表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役と一緒。  作者: 道野ハル
なんだかんだで3クール目!
25/32

外気圏で待機



 20分後。



「と、いうことなんです」

「……」


 いつものごとく、アタルくんにこれまでのあらすじ(キツネ星でポリスメンズと別れてから現在に至るまで)をお伝えした。ロイにカミングアウトした事や卵たちとのやり取りも全部だ。


 ちなみに今この場所には私しか収容されていないらしく、これらの会話はさっきアタルくんがセキュリティーシステムを操作したので外部に漏れることは無いのだとか。……コズミックヴェールといい今回の件といい、私のせいでアタルくんのスパイ度がどんどん上がってる気がする。ああ、申し訳ない。


「……神たちは、どうゆう展開を期待しているんですかね」

「え?」


 腕を組んで考え込んでいたアタルくんが、自問自答するようにポツリと言った。え、どうゆうこと?


「通信どおりにデストロイが地球にやって来れば、俺たちと戦うことになる。でもそれって、神たちが嫌っている“ありきたりな話”じゃないですか?」

「!、たしかに……」

「神たちは、俺たちの心境に影響を与えたいだけなのかもしれません」

「……」


 なるほど。そう考えると、この雑な展開にも納得できる。私もちょっと変だと思ってた。あれだけ世の物語に飽き飽きしていた卵たちが、なんで誘拐なんていうテンプレ中のテンプレをぶち込んでくるのかなって。……まあ悪役の部下が誘拐されるっていうのは、あんまりないけど。


「山本さん、デストロイはこの通信をどう受け取ると思いますか?」

「そうだな……」


 さっきの無線から聞こえた脅迫的な内容……あれを聞いてロイがどう思うか。


「なんも思わないな」

「え」

「普通にスルーだと思う。私にそこまでの価値はない、断言します」


 あ、自分で言って悲しくなってきた。


「あっ、でももしかしたら“俺をバカにしやがって”的な精神で地球に無差別攻撃してくるかも……ヤバイね、そうなったらヤバイね!!」

「ええ」

「や、帰るわ!悪いけど縄ほどいてもらっていい!?とりあえずアジトにパァァしてロイに弁解……ってパァァできないんだったぁぁ!!」

「落ち着いてください山本さん」



 コン、コン



「アタル、ちょっといい?」

「「!」」


 居ても立ってもいられない状況に体をウネウネさせていると、ふいに外から赤星くんの声がした。アタルくんはこちらに静止の合図をすると扉に向かい、速やかにタッチパネルを操作してドアノブに手をかけた。



 ガチャッ……



「どうしたの、ユウジ」

「うん……あいつ、なんか喋った?」

「詳しい事はまだ分からないけど、状況を聞く限り、やっぱり誰かに利用されてるみたいだ」

「そうか……」

「ユウジ?」

「アタル、」

「うん?」

「あいつを、デストロイの所に返そう!」

「(!)」

「……どうして?」

「さっきアタルに言われて思ったんだ。敵だって心のある生き物だ。だから、自分がされて嫌なことや恐いことはしたくない」

「……」

「事情を説明して、あいつを返そう」

「向こうはこっちの話を聞き入れないんじゃないかな」

「それでもやるんだ。届かないからやらない、そんなんじゃダメだろ?どっちかが始めなくちゃ何も変わらない。だから、俺たちからやろうぜっ」

「……」

「……」


 ああ、やっぱり赤星くんってすごいなあ。綺麗事じゃなく、しっかり現実を捉えているから、血の通った言葉としてこっちに伝わってくる。



 スッ



「今回ばかりは、バカの意見に賛成だ」

「……」

「!!、マブダチッ」

「お前とマブダチになった覚えはない」

「ええーっ、そろそろよくないっ!?」

「だが、一つ大きな問題がある」

「無視かよっ」

「デストロ星は漂流型だ。常に移動している。向こうから地球に来ることはできても、俺たちが奴らの星に行くことはできない」

「あ゛」

「(え?)」


 なにそれ?そうなの!?


「そうだね。今回の通信がデストロ星に届いたのは奇跡みたいなものだ。あの惑星の移動速度は相当早いから、数秒でも遅れたらメッセージは受信されなかっただろう」

「(……)」


 アタルくんが私にも分かるようにさり気なく解説チックに喋ってくれた。はあ、ホント出来た子だな……。って感心してる場合じゃない。なにそれ、初耳なんですけど。地球署の存在といいアジトの話といい、3クール目にして初出の情報多すぎじゃない?


「だーっ!じゃ、どうすればいいんだ!?銀河パトロール総動員でデストロ星を探すしか……」

「外気圏で待機するのはどうだろう」

「「!、外気圏で?」」


 うおう、なんかいきなりSFチックになってきたぞ。なに外気圏って?地球の外のこと??


