41話 制圧完了っ!
キィィィン……ッ!
金属音が響き、いつの間にか二人の前に現れたイオンが、コートに着いていた装飾品のチェーンで剣を受け止めた。炎が舞い上がり、イオンと空賊の男は同時に後ろへ距離をとる。
「……なるほど、君たちが優秀なのは分かった。けど、相性があまり良くないみたいだね。連携どころかお互いのいい所を打ち消しあっている。ジンガ、戦闘中の仲間割れは命取りになる。僕の指示になら従ってくれるね?」
バツの悪そうな顔で頷くジンガを見届けて、イオンは二人に指示を出した。
「剣に炎魔法を纏わせて、ムチのようにしならせているのか。……厄介だね、ジェイドの風魔法は相性が悪い。……ジンガ! 君の水魔法で炎魔法を抑え込むんだ。その隙に、ジェイドは風魔法で足元を崩して、こちらへ近づけないように出来るかい?」
空賊の炎のムチがシオン達に襲いかかる。
それを、ジンガの周りに浮かんだ無数の水球が撃ち落としていく。一歩近づこうとすれば、ジェイドの風魔法に妨害されて、空賊の男は思うように進めずにいる。
(なるほど、意外とジンガは理性的……と。冷静に敵の攻撃を見れているようだね……。さっきの無駄撃ちは、ジェイドに対するコンプレックスで判断が鈍っていただけかな? ジェイドの方も集中力と魔法のコントロールに申し分無い。これならこれを凌ぐのは余裕だろうから……)
「シオン。二人が足止めをしている間に、君が小瓶をぶつけるんだ。大丈夫、怖がらないで。落ち着いて強化魔法で身体能力を上げて、その距離から投げてみて」
「……う、うんっ! 分かった!」
シオンの身体を光が包み込む。
「今だ……っ! 投げて、シオン!」
「……えいっ……!」
大きく振りかぶって、シオンが小瓶を投げる。
風を切る音が聞こえ、次の瞬間には男の呻き声がした。
女子高生が投げたとは思えない勢いと強さで放たれた小瓶は見事、空賊の男の眉間にクリーンヒットした。
「……えっ、そこまで力込めてなかったのに」
一番驚くシオンに向かって、イオンは言った。
「君の魔法はそれだけ凄いってことだよ。多分剣が当たったくらいじゃ怪我もしないと思う。だから、安心してやってみてごらん」
シオンに小瓶をぶつけられた男と、ジンガの水魔法に溺れていた男が足元に転がっている。それを見て、最後まで残っていた男が逆上して叫ぶ。
「この、クソガキどもがぁぁああぁあああ!!」
最後の男は氷魔法の使い手だったようで、氷を纏わせた拳で地面を殴ると、氷が空間を走りシオン達をめがけて現れた。
(あれ……、全然余裕でスローモーションみたいに見えるかも。なんか、私いけるかも……?)
シオンが床を蹴った。
落雷のような音ともにシオンが男の前に躍り出る。氷を蹴り上げると、ジェイド達に襲いかかる前に粉々に割れて飛び散った。
「めっちゃ、調子でてきたかもしんない!」
すかさず振り上げた男の拳を躱して、男の懐に潜り込む。足を払いのければ空賊の男が倒れ込んだ。
「クソガキ女が……ッ!」
シオンの足を掴もうとする男の手を振り払って、シオンは後ろ向きにバク転を繰り返して距離をとった。
「馬鹿め……っ! 接近戦じゃなけりゃ、俺に分があるんだよ……っ!」
男が叫びながら両手をシオンに向ける。
手のひらから凄まじい勢いで、広範囲の氷魔法が放たれる。
「この魔力量……シオン、危ない……っ!」
ジェイドの焦った声が聞こえたが、シオンは不敵に笑ってみせた。
「悪いけど、ちょっっっと魔法攻撃も得意なんだよね。いっけぇ、まっしろしろすけ……っ!」
氷魔法をシオンの放つ白い光が包み込んだ。
「なんだと……!? 俺の魔法が、かき消された……っ!?」
何が起こっているか分からず、自分の手のひらを見つめる男の肩を、シオンがポンと叩いた。
「ありがと。ちょっと自信、ついたかも! ってことで、おやすみね!」
「お前、いつの間にそこ……に……っ」
シオンはにっこりと微笑むと、空賊の男の目の前で握っていた小瓶を割った。
「うん、三人ともお疲れ様。なかなか良い動きだったよ。シオンに足りなかったのは、自信と恐怖に打ち勝つ勇気だったようだね。勿論、恐怖は大切な危機管理能力だから、これからも油断は禁物だけどね」
最初に小瓶をぶつける役目をさせたのは、シオンに恐怖を忘れさせ、自信をつけさせる為だったとはいえ、恐怖を克服したシオンの動きは、イオンにとっても想定外だったようだ。
『後方に空いていた穴は塞がった、敵もお前らが倒した奴らで最後だ。よくやったな』
飛空挺内のスピーカーから、戦闘終了を告げるヴォーロの声が聞こえた。
「よっし、制圧完了っ! ヴォーロのところに戻ろっか!」
心なしか、そう言ったシオンの声は弾んでいた。




