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貞操観念逆転世界で100分の1の出会い(年上女性と年の差恋愛)  作者: くろのわーる


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5話:立花 すず その2



 私はコンビニの駐車場で出会った男性を見て固まっていた。


 私の身長は165cmと自分でも大きいと思っていたが目の前にいる男性は見上げるくらいに大きかった。


 それに衣服の上からでも分かるくらいに物凄い身体の厚み。


 太っているという意味ではなく、トップアスリートを彷彿とさせるような体格。


 何より直視出来ないくらいに格好良い顔。


 今、巷で大人気の男性アイドルがこれからは『もやし』にしか見えなくなるレベルだ。


「お、俺、大好きで憧れていたんです!」


 理想の男性が目の前にいる事態に理解が追いつかず、懸命に頭の中を整理しようと再起動を繰り返していたところにミサイルに匹敵する発言を受ける。


「・・・えっ!?こ、告白?!」


 初めて、生の男性の声を聞いたがこんなにも素敵なの。


 もう少し声が聞きたい…そうじゃなくて私、今告白されたの・・・?


「あっ!?バ、バイクです。それでつい見惚れていました」


「バ、バイクの話だったのね…そ、そうよね…」


 そうだよね、こんな行き遅れで男受けしない私に告白なんてする男性がいるわけがないわよね……。


 バイクになりたいと切実に願う。


「き、今日はツーリングですか?」


 もう会話なんて続けてもらえないと思ってたら、まさかの続行にテンションが上がる。


「は、はい!ツーリングのついでに会社のぶ、部下達がバーベキューを開いてくれて……」


 緊張で上手く舌が回らないが最初で最後かもしれない会話を終わらせてなるものかと頭をフル回転させる。

 

「お、おにーさんもこれから、ど、何処かに行くのですか?」


 仕事でもこんなに頭を使ったことがないくらいに頭を使って出した答えがこれ、自分が情けなくなる。


「じ、自分はキャンプの帰りで……立ち寄ったところです」


 無視されるのも覚悟してたのにちゃんと返してくれるなんてこの人なんて優しいって……!?


「えっ?!ひ、1人でっ?!」


「と、友達がいないわけじゃないですよ!ソロキャンプしてみたくて!」


「えっ!?お、男の子が1人でキャ、キャンプ?!」


 そんな事があり得るのか!?


 普通は男性の外出といえば、周りの家族や親族が鉄壁の守りで囲み込んで、不意にでも近付こうとする女がいれば、命をとられかねないくらい護られているのに……。

 

「へ、変ですかね?」


 ここで私は自分の失態に気付く。


 きっと、彼は勇気を出してソロキャンプを成し遂げたに違いないのに否定的に返してしまったことに。


 テレビで著名な男性評論家が言っていた事を思い出す。


『男性の言うことを否定してはいけません。肯定して共感を得ることが男性とキッカケを作る最初の一歩です』


「ぜ、全然!良いと思います!む、むしろ私もキャンプしてみたいです!」


 私は急いで彼が言ったことを肯定するが時すでに遅し。


 偶然の出会いとはいえ、ものに出来なかったこの機会に心の中で血の涙を流す。


「じゃ、じゃあ、良かったら今度、一緒にキャンプしてみますか?……なんちゃって」


「ぜひっ!!お願いしますっ!!」


 思わず脊髄反射で返事をしてしまったが彼は何て言ったのだろうか?


「じゃあ、連絡先交換しますか?」


「は、はいぃ!!」


 徐ろにスマホを取り出す彼を見て、私もスマホを取り出す。


「(ちょっと待って?今どういう状況なの?)」


「あ、あの俺、『白石しらいし 智也ともや』って言います」


「わ、私は『立花 すず』です」


 私は彼の名前を聞いて、魂に刻み込むように彼の名前を100万回繰り返す。


「今度、連絡しますね」


「ま、待ってます!」


「それじゃあ、ツーリングとバーベキュー楽しんできてください」


「は、はい!ととととともや君も気をつけてね!」


 100万回も繰り返したからか親しみを感じて下の名前を呼んでしまう。


 今度こそ、やってしまったと思ったが彼は特にその事に触れることもなく、バイクに跨がる。


 唖然と隣で佇む私を他所にバイクに跨がる彼は

「それじゃあ」と一言告げて、ヘルメットのシールドを下げると発進する。


 懐かしいエキゾーストノート。姿が見えなくなってもその響きが聴こえなくなるまで私はコンビニの駐車場に立ち尽くした。


「また、リブル買おうかな……」





 コンビニの駐車場でどれくらいの時間を立ち尽くしたのか。


 到着が遅い私を心配した後輩からの電話で我に返る。


 後輩との通話中も正直、フワフワとした感覚が抜けず心配した後輩から、体調が悪いなら今日はやめときますか?と聞かれ、気合いを入れる。


 彼との出会いは夢だったかもしれないけど、後輩達との約束は現実だ。


 「大丈夫、今から向かう」と返事をして、メッセージアプリの友達リストを見る。


 そこにはしっかりと『白石 智也』と入っていた。


 夢じゃない。


 どうしてこうなったのか未だによくわからないが、熱に浮かされた私はアクセルを全開にフルスロットルで後輩達の元に向かうのであった。


 無事に後輩達と合流すると準備は整っており、後は食べるだけとなっていた。


 私の慰労会とあってちょっとだけ豪華なチェアーに座らされ、後輩がお肉を持ってくる。


「社長!最高に気が利く後輩がどんどんお肉を持ってくるので!じゃんじゃん食べてください!」


 後輩に生返事を返しつつ、私は途中からよく覚えていない彼との会話を思い出していた。


 確か私がキャンプしてみたいって言って、彼は今度一緒にキャンプしましょうって……。


「えっ!?えぇ〜〜っ!?」


 私の奇声に後輩達がギョッしながら集まってくる。


「しゃ社長!?まさかお肉焼けてなかったですか?」


「ち、違うの!?ちゃんとお肉は美味しく焼けてるわよ。た、ただ私事を思い出してちょっと声を上げちゃってごめんなさいね」


「ならいいですけど、無理しないでくださいね」


「そうですよ!社長は溜め込みやすい性格なんですから!」


「う、うん」


 一緒にキャンプって泊まりってことよね?!それって実質、けけ、け、結婚なんじゃ!?同じテントで寝泊まりなんてもう!それって!お、おせっせ……。


 妄想した途端、全身の血が沸騰し、顔が真っ赤に染まるのがわかった。


「しゃ、社長!顔が真っ赤ですよ!?」


 私を心配する後輩の声は最早、聞こえていなかった。


バタンッ!


「「「しゃ、社長っ!!」」」



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