「幸か不幸か、いま地球の周りには厳戒態勢が敷かれている――すぐに全隊に事情を説明して配置を外気圏に変えてもらうんだ。そして俺たちは彼女と共にコスモマシーンに乗り込み、地球署上空に待機する。そうすればデストロイに直ぐに気づけるし、地球内ではなく外で対応ができる」

「なるほど!!」

「それしかないな」

「よっしゃ、俺すぐに連絡いれてくるわ!」

「俺は長官に報告する」

「よろしく」



 ダッ!


 ……スッ、ピピッ、ピピピ



 二人の背中を見送ると、アタルくんは慣れた手つきで再びセキュリティシステムを操作した。……もう大丈夫だよね?ここからは山本朱美でOKだよね?


「……あのさ、」

「はい」


 ちょっと言いにくい。でも、このモヤモヤを一人で溜めこんでいたくない。


「これ、なんも起こらなかったらメチャクチャ気まずいよね」

「……」


 あ、黙っちゃった。やっぱりアタルくんも少なからずそう思ってた!?


「いや、もちろん平和が一番だから何も起こらないに越した事はないんだけど、なんも無かったら5日目にどうゆうテンションで帰ればいいかなって」

「俺を一緒に連れて行ってくれませんか」

「え?」


 見返すと、漆黒の瞳に見つめ返された。……連れて行くって、どうゆうこと?


「山本さんのテレポーテーションは、触れた者も一緒に移動させることができますよね。それで俺をデストロ星に連れて行ってください」

「……それで、どうするの?」

「デストロイに直接、山本さんをお返しします」


 そう言うと、アタルくんは小さく笑った。


「ユウジとリュウも居た方が自然だと思いますが、今回は二人がいない方が動きやすいのでそうさせて下さい」

「……」



 ……



 きっと、またアタルくんは全部を言ってくれたわけじゃなくて、どこかに何かを隠してる。それは寂しいし、ちょっとだけ悲しい。


 でも一つ、絶対に確かなことがある。アタルくんはどんな時でも、誰かのために動いている。


「アタルくん、」

「はい」

「ありがとう。いつも」

「……」



 フッ……



 私がお礼を言うと、アタルくんは目を逸らして笑った。





 二時間後。



 地球署上空――外気圏。



「さあ、デストロイ!どっからでもかかって来やがれ!」

「違うだろ」

「あ、そうだった!ついっ」

「ユウジ、落ち着いて」

「(……)」


 と、いうことで私はポリスメンズと一緒に巨大ロボ……コスモマシーンのコックピットに乗って外気圏で待機することになった。ちなみに前方の運転席にいる赤星くんたちは変身前の警察服姿だ。自分たちに敵意は無いことを示すために通常モードでいてくれているらしい。


 そんな彼らは私のロープも早々に解いてくれた。なので今は晴れて自由の身なのだけれど、このド〇ンジョの恰好でどう後部座席に座っててイイのか分からず、逆に困っているのであった。


「えっと、アレだよな、とにかく色んな方向に通信飛ばせばいいんだよな!?」

「そう。どこで受信されるか分からないから、多方面に送り続けて」

「内容はどうするんだ?」

「あ~っ、俺たちに闘う気はないって伝えなきゃだから……“寒中お見舞い申し上げます。寒さが続きますがお元気ですか?”」

「「違うだろ」」

「な、二人で言わなくてもいいだろ!?」

「二人で言いたくなるほど的外れってことだ」

「なっ!……マトハズレってなんだっけ?」

「「「(……)」」」


 結局アタルくんが文章を考えることになり、今回の(たわむ)れパートは終了した。あれだな、こうゆうのってテレビの前では楽しめるけど、その場に居るとどんな顔してれば良いのか分からないから厄介だな。


「……出来た。ユウジ、これを送って」

「りょーかいっ!」



 カタ、カタカタカタッ……



“デストロイ、お前の部下・アケミはコスモマシーン内で保護している。こちらに敵意はない。いつでも引き渡す。時間と場所の指定を頼む。返信されたし。ポリスメンズ”



「送信っと……でも、なんかこれカタくない?ちょっと裏ありそうな気もするし……」

「この文面だけで信じてもらおうなんて思ってないよ」

「へ?」

「そんなに簡単なものじゃないだろ?だから、引っ掛かってくれればいい。まずは向こうに近付いて来てもらわないと」

「(……)」


 確かに。友好的過ぎると逆に怪しいし、上から目線でも響かない……このどっちなの?って感じの方が、ロイは引っ掛かるかもしれない。勿論なんも思わない可能性も大だけど。



 くるっ



「アケミ。お前はデストロイのどこに惹かれてるんだ?」

「へ?」


 三人の様子を眺めていたら斜め前のリュウくんがくるりと振り返った。え、ちょ、不意打ち過ぎるんですけど……!


