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悪役と一緒。  作者: 道野ハル
なんだかんだで3クール目!
29/32

小説は事実より奇なり

 


 パァァァッ

 

 パッ

 

 

「お、できた」

「ですね」

 

 神々の遊びで地球署に飛ばされてから5日目の朝、試しに牢屋の中から牢屋の外にパァァしてみたら普通に出来た。うん、OK。どうやら通常運転に戻ったみたいだ。ちなみに、今ここには私とアタルくんしかいない。だってまだAM3:00だもの。朝っていっても夜だもの。え、なんでそんな時間にこんなことしてるのかって?それは静かに帰りたいからです。誰にも見られず、密かに帰還したいからです(めっちゃ普通の理由ですみません)。

 

 だがしかし、私は帰る前に重大な任務を果たさなくてはいけない。そう、デストロ星に付いて来てくれると言ったアタルくんの申し出を、やわらかくお断りしなければならないのだ。

 

「……アタルくん、やっぱり私、一人で帰るわ」

「……」

「いや最初はどんなテンションで帰ればいいか分かんないって思ったけど、気まずくなったらパァァァすればいいし、それにアタルくんが付いて来てくれてもロイがノーリアクションって可能性も大だから、そうすると私が申し訳なさでいたたまれなくなるからさ」

 

 

 ……

 

 

「わかりました」

「……うん」

「もし必要になった時は気軽に言ってください」

「……ありがとう」

「いえ」



 にこっ



 あ、久々の爽やかスマイルだ。……出会った頃はこの笑顔に癒されてたけど、今は心配になってしまう。なにか隠してないか、無理してるんじゃないかって。


 でも、



“山本さんは、秘密っていけないことだと思いますか?俺は、それも選択肢の一つだと思います。だから大したことじゃないんです”



 ……。

 

「アタルくんは、大丈夫?」

「え?」

「ほら……私のこと助けるために色々やってくれたでしょ?もしばれたりしたら、」

「……」

「……いや、それはそれとして。あの……」


 駄目だ。自己満足のために喋るな。アタルくんがそうしてくれたみたいに、私もアタルくんのために喋るんだ。


「もうとにかく、なんかたくさん、ありがとう」

「今生の別れみたいですね」

「確かにっ、縁起悪いわ」

「ええ」

「じゃ、またスグに」

「はい」

「じゃね!」

 

 

  くるっ

  


 アタルくんに背を向ける。これでいいかは分からないけど、これでいいとも思う。……秘密はいけない事じゃない。なんでも言い合えないのは恥じゃない。だって私はアタルくんが大好きで、幸せになって欲しいって思ってる。


「山本さん、」

「!」

「集中してください」

「あ、バレた?」

「バレバレです」



 すっ……



 そんなことまで言わせちゃって情けないなぁと思いつつ目を閉じる。……さあ、集中しなければ。まっすぐ、あそこに帰るために。


「……」


 青い瞳、褐色の手、あのとき開きかけて閉じた口……ロイは、何を言おうとしたんだろう?姿が見えなくなっても死ぬまで味方でいますって言って、そのあと確実に口が動いたんだけど

 

 

 パァァァッ

 


 あ、待って。私アジトじゃなくてロイのこと考えちゃってる?ヤバくない?これじゃまたキツネ星から戻った時みたいに……



 カッ




 

 

 ぼすんっ

  

  

「……」

「……」

 

 目の前にはコバルトブルー。お尻の下には骨ばった太もも。あーやっちまった。

 


 ズザァァァァッ



「二度も失礼しましたぁぁぁ!!」

「……」


 すかさずロイの足の上から床へダイブする(もちろん即土下座)。摩擦で膝こすって地味に痛い。でもそんなんどーでもいい。今のこの状況のが100倍イタイ。

 

「あ、のー……すみません、ちょっと色々あって持ち場を離れていたのですがサボってたんじゃなくて、自分の力ではどうにも出来ない状況におりまして、でもその大変な期間も終わったので今こうして帰還いたしました」

「……」

「あ、期間と帰還ってダジャレじゃないですよ」

 

 あーどうしよ、もう何していいか分からない。……だって、よくよく考えればロイが成り済まし脅迫文を読んでない可能性もあるよね?“あ、迷惑メールか、無視しよ”みたいな。するとだよ、私はただの無断欠勤……しかも四日間も。バイトだったらクビじゃない?ラスボス・デストロイ様だったら……ザシュリか。ザシュリ百連発か。じゃパターンAだ、すぐにパァァしよう。いったん地球に戻ってほとぼりが冷めるのを待って(冷めるか分かんないけど)、

 

 

 コツ、コツ、コツ

 

 ぺたっ

 

 

「へ?」

「……」

 

 うん?ロイが、私のほっぺを触っている。……なんで?

