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悪役と一緒。  作者: 道野ハル
なんだかんだで3クール目!
24/32

カミングアウト



「……どうゆうことだ」

「は?」


 柄にもなくちょっとセンチメンタルになっていたら、真上から低い声が聞こえた。え、ってかこの声って……



 スッ



「……」

「あれ、ここどこ?」

「……」


 顔を上げたら至近距離にコバルトブルー。下を見ると……ロイの膝が。うん?これはつまり……


「!!、失礼しましたぁぁっ!!」


 なんてこった!アジトにパァァしたら、まさかのロイの膝の上に到着してしまっていた!強制お姫様だっこじゃん!!うわっ、恥ずかしい!32歳じゃ全然絵にならなっ



 ガシッ



「え」



 グイッ



「!」

「……」


 慌ててどこうとしたら、手首を掴まれて引き戻された。……目の前には青い瞳。息がかかるほど、近い。


「……お前は誰だ」

「え……」

「何者だ」

「……」


 ロイの目は真剣だった。そして少し揺れていた。……なんて、答えればいいんだろう。どういうふうに言ったらロイのことを傷付けないで、真っすぐ伝えられるだろう?



 ……



「……信じてもらえないかもしれませんが、私はこことは違う世界から来ました」

「……」

「そこでは、デストロイ様は“悪役”と呼ばれています」

「……悪役?」

「多くの人から恐れられ、敵だと思われてしまう存在です」

「……」

「私も、最初はデストロイ様をそうゆう目で見ていました。でもすぐに、それは違うと思いました。だって、貴方は真面目で努力家で、まあちょっと視野が狭いなって思うこともありますけど、でもそんな、そんな一人の人間なんです。気に入らない奴は消す、でも私を助けてくれたりもする、それって、決して理解できないことじゃない」

「……」

「私には使命があって、それを終えたら元の世界に戻らなければなりません。たぶん、あと数か月……一年はいないと思います。その間に、デストロイ様には誰かと繋がって欲しい。だって、この広い宇宙で独りでいるのはつまらないし、勿体ないじゃないですか。繋がった人の数だけ、世界って増えるんですよ。星を消すより、世界を増やしていった方が面白そうじゃありませんか?」

「……」

「……」



 フッ



 細い指から力が抜けて、手首が解放された。


「出て行け」

「……」

「持ち場に戻れ」

「!、はい。あ、あと……」

「……」

「さっきは、助けて頂いてありがとうございました。ご恩返しできるよう、これからも頑張ります!」



 ぺこっ



 ちょっとばかし強引に明るい空気を作って、私はロイの間を後にした。





 四日後。



「デ、デストロイ様!モニター上に惑星017が現れました!!」

「……」


 アタルくんが言った通り、宇宙空間に再び地球が出現した。その光景にオペレーター室はてんやわんやの大騒ぎだ。でも事情を知っているロイと私は冷静……じゃないな私は。彼が次にどんな行動に出るのか朝から心臓をバクバクさせていた(そしてやはり中には入れないので、廊下でひっそりソワソワしている)。……やっぱり巨大ロボで直接闘いに行くのかな?だとしたら、すぐにアタルくんに連絡しなくちゃいけない。



 ……



「なぜ今まで017が見えなかったのか、原因を究明しろ」

「!か、かしこまりましたっ」



 くるっ……コツ、コツ



 それだけ言うと、親玉はモニターに背を向けて部屋を出て行った(もちろん私は全力で身を隠した)。……アレ、それだけ?いやいや、油断してはいけない。とりあえず原因究明をオペレーターチームに任せて自分は巨大ロボに搭乗する手筈かもしれない。となると、科学班か?あ、ヤバ、今そっちに行かれたら私が書類整理をサボッていることがバレてしまっ



 コツ、コツ、コツ



「(……)」


 あ、科学班の方向じゃない?巨大ロボ乗らないの??



 コツ、コツ……ギッ、バタン



「(……)」


 クローズ・ザ・ドア。ロイ部屋に入られてしまわれた。



 ……


 ぐにゃ~



「!」


 えっ、なにこれ、どうした!?なんか扉が歪み始め……あ、また貧血??いやでもあの時とは違う感じが



 ぐるっ


 ぐるぐるぐるぐる~っ!



「!?」


 なんだこれ!?回る回る、世界が回る!え、どうなってんの!?ちょ、誰か止めてっ






 ピタッ


 ……



「(……?)」


 お、止まった。止まったはいいけど……何処だここ?不思議な模様の絨毯に沢山の本棚……ん?あ、知ってるぞ。これ巨大図書館だ。ってことはアレだ、そのうちアイツらが……



 どろんっ



「「「お~そ~い~(でごわす)!!」」」

「あ」

「久しぶりである!山本朱美!」

「あー、やっぱり貴方たちですか」

「おや、だいぶ塩対応だな」

「こないだも電話で話したから久しぶり感が薄いのでごわす」


 確かに、考えてみればゆで卵(自称・神)たちに生で会うのは久しぶりだ。あ、卵だけに生たまご。なんつって。


「あの、なんですか?……あ、もしかして最終回がきちゃっ」

「思い上がりもハナハダすぃ~っ!!」

「へっ?」

「逆、逆!キミは進むのが遅すぎるのだよ!」

「もう、3クール目に突入したでごわすよ!」

「え」


 なんだよクールって。知らないよそんなの。


「あ、じゃあアレですか。私いま職員室に呼び出されてる感じ?」

「そうゆうことである!」

「このままだと留年だぞ」

「え、留年とかあるの!?」

「ないでごわす」

「……(なんで言ったんだよ)」

「コホン、今後の展開を早めるためにも、今から神の力を行使するのであーる!」

「え?」

「我々の力を使って何かちょっとイロイロやって……ポリスメンズがキミを誘拐したことにする!!」

「は!?」


 誘拐だと!?



