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28話 審判の飴

 



「あの時の! 飴をくれた先輩!」


「アンジュだよ〜♪」


 一度見たら忘れようのないボリュームのある長いピンクのツインテールが、アンジュの動きに合わせて可愛らしく跳ねる。いたずらっぽい仕草で飴を舐めると、アンジュはジンガに向かって親しげに手を振った。


「やっほ〜♪ ジンガくん、調子はど〜う? って、見るからにボロボロだね〜。な〜んだ、またハズレだよ〜。アンジュってば、ついてないな〜」


「…………ハズレ?」


 態度もにこやかな表情も変わらないのに、アンジュから感じた不穏な雰囲気に、シオンが後退りをする。


「あちゃ〜。しかも、そっちで寝てる女の子は大ハズレだね〜。ざ〜んねん♪ 適性がなかったんだね〜、可哀想」


「ねぇ、ちょっと待ってよ! ハズレって、何!? フリージアが適性がないって何の事!? まさか、アンジュは二人に何が起こってるのか知ってるの!?」


 唐突にフリージアに視線を向けて、適性がないなどと明らかに何かを知っている素振りを見せるアンジュに、シオンが声を荒らげて問いただす。


「知ってるって何のこと〜? 失敗しちゃった子達のこと〜?」


 大して興味もないといった様子で、アンジュが身体を大きく傾けた。今はその無邪気な笑顔すら、アンジュの不気味さを際立たせている。


「失敗って、何! 二人に何をしたの!?」


 魔力の暴走を起こしたジンガと違って、フリージアはジンガの暴走に巻き込まれただけだ。意図的に暴走させているのだとしても、たった一度街で会っただけのアンジュに何か出来るとは到底思えなかった。


「別に? アンジュはな〜んにもしてないよ?」


「そんなの信じられるわけないでしょ……っ!」


「ん〜、そっちの女の子は知らないけど〜。ジンガくんは(ポッピングキャンディ)をたっくさん食べたんでしょ? 適性がなかったのに食べ続けちゃったら、そんなの、あんなふうになっちゃうに決まってるじゃん♪」


「なんで、そこでただの(ポッピングキャンディ)が……」


 そこまで言いかけて、シオンは気がついた。

 元の世界でも若者をターゲットとした薬物は、お菓子のような可愛らしくてポップなパッケージで売られていたことを。


「ポッピングキャンディは、アンジュが名前をつけたんだよ? だって、『審判(ジャッジメント)の飴(キャンディ)』なんて、全然可愛くないんだもん♪ この飴はね……アンジュ達をどん底から救ってくれる……幸せにしてくれる素敵な飴なんだよ♪」


 そう言って、アンジュはにっこりと微笑むと、口から舐めていた飴を出して、うっとりとした表情で愛おしそうに見つめた。


「……アンジュ、喋りすぎですよ。(ジンガ)が失敗作だったのなら、もう用はありません。さっさと行きますよ」


「あれぇ〜、藍焔(ランシェン)ちゃんどうしたの? アンジュのこと、お迎えに来てくれたの?」


「……違いますよ。貴女が一人で(ジンガ)を連れて帰ってこれるか分からないから、私が駆り出されたんですよ」


 突然、落ち着いた声が聞こえると、アンジュの後ろから藍色の長い髪を後ろで束ねたスーツ姿の青年が現れた。藍焔(ランシェン)の呼ばれた青年の冷たい瞳が眼鏡の奥で鈍く光る。


「もうっ、アンジュだって一人でおつかい出来るもん♪ ……あーぁ、ジンガくんの魔力量ならすっごくパワーアップして強い仲間になってくれると思ってたのにぃ♪」


「仕方ありませんよ。魔力の解放には個人差がありますからね。ほら、さっさと戻りますよ」


「はぁ〜い♪ ってことだから、シオンちゃんだっけ? もっとお話していたいんだけどごめんね〜。アンジュ、もう行かなきゃなんだって!」


「はぁっ!? ねぇっ、ちょっと待ってよ!」


「でもねぇ、アンジュ……、シオンちゃんとはまた会えるような気がするな〜。じゃあ、またね♪」


 引き留めようとするシオンを気にかけもしないで、アンジュは一方的に話したいことだけを話すと、謎だけを残してシオン達へと背を向けた。


「ねぇっ、待ってってばっ! フリージアは大丈夫なの!? ねぇっ、答えてよ! アンジュ……ッ! アンジュってば……っ!」




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