 

 

 ぺたっ、ぺたっ

 

 ぺたぺた

 

 

 首、肩、腕……無表情で、身体検査でもするみたいに淡々と私のボディを触っていく。え、なにこれ、セクハラ??

 

 

 ピタッ

 

 

「……そうか」

「??」

「死なないのだったな」

 

 

 くるっ

 

 コツ、コツ、コツ

 

 

「持ち場に戻れ」

「え?あ、ハイ」


 言い捨てながら、親玉は部屋の奥に消えて行った。



 ……



「……行くか」


 とりあえず、仕事場に行こう。





 ひゅぅぅぅぅ


 ざわっ



「!おい、あいつっ」

「うわっ!!マジか」

「負けたー!」

「(……)」


 科学班の部屋に向かって歩いていると、珍獣たちにものすごい目で見られた。前回の不良が学校に戻ってきたようなザワザワ感とは違う。なんてゆうか、あの時は遠くでヒソヒソしてるだけだったけど今回はエグるように私を見てくる。あと負けた、とかマジかよ、とか聞こえてくる。なにこれ。どうゆうこと?



 ……スタ



 と、思いながら進んでいたら、目的地に着いた。



 コンコン



「失礼します」



 ガチャッ



「!!、アケミ殿!」

「「「「「!!」」」」」

「あ、すみません、お久しぶりです」


 わ〜、数日ぶりのモフモフ・アクロス班長だ。ビックリしてお目目を丸くしてるけど、その姿がフツーに可愛い(いやビックリさせちゃって申し訳ないけど)。


「マジかよ!」

「クソッ、負けた!」

「減らしときゃよかった!!」

「(……)」


 癒しのドーベルマンの後ろで研究員たちがこれまた私を見て騒いでいる。なんなのなんなの?ってか減らすってなに??


「よく生還したな、さすがアケミ殿だ」

「え」


 生還?あれ、ってことはもしかして、


「あの、私ってポリスメンズに捕まったことになってました?」

「え?」


 違うの?というように班長の目がまた丸くなる。お、お、じゃアレか?私は無断欠勤じゃなくて、ちゃんとやむを得ない事情でお休みになってたのか?


「えっとー、なんか脅迫状みたいなのが送られてきました?」

「ああ、ポリスメンズからのだろう?」

「!、いや実はそれ成り済ましでポリスメンズは関係ないんですけど」

「え?」

「「「「「ええ!?」」」」」



 どよどよっ!



「ちょ、おま、それマジか!?」

「え?あ、ハイ」

「じゃあつまり、ポリスメンズはお前を殺そうとしてないのか!?」

「はい」

「「「「「っしゃァァァァ!!」」」」」

「は?」


 さっきまで人の顔見て負けたのなんだの言ってた奴らが今度は狂喜乱舞してる。だからなんなん?どうゆう状況?


「班長!これは無効ッスね!」

「無しッスね、無し!」

「……ああ、そうだな」

「ああ、良かった!」

「マジで寿命縮んだわ〜」

「……あの〜、皆さん、さっきから何のお話をされてるんです?」

「賭けだよ、賭け!」

「賭け?」

「お前がポリスメンズに殺されるか、生きて帰ってくるかの賭け!」

「!」


 うおーい!ホントにクズやろう共だな!!人の生死に金賭けるなんて!!ああ、やっぱここは悪の組織だ。忘れかけてたけどヤバイ場所だ。って、うん?ちょっと待って。


「アクロス班長も賭けてました?」

「はははっ、私はアケミ殿が生きている方に賭けていたよ?」

「……」


 そんな爽やかに笑われても……やってること最悪だかんな。


「あ、じゃあそのメッセージってやっぱりデストロイ様も見てます?」

「もちろん、オペレータールームで傍受されたメッセージは全てデストロイ様に転送されることになっている」

「……じゃあ、デストロイ様はメッセージを確実に読んでいると」

「ああ」

「……」

「!、デストロイ様もアケミ殿は必ず戻ると信じていたのだろう。だから、巨大ロボを発進させなかった。そうゆうことだ」

「はい」


 分かってた。いや、想像はしていた。でも改めてその現実を突きつけられると、なんか心が萎んでしまう。ああクソッ、傷付くなよ、いい歳だろ。


「いや……違う、か」

「え?」


 明らかに私に気を遣っていた班長が、ふと思いつめたような顔で言った。……違うって?班長は周りの研究員たちをさりげなく仕事に戻させると、私を目で促して部屋の隅に移動した。




