまり
第2章 探求者の国シャルム編

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52話 お前ぇええええ!

 



「どうして……アンジュがここに……」


 イオンが言っていたとおり、特効薬を作ってることがバレていたのだ。

 にっこりと微笑みながら、アンジュが近づいてくる。


「ねぇねぇ、その髪の色、アムちゃんの弟でしょぉ♪ 似てな〜い。でもでも、ちっちゃくて可愛いねぇ〜♪」


「は? なんだこいつ……」


 まじまじとヴォーロとアムレートを見比べて、甲高い声で笑うアンジュに、ヴォーロが顔を(しか)めた。


「ヴォーロッ! 今すぐ離れて……っ!」


「シオン……?」


 シオンの叫び声に振り返ると、ジェイドとジンガ、そしてシオンの三人が警戒心をあらわにして、鋭い眼差しで目の前に現れた少女を睨みつけている。


「シオンちゃんってば、こわ〜い。アンジュのこと、そんなに睨まないでよ〜♪」


「……こんなところに何の用? 今度は何を企んでるの? フリージアに何もしてないよね……っ!?」


「え〜? シオンちゃん達に会ったのは偶然……ってわけでもないんだけど〜、シオンちゃんに会いに来たわけじゃないんだよねぇ。今日は〜、お・し・ご・と♪」


「仕事……?」


 審判の飴。

 アンジュの言う仕事なんて、それ絡みのどうせろくでもないことに決まっている。

 最初に口を開いたのは、意外にも一番状況がわかっていなさそうに見えたヴォーロだった。


「おい、兄貴。この女とどういう関係だ……。こいつが勝手に来たってわけじゃねぇだろ。答えによっちゃあ……」


「なぜ、そう思う」


 実の兄を睨みつけるヴォーロを気にした素振りもなく、アムレートは淡々と観察している。


「思えば最初っからおかしかったんだ。その兄貴らしくない少女趣味のコップ。いつのまにそんな趣味になったんだ?」


「コップの柄などいちいち気にしない。たまたま、手にとったのがこのコップだっただけだ」


「確かに、それだけなら有り得ない話じゃねぇ。子供の頃、姉貴が贈った可愛らしいハンカチを使い続けてるのを見たことあるからな」


「そうだろう」


「けどな、人に興味のない兄貴の……来客なんて滅多に来ねぇはずの家に、なんでシオン達全員をもてなせる数のコップがあったんだ? シオン達の反応を見りゃわかる、その女はヤバい奴だ。その仲間もな。……なぁ、兄貴。姉貴に言えないようなこと、やってんじゃねぇよな?」


 暫しの沈黙が、ヴォーロの言葉を肯定する。


  「ふむ、及第点といったところか。別に隠していた訳でもないが」


 重い腰を上げて、アムレートがシオン達の方へと歩みを進める。


シオン達(お前達)は審判の飴とやらを食べたことがあるのだったな。……ならば、この魔法陣には見覚えがあるのではないか?」


 意味ありげにアムレートが、壁に書かれていた魔法陣をそっと指でなぞる。


「それ、この前なんか見たことあるって思ってたやつ……」


 首を傾げるシオンの横で、みるみるうちにジェイドの顔色が悪くなっていく。


「その魔法陣の真ん中……ッ! 審判の飴の包み紙に書いてあったマークだ……っ!?」


 血相を変えてジェイドが叫んだ。


「その通り。だが、これはマークやロゴなどでは無い。審判の飴の効果を持続させる為の魔法陣を包み紙に施している」


「何、言ってんの……? その言い方じゃ……まるでアムレートさんが……」


 フリージアを治療してくれているネージュの兄。シオンにとって、アムレートは救いの手を差し伸べてくれた人の一人だ。

 辿り着いてしまう事実を受け入れたくなくて、シオンは言葉をにごした。


「ふむ、察しが悪いのか。それとも、私を理解した気になって、心を許していたことを否定したくないからなのか……。随分と往生際が悪いようだ」


「アムレートさん……まさか、貴方が審判の飴を造ったのか……!?」


 ジェイドが叫ぶと、アムレートは動揺した素振りも見せずに、平然と「そうだ、と言ったらどうする」と観察するように訊ねるだけだった。


「……ッ! お前ぇぇええええ!」


「ジェイド……!ダメッ……!」


 殴りかかりそうになるジェイドを、シオンが咄嗟に止める。強化魔法を使わなければ止められないほどの、怒りに任せたジェイドの剣幕にシオンは思わず肩をすくめた。

 それでも、ここでジェイドに怒りのまま人を殴らせたくはなかった。


「あの飴はまだ試作品だ。より、私の求める性能を得る為には解毒薬の開発……そして、イオンという私と匹敵する天才の存在は、天からの贈り物かと思った。神など信じてはいないがな」


「…………僕を、利用したんですか」


「いいや、お前達が私を利用しに来たのだろう?」


 睨みつけるイオンにもお構い無しに、しれっと言ってのけるその言葉に、誰も何も言い返すことが出来なかった。




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