19話 能力適性テストだー!
「…………と、いうわけで防御魔法、飛行魔法は自分の身を守る為にも、無意識でも発動出来るように日々鍛錬すること。まぁ、初めてなのに全員問題なく使えたから皆とっても偉いよ」
エクレール先生の分かりやすい実技の説明に加えて、予習をしていたおかげもあって、シオン達は困ることなく防御魔法と飛行魔法の発動に成功することが出来た。
全員がクリアしたことが嬉しいのか、エクレール先生は嬉しそうに生徒の頭を撫でて褒めてまわっている。
「よし、本日の授業はここまでにしようか。明日は皆が緊張しているだろう個人ごとの個別魔法の試験なわけだけど……」
エクレール先生の言葉に、クラス中がごくりと緊張した表情で教壇を見つめている。
「試験、という名前ではあるけれど、君たちがどんな魔法を使えるのか把握するのが主目的だからね。体力測定みたいなもので、合否がある訳じゃないからもっと気楽に構えていて大丈夫だから、ね」
合否がない、という言葉に一部の生徒達の表情が少しだけ明るくなった。
「なーんだ。じゃあ、どんな魔法使えるのかマンツーマンで先生に見てもらえるってだけで、使い方を教えてもらえちゃったりするのかな!? それならめっちゃ楽しみになってきたかも!」
クラス中に聞こえるくらいシオンの明るい声が響く。
半分はこの異様に重い空気が苦手で、ピエロになろうとしただけだった。けれと、シオンは本心から個別魔法がどんな魔法なのか、相棒を知るようなワクワク感に心は支配されていた。
「あははっ、シオンってば。エクレール先生はかなり緊張を解してくれてるけど、それでも重要な試験なのに楽しむなんて、ほんと素敵だよねぇ」
「……大物になるかもな」
シオンの言葉を皮切りに、いつもの和気あいあいとした空気が戻ってくるのを見ながら、ジェイドは不敵に笑った。
「明日までやれることなんて、最早精神統一くらいしかないんじゃない? ってことで、フリージア、ジェイド。放課後は私達の部屋で精神統一しよっか!」
「女子寮に俺が入ってもいいのか?」
「申請すれば入れるし、遅くなりすぎなければいいんじゃない? あっ!」
「なんか駄目だったか?」
「精神統一と、リラックスとイメージの練習だからね。色々な種類のお菓子を持ち寄ること! 以上、解散!」
的確な練習スケジュールに混ぜこめられたシオンの私欲に肩を落とすと、ジェイドひらひらと後ろ手をうりながら去っていった。
「甘いものは分からないから、俺は紅茶とか飲み物調達してくる」
遊ぶ気満々のシオンに呆れながらも、妙に効率のいいシオンのスケジュールを見て、ジェイドは口に笑みを浮かべた。
「魔法はイメージの強さと心の強さ、それを乱さない強さと乱れをリラックスして受け流す器用さも必要だ。……肌で感じてるだけなのか、物事の捉え方も周りへの良い影響を出しているところも、シオンは大物になりそうだな」
そんなジェイドの評価を知らないシオンは、褒められた人と同一人物であるか疑わしいくらいの純真な笑顔で、真剣にお菓子パーティーに頭を悩ませているようだった。
◇ ◇ ◇
「能力適性テストだー!」
青空の下でシオンの叫び声が響き渡る。
「あはは、シオンはとりあえず叫ぶんだね」
「叫んだって結果は変わらないぞ」
能力適正テストに向けて、エクレール先生から魔法の出力とコントロールのコツを教わっていたシオンが、いよいよ本番だと叫ぶのをジェイドとフリージアが笑いながら眺めていた。
「いや、変わるよ! 魔法って結構、気の持ちようみたいなところあるじゃん! やるぞーって言ってたらなんか魔法の出力が上がる気がする!」
自分だって初めての試験だというのに、冷静に窘めてくるジェイドに、シオンは頬を膨らませて抗議した。
「ふふっ、シオンが言ってるのも意外とその通りかもしれないよ? ほら、心が不安定だと上手くコントロール出来なかったりするもんね」
「「ねー!」」
フリージアに加勢されて調子に乗ったシオンは、仲良く顔を見合わせると、フリージアと両手をぱちんと合わせて言った。
「まぁ、一理あるかもな」
してやったり、と自慢げに胸を張るシオンにつられて、三人が声を上げて笑いあっていると、エクレール先生から号令がかかり、クラスメイト達は不安を胸に列をつくる。
能力適性テストの始まりだ。
「よし。それじゃあ、ジェイドから始めようか」