「……ホホッ、何を言い出すかと思ったら。もちろん、あの強さよ。そして非常な冷徹さ。敵・味方関係なく邪魔な者は切り捨てる、あの、何者も寄せつけない……」


 ウン?ちょっと待って。いまアケミっぽく喋ったつもりだったけど、これ普通にマイナス発言だよね?正義の味方に悪の親玉の残酷さ吹き込んで、互いの溝をより深めてるよね?


「……何者も寄せつけない、と思っていたけれど、そうでも無いかなと思うこともあって、例えば最初は失敗した奴は消すって感じだったけど、まあ今でも基本姿勢は変わってナイかもしれないけど最近はちょっと止まってくれたり話聞いてくれる事もあって、何かそうゆうの見ると、あ、成長してるのかな?って思うよね。あとナンダカンダまっすぐ!こないだだってホラおたくらも聞いてたでしょ?キツネ王に向かって“宇宙警察と繋がってるのか”って、普通言えないよ、大人だったら何かゴチャゴチャ前置きして相手の様子探ってってそんな感じでしょ?あの人ないから、そうゆうの。一見冷徹非道キャラに見えるけど心はめっちゃピュアなんじゃないかと思うよ」

「「「……」」」

「……まあ、尻が青い坊やたちには、まだ分からないでしょうけど。ホホッ」



 ……



 ダメか?ダメだったか?軌道修正失敗か!?


「なるほどなあ……」

「え?」

「そうゆう見方だったら、そうだよなあ」

「??」


 ハラハラしていると、ふと、赤星くんが得心したように口を開いた。……なんだろう、何に納得したんだろう?


「俺からは、血も涙もない自分勝手な奴に見えるけど、あんたの話聞くとそれだけじゃない気がする」

「!」

「なんでデストロイは星を消したいんだ?」

「……それは」

「今度はちゃんと教えてよ。俺たち、ぜったい真剣に聴くから」

「(あ)」



“お前たちの目的はなんだ!”


“……デストロイ様の野望は計り知れない。お前たちには到底理解できまい”



 そういえば、前に聞かれた時は全然わからなくて誤魔化したっけ。


「……」

「……」


 赤星くんの大きな瞳はいつもと変わらず真っ直ぐだ。……これは逃げられないな。フルフェイスヘルメットしてたらアレだけど、この目で直に見られたら余計なものはつけずに、ストレートに答えなきゃって思う。……でも、なんて答えよう?ロイが言ってた事をそのまま伝える?“そのために生まれてきたから”って。いやでもあれちょっと違うと思うんだよな。本人が本気で言ってることは間違いないんだけど、本当にそうなのかって聞かれると私は肯定しがたいというか……あーモヤモヤするっ。あ、そういえばこないだアタルくんが言ってたことが何か近い気がして……


 あ。


「……きっと、あの人も知らないのよ」

「え」

「それがやるべき事だ、生きる意味だと思ってやってる。でも、実はそれって自分で選んだものじゃない」

「!」

「知らないのよあの人は。自分が何を好きかってことも、好きな事をやっていいってことも。一つの世界のなかで必死に生きてる。でも違うじゃない、世界って一つじゃないじゃない、人の数だけそれはあるのよ。だから喜びも悲しみも感じ方は人それぞれ。誰があってるとか間違ってるとかじゃない。色んなものがあるんだって、そのどれも本当なんだって、そうゆうことを知って、あの人にはどこに行きたいか考えて欲しい」


 そうだ、ロイは自分でも知らないんだ。知らないことも、知らない。生まれた時からやる事が決まっていて、全力でやってきた。それは悪いことじゃない。非難されることでもない。でも……やっぱり勿体ないよ。だってこの世って、もっともっとなんでもアリなんだよ。



“世界は日々増えていくが、最近はどれも似たようなものばかりでな。正直飽きた”


“話に新鮮さを与えるため、他の物語の登場人物を別の作品に送り込んで結末を変えさせるという、画期的な遊びなのでごわす”



 ……私はそのために来たんだ。誰かが考えた“もうあるもの”に乗っかるんじゃない。一人一人にちゃんと向き合って、自分の力で考えて、本当にいいと思うものに向かって一歩ずつでも進んで行く。


「「「……」」」

「(……)」


 あ、ってゆうかだいぶ脱線しちゃったな。なんか私の思いの丈を述べるパートになってしまった。どうしよう、この後どう振る舞おう?いや小市民・朱美が言ったんならまだよかったんだよ。でもよく考えて、私いまドロ〇ジョだから。ドロ〇ジョが語っちゃったワケだから。ああ、ゴメンよみんな。ちょっと待って、今キャラ作り直すから(本日二回目)


「ありがとう」

「え」

「話してくれありがとう」

「……」


 そうお礼を言った赤星くんの瞳は、やっぱりすごく真っ直ぐだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