表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貞操観念逆転世界で100分の1の出会い(年上女性と年の差恋愛)  作者: くろのわーる
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/76

第13話:あの日の……

 


 澪の手が、軽く私の腕に触れる。


 その指先には、挑戦の意味が込められているように感じられる。


 私は思わず後ずさる。


 だが、そこで踏ん張る自分を意識した。


 ――ここでひるんだら、智也も、私も、全部が揺らぐ。


 深く息を吸い、視線を上げる。


 澪の瞳と正面から向き合う。


 背中を丸めず、肩の力も少しずつ解く。


 私なりの静かな意思表示だ。


「……澪。ちょっと、話を聞いてほしい」


 声を震わせないように気をつけながら、言葉を選ぶ。


「何?」


 澪は一瞬だけ眉をひそめるが、そのまま静かに私を見つめている。


 ――譲れない覚悟を持った年下の瞳の奥に、ほんのわずかな揺らぎが見えた気がした。


「別にあの女を放置してる訳じゃないわ」


「……」


 澪の疑いの視線。


「智也のこと、誤解させてしまったかもしれない。でも、私が全部決めることじゃない。彼の意思もある」


 智也の意思が私の為に、支える為に頑張ってくれてることは言わない。


 彼女に伝えれば、反発するし傷つけることになる。


 澪の手を優しく払うのではなく、その前で静かに立ち、空間を支配するように身を構える。


 少しの沈黙の後、澪の息が少し荒くなる。


 けれど、私の視線を逸らさない。


「……わかった。でも、放っておけないのは変わらないわよ」


 低く、柔らかい声で澪は言う。


 威圧はあるが、少しだけ歩み寄った響きがある。


 私はそれを受け、胸の中で少しほっとする。


 ――完全に主導権を握られたままじゃない。


 私にも、私なりの戦い方がある。


 ふっと肩の力を抜き、軽く微笑む。


 澪の表情に少しだけ驚きが混ざる。


 ――私の強さも、簡単には崩せない、と伝わっただろうか。


「智也のことも、私たちの関係も、ちゃんと自分で守るから。だから、少しだけ信じてほしい」


 言葉を投げるように、けれど静かに。


 澪は黙って私を見つめたまま、少しだけ首を傾げる。


 ――勝ったわけじゃない。ただ、私もここに立っている。


 夜の街灯が、私たち二人の間に静かに影を落とす。


 智也をめぐる戦いは、まだこれからだ。


 けれど、この瞬間だけは、私の意思を伝えられた――それだけで、少し胸が軽くなるのを感じた。


 澪の視線が、私の胸元から目線を細かく上下に走る。


 ――わざと挑発しているのだろうか。


 私の動揺を探るように。


「……本当に、放っておけるの?」


 低く、少し笑みを含ませた声。


 挑戦的で、けれど柔らかい。


 私は一歩前に踏み出し、微かに距離を詰める。


 背筋を伸ばし、視線をそらさない。


 ――この駆け引き、簡単には負けられない。


「何もせず放っておくつもりはないわ。でも、智也の意思も尊重する」


 言葉に力を込める。


 すると澪は、わずかに唇を噛んだ。


 その表情は、不満と苛立ち、そしてわずかな警戒心が混ざっている。


「……なるほど、そう来るのね」


 ゆっくりと首を振る澪。


 その動作だけで、私に対する不服と好奇心の両方を伝えてくる。


「私は私のやり方で智也もその意思も守るわ」


 背筋をまっすぐにして、言葉をさらに重ねた。


 澪は軽く笑いながらも、目を細めて私を睨む。


「……面白いわね、社長」


 低い声。けれどその笑みは、挑発の意味を含んでいる。


 ――私を揺さぶろうとしているのが手に取るようにわかる。


 私は一瞬、息を整える。


 ――負けたくない。智也のためにも、私自身のためにも。


「面白い、じゃなくて私は真剣よ」


 言葉を強めると、澪の表情がわずかに変わる。


 微かな警戒と、理解の混ざった目。


「……何よ、私と同じくらい、強いわね」


 笑みを浮かべつつも、瞳の奥の火花は消えない。


 ――そう、智也をめぐる戦いは、あの時からまだ続いている。


 夜の街灯の下で、私と澪の間に張りつめた空気が漂う。


 屋上で認め合った、あの日と同じ感覚。


 今日は確認。


 互いの存在を意識しながら、互いの心を試し合う。


 彼女は変わらぬ情熱と覚悟を。


 私は信頼と安心を。


 そして私は静かに、だけど確かな意思を胸に刻みなおす。


 ――智也を守る。自分のやり方で。



 そう決めたはずなのに。


 

 どうしてか――


 

 澪の言葉の方が、正しい気がしてしまった。



続きが気になったらブクマお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