 ビシッ!



「ハイ!先生!」

「うん、なんだね山本くん」

「私、誘拐されるヒロインって嫌いなんです」

「ほう」

「特に格闘技とかの特殊能力を身につけていて普段めちゃくちゃ強いのに肝心な時に攫われて主人公に迷惑をかける、そんな女がイヤなんです」

「フム」

「なので、誘拐されるのだけは断固反対いたします!!」

「「「断る!!」」」

「なんで!」

「第一、キミはヒロインではない!」

「!」

「第二、主人公に迷惑を掛けるのではない、主人公たちに攫われるのだ!」

「!!」


 え、いや、確かにそうだけど、なんか違くない!?大事なトコそこじゃなくないっ?あ、私が文句つけたのがいけなかったのか!


「いやいや、待って待って、そんなことしても何にもならんて……」

「とりあえず脅迫状つくってデストロイに送りつけーる!」

「ちょっ」

「ハイ、キミはこれから地球署に転送するからね」

「なに地球署ってっ」

「あ、あとテレポーテーションの能力は今日から4日間使えないようにするでごわすっ♪」

「ちょ、なんだお前ら!!ダメでしょ、そんな簡単に人を弄んじゃっ」

「「「いいんだよ、神だから」」」

「……」


 なんも言えねえ。





 地球。



「は」

「え?」

「ええっ!?」

「……」



 どーん



 どーん、っていう効果音が合ってるのかどうか分からないけど、気が付いた時、私はあの恥ずかしい恰好で四角い牢屋の中にいた。ロープでグルグルに巻かれたスマキのような状態で。そして鉄格子の向こうには、なぜか変身前のアタルくん、リュウくん、赤星くんが立っていた。ちなみに彼らはいつもの学生服じゃなく、それぞれのカラーに因んだカッコイイ警察の服を着ている。


「……いつ、ここに入った?」

「……」

「誰に捕まった?」

「……マア、イロイロアッテ」


 分かんないんすよブルーさん。こっちが聞きたいとこなんですよ。いや、確実にあの神々の仕業なんだろうけど、これどうゆう状況なの?リュウくんたちのリアクションから察するに、私この(てい)でいきなりここに現れた感じ?ソレただの痴女じゃん。変態じゃん。え、どうすんのこっから?なにも思い浮かばないよ??



 ジッ、ジジジッ……



『銀河504から地球署へ、地球署応答せよ』

「あ、ハイ!」


 フリーズしそうな思考を何とか維持していると、ふと、ノイズの入った声が聞こえた。……これは無線?音源は赤星くんの左肩だ。赤星くんはそこから小型の機械を外すと慌てた様子で返答した。


「こちら地球署っ、どうぞ」

『さきほど銀河・北・50地点で妙な通信を傍受。送信元不明、送信先・惑星066デストロ星』

「「「!」」」

「デストロ星!?」

『以下、通信内容。“デストロイザー・アケミの身柄を拘束した。返して欲しければ巨大ロボで地球署まで来い。来なければ二日後に女は処刑する。ポリスメンズ”』

「!なっ」

『この情報は真実か』

「いやっ、その、あの」

「ユウジ、貸して」

「お、おうっ!」



 スッ



「失礼、こちらポリスグリーン。当件、何者かの策略と思われる」

『……詳細を述べよ』

「16時29分、地球署、留置所にてデストロイザー・アケミを発見。拘束されているものの、その経緯、一切不明」

『……』

「よって、地球署もしくはポリスメンズに怨恨を抱いた何者かの策略と推測する」

『了解。こちらは引き続き周辺を調査する。地球署は警戒を怠るべからず』

「了解」



 ブツッ



「ア、アタル!今の話ほんとかよ!?誰かが仕掛けた罠だって……!」

「おそらく、ね。……デストロイザー・アケミ、お前は本当は何も知らされて無いんじゃないか?」

「……」

「……まあ、この状況じゃ話さないか。ユウジ、リュウ、席を外してもらっていい?」

「!いや、危ないだろ!こいつ爆発魔だぞ!?」

「危ないのはこの人も同じじゃない?」

「え?」

「目の前に宿敵が三人もいたら、やっぱり恐いんじゃないかな」

「!!」

「……ユウジ、行くぞ」

「おう……」



 コツ、コツ、コツ……


 ……


 スッ、……ピッ、ピピピ、ピッ



 赤星くんとリュウくんが去るとアタルくんは入口に向かい、扉の横にあるタッチパネルに指を滑らせた――そして再びこちらに戻ってくると、私の前で膝を折り、コンクリートに腰を下ろした。


「……大丈夫ですか、山本さん」

「……」


 ああ、アタルくんのやわらかい声、久しぶりに聞いたなぁ。




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