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星守シオンは帰りたいっ!~ギャル、異世界転移した。と思ってたらタイムトラベルだったらしい。未来が魔法の世界ってマジですか!?~  作者: 日華てまり
第2章 探求者の国シャルム編

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43話 研究者の倫理観

 



「あの、私、星守シオンって言いますっ! 魔法が暴走しちゃう飴のせいで、友達の意識がなくって……妹さんのネージュさんに診てもらってます。アムレートさんが薬に詳しいって聞いて……それで、私……お願いします……っ! 解毒薬を造るのに協力して欲しいんです……っ!」


 なんとか協力をこぎつけようと、支離滅裂(しりめつれつ)になりながらも必死に説明するシオンを興味無さそうに眺めていたアムレートが、外した視線の先にいるイオンを見て、一瞬だけ驚いた表情をするとにやりと口元を緩ませた。


「……いいだろう。協力しよう」


 アムレートの低い声が響く。

 それだけ言うと、ついてこいとでもいうように無言で背中を向けて、家の中へと戻っていった。


「あれは詳しい話は中で聞くっていう意味だ、良かったな。……と、ひとまず空賊(コイツら)を突き出しに行かねぇとな。オレは先に戻るから、迎えが必要になったら呼べよ」


「っは! 俺達(空賊)も舐められたもんだなぁ。お前みたいなヒョロヒョロのガキ、兄貴達が目を覚ませば返り討ちにしてやるぜぇ! ひゃははっ!」


「うるせぇ、黙ってろ。こんな奴ら一人でも問題はない……とは言っても、ぞろぞろ目を覚まされたら面倒だな……」


 意識を取り戻した空賊が喚くのも気にせず、あっさりと一人で帰ろうとしているヴォーロを引き留めようか悩んでいると、家の奥から戻ってきたアムレートが謎の小瓶をヴォーロに向かって投げ渡した。


「兄貴、何だこれ?」


 ヴォーロの質問に答えるように、アムレートが喚いていた空賊の顔面に別の小瓶を叩きつけると、一瞬で白目を剥き、泡をふいて昏倒した。


「使い方は見ての通りだ。この人数の相手は面倒だろう」


「まぁ……。ところで、これ。死んだりしないよな?」


「この量で死ぬことは無い。二、三日意識を取り戻すことはないが、ネージュに診せれば問題ないだろう。万が一、お前が吸い込んだ時に備えて解毒薬も渡しておこう」


「……。あー、まぁ、御守り程度に貰っておくよ」


 悪びれる様子もなく平然と言ってのけるアムレートに、何かを言いたげにしていたヴォーロだったが、言葉を飲み込んで小瓶を受け取った。


「今のって、毒だけど致死量じゃないから平気ってこと? ねぇ……ちょっとアムレートさん、倫理観ヤバくない?」


「……しぃっ。あの黒いローブの金刺繍……高位魔法研究者の証だよ。シャルムでも、あれを身につけている人はなかなかお目にかかれない。相当の実力者だ。それなのに、表舞台から姿を消した……それはつまり……」


「……やっぱり性格がヤバいかもってこと……?」


「……まぁ、言い方を変えれば、そういうことになるかもしれないね。つまり、凄まじい探究心を持つっていうことだよ」


「……そうだよね。めっちゃ凄い人だから協力頼みに来たんだもん。うんっ、(ヴォーロ)を心配して小瓶を持ってきてくれてたってことだし……第一印象で勝手に決めつけちゃダメだよね!」


 反省反省、と自分の頬をぺちぺちと叩くシオンを横目に、イオンは一抹(いちまつ)の不安を感じていた。けれど、解毒薬の開発にアムレートは必要不可欠な存在だ。


「考えすぎるのは僕の悪い癖だね。慎重に、けれどシオンみたいに大胆にやらなければ、世界なんて救えないさ」


 イオンは、僅かに感じた同じ研究者としての予感を、心の片隅においやった。


「ヴォーロ、本当に一人で行っちゃった。……大丈夫かな?」


「普段は一人で何とかしているってヴォーロも言っていただろう? 大丈夫だよ、本当はあの時だって僕達が戦う必要も無いくらいだったんじゃないかな」


「えっ! じゃあ、なんで私達に戦わせたの。戦い損じゃん!」


「実戦をしたことの無い君達の経験を積むためだったんじゃないかな。ヴォーロなりの優しさってやつかな。ふふっ……姉弟揃って、本当に不器用だよね」


 ネージュのことを思い出したのか、イオンが楽しそうに笑う。


「戦わせるのが優しさって、めっちゃ分かりにくいよ……」


「ふふっ、優しさだよ。僕達はかなり危険なことに足を突っ込んでいるんだ。それなのに、戦闘経験もないこの状態で殺意を持つ敵が現れたら……命を失いかねないからね」


 それは、シオンにとっても、初めての命懸けの戦闘によって身に染みて理解した現実(事実)だった。


「自分が何を出来るのか、どういう戦闘スタイルでいくか、仲間とどう連携するのがいいのか。思考を止めてはいけないよ、シオン。考えるのは大切なことだから」


「……だから、イオンもわざと私達だけに戦わせたってこと?」


「君達がどれだけ実戦で戦えるのか、どんな魔法を使えるのかを見るのに、手っ取り早かったからね」


 悪びれる様子も無くそう言うと、イオンはにっこりと微笑んだ。


「……なるほど、ね。研究者って、ちょっと倫理観と効率の天秤がおかしくなっちゃってるんだ」


 さっさと家の中に戻っていくアムレートと、目の前で微笑むイオンを交互に見比べて、シオンは呆れたようにため息をついた。




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