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日替わり定食



「実は…。こうなることかもしれなって明菜さんと予想していたんだ」


 デザートを食べ終え、ミルクたっぷりのコーヒーを渡されてほっと息をついている時に、梅本は切り出した。


「こうなる?」


「当事者の先輩の耳に入れるのが最後になるのは正しくないのかもしれないけれど、あっちの様子がだいたいわかって…。同情する気は一ミリもないけれど。同じ状況になったらまあ、逃げだしたくもなるだろうな」


「どういうこと?」


「伝手を使って分かったことなんだけど、不倫相手の女性は『モテる』ことで承認欲求を満たす人もしくは性行為依存症に近い人かもしれない」


「んん?」


「先輩の元夫…。敬称略で滝川って言わせてもらうね。彼と付き合う前も後も多数の男性と肉体関係があったと簡単に調べがついてしまってね」


「二股、三股とか、そういう?」


「残念。七股だった」


「なに、その日替わり定食的な」


「そうだね、日替わり定食…」


 万衣子は頭を抱えた。


「ええ? よくそんな時間とか体力あるね? 若いから? 滝川は気が付かなかったの?」


「うん。子どもが生まれるまでバレなかったみたい」


「なに、その計画殺人的な…というか、詐欺?」


「そう。計画的に押し付けられたことに気が付いたんだよ。三人から」


「もしや、その三人…」


「滝川と顔見知り。同僚とか取引先とかの既婚者であくまでもセフレ。この様子だとおそらく、彼女と関係を持った人は仕事関係かなりいるのではと」


 滝川の子どもが生まれたことを祝う口実で設けられた飲み会の席で酔った一人が口を滑らし、たいそうな騒ぎになったらしい。


 ちなみに残りの三人は元同級生やマッチングアプリで知り合った男性で、中には滝川と同じく何も知らずに真剣交際していた人もいたそうだ。


「えええ…。そうなると赤ちゃんって…」


「先輩でも思うだろ。滝川の親がすぐに離婚調停に乗り出してDNA鑑定させてみたら、結果は親子関係ありで」


 潮目が変わり、再構築となった。


 優位に立った瞬間、妻とその家族は豹変した。


「お詫びのしるしとして妻の実家の向かいの空家を滝川が購入し名義は妻。そして妻の好きなようにリノベーション、そして今の会社を退職して義父の伝手で地元企業へ転職しろと」


「うわ…。奴隷? いや、美人局?」


「ちなみに妻、両親に子ども預けて今もマッチングアプリで男性釣り上げているね」


「なんというか…。不思議でしょうがない…。希美ちゃん三回出産したけれど、そんな時間も気力もなかったよ。体調も良くなかったし」


 義妹の産後の様子を思い浮かべると、考えられない日常だ。


「それで、退職手続きに行ってくる…と、滝川が逃げ出したことまで情報を掴んでいたんだよ」


「逃げ出して、どのくらい経ったのかな」


「先輩のお祖母さんから住所を聞き出した数日後に出奔したみたいだね」


「ああ…そうなんだ…」


「で、その新妻サイドから滝川返せってご両親の所に怒鳴りこみの電話があったらしいよ」


 ここにきて、万衣子をすっ飛ばした報連相ネットワークを知る。


「なぜそれを梅本君が」


「うん、ごめん。事後報告で」


 すまなそうに謝られ、ちょっと胸に沸き上がったもやもやをぶつけてしまったことに後悔した。


「いや、梅本君は巻き込まれただけだよね、ごめん。ぜんぜん関係ないのに」


「関係なくないよ」


「え」


「俺は先輩と友達になったと思っているのだけど、先輩は違う?」


 真正面から、まっすくに。

 曇りなき眼で問われて万衣子は混乱した。


「えええ…、ええと、たしかに、おともだち? かな?」


「うん、ごはんともだちだよね、俺たち」


「うん、そう、ごはんともだち…」


 こくこくと頷く万衣子に、梅本はふっと唇を上げる。


「なら、友だちを心配するの当たり前だよね。万衣子先輩も中学校の頃、友だちがイジられたらすごく怒って食ってかかっていたじゃん」


 そんなことも…あっただろうか。


「うん、そう…だね?」


「だから、今日はうちに泊まりなよ、先輩」


「へ?」


 隕石が頭に降って来たかと思った。




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