ひとことの重み
翌日。
「デストロイ様、惑星034より使者が参りました」
「入れ」
「(……)」
ギィッ
珍獣に引き連れられて、武装したモグラさん(一匹)がスン、スンと入ってきた。顔がスンスンしてるのではない。歩き方がなんかスンスンしているのだ。いい意味でエラそうじゃない。威厳はあるけど謙虚そう、みたいな。
……
で、ここはロイの間でありまして、私は椅子にスンと座っている(こっちは表情のスン)親玉の横で片膝をついて待機しています。ちなみにモグさんを連れてきた珍獣はすぐに帰ってしまったので今この空間には二人と一匹のみ。……え、なんで?なんでもっとギャラリーいないの?
「デストロイ様、ご機嫌麗しゅ」
「用件はなんだ」
だからキミは最後まで話を聞きなさいって。
「では、申し上げます。宇宙海賊――ギャラクシー・パイレーツが、デストロ星を狙っているかもしれません」
「(!)」
「ほう」
また新しいの出てきたー!なになに、宇宙海賊?海賊ってことは悪……とは限らないか。最近はワ◯ピースとかゴーカ◯ジャーみたいに主役になることも多いもんね。
「根拠は」
「我々は多くの星に家財道具を輸出しております。一昨日から昨日にかけて、その幾つかの取引先で同じ質問をされたのです。“034はデストロ星とも取引を行なっているのか?”と」
「……」
「こちらとの取引を秘密裏に行うことは全員の共有事項なので誰一人喋りませんでしたが、多くの星を利用して標的を狙うのはギャラクシー・パイレーツの常套手段です。念のため、ご報告しておきたく」
「貴様らも共謀しているかもしれないな」
「(!)」
「……」
ちょちょちょ、デストロイさーん!それはヒドイんじゃ……いや、でも可能性はゼロではないか。それにロイの立場になってみれば疑うのも無理はない。だって一回ガチで命狙われたもんね。
「……我々が嘘を言っているとお思いですか」
「(あ)」
ずっと冷静だったモグさんの空気がちょっと変わった。少し怒ってるみたいな、そんな声だ。……モグさんが嘘をついてないとしたら、こんなふうに言われるのは心外だ。わざわざ教えに来たのに、ふざけんなって思うだろう。でもロイの対応もいたしかたない……
“それでもやるんだ。届かないからやらない、そんなんじゃダメだろ?どっちかが始めなくちゃ何も変わらない。だから、俺たちからやろうぜっ”
……。
「……デストロイ様、匂いますか?」
「……?」
「今この者以外に、よそ者の匂いしますか?」
「……」
「しない、ですか?」
「……」
「しないですね、しないそうです!」
「!、はあ……」
モグさんのつぶらな瞳がパチパチと瞬く。ああ、可愛い……とか思ってる場合じゃない。証拠が出たところで、ガンガン説得しなければ!
「デストロイ様、いったん信じましょう!だってあの方、一匹……一人でいらっしゃったんでしょう?それは敵意は無いって証明したいからじゃないですか?いや万が一、万が一それすら罠だったとしても、あ〜、例えばあのお方が捨て駒で、ウチの信頼を得る為だけに殺されること前提で送りこまれた者だったとしても、まあその時はその時です、私が巨大ロボに乗って砂の星ブッ壊します。だから、まずは一回信じましょ!ほら、どっちかが信じないとお互い一生信じないじゃないですか。信じるって結構お得ですよ、たまに絆が生まれますから。え、それがなんの役に立つかって?まれに不可能が可能になります、現実的に無理なことでも絆で予想外の展開を迎えたり。それに比べて疑うのはメリットが少ない。損しなくて済んだ、それくらいです。ね、つまんなくないですか?信じた方が面白くないですか!?」
「……」
「面白い方がよくないですか!?」
沈黙が恐かったので食い下がってみた。蛇足だったかな。でもスイマセン、これが私の器です。
……
「考えておく」
「え。……ああ、ハイ!是非とも!ねっ、使者のお方!」
「!あ、はい……」
「下がれ」
「失礼いたします……」
ピタ
ふと、立ち上がるために腰を上げかけたモグさんの動きが止まった。どうした、どうした。まだ何かある??
「あの、」
「え?……あ、私?」
「はい。友好条約を掛け合って下さったのは貴方ですか?」
「!あ、ハイ」
「そうですか……。ありがとうございました」
「イエ……」
「失礼いたします」
モグさんはそう言いながら丁寧に頭を下げると、来た時と同じようにまたスンスンと出て行った。
パタン……
……
ということで、部屋には私とロイの二人だけになった。
「……」
「……」
「……」
「デストロイ様、なにかお手伝いすることありますか?」
なにこれ。バイト始めたばっかの何すればいいか分からないソワソワ感……。ヤダよー、教えるか仕事与えるかしてよ。こちとら何も分からないんだよ。放置しないで指示しておくれ。
「持ち場に戻れ」
「承知しました」
ふう、よかった。これで気まずい空気から解放され……ってダメダメダメ!逃げちゃダメだ×3!二人きりなんてチャンスじゃん、なんか話しといた方がいい。えーと、なんだろ、まず早急にモグさんたちとは闘わないように……あ、でも今はこれ以上いわない方がいっか。さっきガーって喋ったし、一応考えておくって言ってくれたし。じゃあ〜アレだ、巨大ロボだ。現状ロイがどう思ってるか分かんないから、まずは自然な流れで聞き出して、それから地球に行くのをやめてもら
「なんだ」
「え?いや、」
「言え」
ジッ
えー……なんでだよ。なんで今日に限ってそんな真っ直ぐ見てくるんだよ。なんか言わないとダメそうじゃん。かつ、うまく誤魔化すの無理そうじゃん。
「……デストロイ様が“戦わない”って思うにはどうすればいいかなって考えてました」
「なぜだ」
「ハイ?」
「なぜそうさせたい」
「え。……戦ったら、誰かが傷ついたり死んじゃったりするじゃないですか。そうゆうの嫌なんです。なんで嫌かっていうと自分がそうされたくないから。自分がされて嫌なことは他の人にもしたくない。で、前にも言いましたけどデストロイ様にもして欲しくないんです。私のワガママかもしれないけど……とにかく嫌なんです。体がキョヒるので。だから全力で戦うことを阻止したいんです」
あ、なんかアタルくんと赤星くんが言ってたことパクってるな。自然にパクってる。まあでも、それが誰かと交流するってことだよな。
「なら消えるな」
「え?」
「持ち場に戻れ」
「え、あ、はい」
ザッ
ロイは無表情でそう言うと、これにて終了という感じで大股で部屋の奥に去って行った。
「……」
……なら、って何に掛かってたんだ?