 ……スタ



「……あの通信を傍受した後のことを、なるべく客観的に話そう」

「!、はい」


 そう言うと、班長は記憶の糸をたぐるように、私から目線を外してどこでもない場所を見た。


「5日前、オペレーションルームが通信を傍受した。通信はデストロイ様の元へ転送され、デストロイ様はすぐに、それを無視するとの見解を示した」

「……」

「そしてその通信内容とデストロイ様の判断は瞬く間に館内に広がり、アケミ殿がポリスメンズに殺されるかどうかの賭けが始まった」

「(その話はどうでもいい)」

「賭けに参加する人数は増えるに増え、始まって一時間で200人を越えた」

「(だから、それはどうでもいい)」

「そして通信を傍受してから2日後――アケミ殿が処刑されると言われていた日は、何事も無く終わった。賭けの行末……アケミ殿が生きているかどうか、我々は知ることができなかった。デストロイ様は惑星017に対して、何も行動を起こさなかったからな」

「……」

「しかし3日後。つまり昨日、デストロイ様が初めて弾薬の計算を間違えた」

「え?」


 弾薬?ロイ?ちょ、賭けの話からいきなりどうした??流れが全く分からない……いろいろ突っ込みたいけど班長は思いつめたような顔をしている。うーん、もうちょっと黙ってるか。


「その弾薬は惑星除去装置の要になる部分だった。ゆえに装置は作動せず、標的だった惑星077を破壊することが出来なかった」

「!、失敗したってことですか」

「うむ」

「……」

「デストロイ様のミスを受け、一部ではこんな憶測が流れた。“アケミが死んだからではないか?”」

「え?」

「そこでアケミ殿の“死”票が一気に伸びた」

「もう賭けの話いらないです」

「あ、そうかい?」

「ハイ、ややこしいんで」

「うむ。……で、私も同意見だ」

「ややこしいって?」

「そっちじゃない。アケミ殿の生死がデストロイ様の仕事に影響を与えたことに、だ」

「……それはー、ちょっと妄想が過ぎるんじゃないでしょうか」

「……なぜだい?」

「なぜって……いや、だってそもそも通信無視したワケですよね?その時点でどうでもイイ奴じゃないですか。あ、むしろ殺してくれるなら殺してみたいな?私ぜんぜん死なないし。まあ、どうご判断されたかは分からないですけど、どっちみちどうでもイイ奴or死んで欲しい奴ですよ。ねえ班長、想像じゃなくて事実を見てくださいよ、そうゆうことじゃないですか」

「事実より想像の方が真実だということもあるんじゃないかね」

「は」



 じっ



 いつもは可愛いビー玉みたいなお目目が静かにこちらを見据える。……怒ってるわけじゃない。でもいつもと違うから、なんか恐い。


「無視すると判断したが、あとでそのことを後悔した。そうゆうこともあるんじゃないか?」

「……後悔って」

「居なくなってから心が傷んで、その大きさに気がついた」

「いや、」

「ありきたりな言葉だが、ありきたりという事は多くの者がそう感じる証拠でもあると私は思うよ」


 ……いやいや、そんな失恋ソングみたいな。私はそうゆうドラマチックなところにいる人間じゃないし(まあこんな世界に飛ばされてラスボス&ヒーローと関わってるのは超絶ドラマチックだけど)ましてや、あのロイだ。そんなん絶対ありえない。


「……アケミくん、デストロイ様にも心はあると思うよ」

「!」

「私がそう感じるようになったのは、君とデストロイ様を見ていてなのだが」

「……」

「……まあ、推察が当たっているかどうかはご本人でなければ分からない。ただ、あの判断だけで自分を不必要な物だと思うのは早計なんじゃないかな。……さあ、仕事に戻ってもらおうか。まだまだ書類は山ほどあるぞ」

「いや、山どころじゃないですよ」



 なるべくいつもみたいに突っ込んで、腕まくりして仕事を始めた。……ショックだった。ロイが私のことをどう思ってるかとかそんなことよりも、自分が、他の誰でもない自分がロイを一人の人間として見ていなかったことが、情けなくて、恥ずかしかった。



“ 色んなものがあるんだって、そのどれも本当なんだって、そうゆうことを知って、あの人にはどこに行きたいか考えて欲しい”



 赤星くんたちに熱弁ふるっといて、このザマだ。ああ、カッコ悪い。




 ひゅぅぅぅ



「あ」

「……」


 とりあえず今日の仕事を終えフラフラと廊下を歩いていると、向こうからロイがやって来るのが見えた。あっちもこっちに気付いているみたいだ。



 コツ、コツ、コツ



「お疲れ様です!デストロイ様!」

「……」



 スッ



 うん。普通にスルーされた。逆に安心だ、無視されるのは元気な証拠……


「明日、」

「え?」


 低い声に目を向けると、離れた所でロイが後ろ姿のまま止まっていた。ど、どうした?


「034の使者がくる」

「034……あ!モグラ•イグアナ星の?」

「盾になれ」

「(シカトか。)畏まりました!」



 コツ……



「いいか」

「え?……ああ、ハイ!もちろん、もちろん!お任せください!」



 コツ、コツ、コツ



 私が答えると、親玉は今度こそ本当に去って行った。


「……いいか、って。なにそれ」




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