「いよっ!やっぱ還ってきたな伝説の女!!」
「久しぶウィ」
「デモンさん!カッシー先輩!!」
科学班の部屋に向かって歩いていると前から懐かしの顔×2がやって来た。あ、デモンさんはそうでもないか。色々あったからすごい久しぶりの感じするけど一緒にキツネ星行ったもんな。でもカッシーはマジで久々だ。最後に会ったのはモグラ・イグアナ星だもんね。
「いや〜お前なら絶対生きてると思ったから、俺そっちに賭けたんだぜぇ?」
「俺もウィ〜」
「……」
なんかマブダチヅラしてくるけど、だったらそもそも賭けないでくれる?
「あ、ってゆうか二人って仲良いんですね?一緒にいるとこ初めて見ました」
「「……」」
「え。なんで黙ってるんですか?」
あれ、もしかしてマズイこと聞いちゃった?実は犬猿の仲とか。
「(ヒソヒソ声)……ここだけの話、実は俺たち、デストロイ様の命令で102に偵察に行ったんだ」
「え」
「おウィ!おまえ会ったヤツ全員に漏らしてるウィ!!」
「(やっぱりな)」
ダメだけど、なんか相変わらずのデモンさんでちょっと癒される。……で、102だって?キツネ星に行ってたってこと?
「あれ、でも宇宙警察と繋がってることはハッキリしましたよね?じゃあもう調べることなんて無いんじゃ」
「(ヒソヒソ声)ギャラクシー・パイレーツだよ」
「!」
「おまウィ!」
「(ヒソヒソ声)大丈夫ですよカッシーさん、こいつはデストロイ様のソッキンみたいなもんじゃないスか!なあ?」
「いや盾です」
「(ヒソヒソ声)おお!どんな時も側にいて体張って守るってか?くぅ、愛だねぇ」
「いやガチの業務です。ってかもう小声で喋る意味なくないですか?」
なにこの不毛な会話。こちとら宇宙海賊の話が聞きたいんだよ。
「あの、で、そのパイレーツが102と何かあるんですか?」
「(ヒソヒソ声)ああ……実は……」
「(早く言えよ)」
「(ヒソヒソ声)102の王とギャラクシー・パイレーツが手ぇ組んでるって話さ」
「ええっ!」
「バッ!おまっ、声デケェよォォォ!!」
「スイマセン。でも先輩もッス」
キツネ王とパイレーツが!
「あ、待ってください、でもまだグレーな感じですか?噂だけで確定はしてないみたいな」
「いや、ガッチリ繋がってたウィ」
「え」
「俺が秘書から聞き出したウィ」
「じゃあ間違いないですね……」
カッシーのあの技を使って聞き出したのなら真実だろう。うわあ、マジでスネ王だな。警察とも海賊とも繋がってるなんて。そうゆう奴が一番厄介だよね。表立った悪党より澄まし顔でコソコソしてる八方美人の方が……
「あ。あのそれって、もうデストロイ様はご存じで?」
「おう!一昨日のうちにササッと潜りこんでチャチャッと聞き出してご報告済みよ!」
「お前なんもしてなウィけどな」
「いやいや!カッシーさんをご案内したじゃないッスか!そのための俺じゃないッスか!なあ!?」
「いや私にフラれても。え、あの、ってことはデストロイ様は一昨日からなんか怪しいなって思ってたってことですか?」
「(超ヒソヒソ声)……まあ、初めてのミスだったからなあ」
「(超ヒソヒソ声)宇宙に噂が広がるのはあっという間ウィ……」
「!」
そうなのか……ロイがミスしたってことには驚いたけど、それって、その事実って相当マズイものなんだ。ロイはそれを知っててその日のうちにキツネ星に調査に行かせた……。
じゃあ、今日のモグさんの話も本当はもともと知ってて、
“考えておく”
……。
ズゥゥゥゥンッ!!
「!?」
「な、なんだ!?」
突然、建物が大きく横に揺れた。地震……?じゃない。下からじゃなくて、もっと別のとこから乱暴に動かされたような、
「!、あれウィ!!」
「え」
クルッ
わけもわらず、カッシーが指す窓の外に顔を向ける。
「あれは……」
ゴォォォォッ
見ると、帆を張った大きな黒い船が、アジトの端に突っ込んでいた。




