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悪役と一緒。  作者: 道野ハル
そろそろ2クール目?
10/32

ああ、中間管理職



 翌日。



「はあ~」

「アケミ、どうしたウィ?」

「あ、カッシー先輩」


 ヤバヤバ、ため息聞かれちゃった。そんなセンチメンタルなキャラじゃないのに。


「いや、全然大したことないんですよ。ただ、あわよくばタイムリープして自分の妄言を取り消したいなって」

「ウィ?」


 そう、昨日ロイが去った後、アクロス班長に複雑な視線を向けられたことで私は己の過ちにハッと気付いてしまったのだ。


 なんか私、告白したよね?


 いや違うんだよ、そうじゃないんだよ、あれはロイのザシュリを止める為に仕方なく発した言葉であり……ってそれはそれで最悪だな。我が身カワイサに人の心をもてあそんだ的な。いや違う、命の心配はしてない、だって不死身だもん。ただ、あそこでシャットアウトされるのは勿体なかった(?)というか、ホラめずらしく奴が質問してきたもんだから、私の性分的にそれなりにご満足頂ける回答をお返ししたかったというか、だからアレだ、とにかく不純な動機じゃないんた。ちゃんと他人を思いやったうえでの……


「散歩でも行ってくるウィ」

「へ?」

「体動かした方がスッキリするウィ」

「……」


 え、カッシーめっちゃイイ奴じゃん。悪役なのに。……でも確かにその通りだ。体動かそう。こんな暗い所でウジウジしてるからいけないんだ。


「先輩、ありがとうございます」

「出世払いウィ」

「あはは、いつになるやらですけど!」


 こうしてカッシーから笑顔と元気をもらった私は、大きくブンブン手を振って散歩に最適なお日様の下……地球に向かったのだった。





 一時間後、地球。



「山本さん、あなたは一体何者ですか?」

「え」


 あれ、なんだっけ。なんでこうなったんだっけ?


【これまでのあらすじ】

 カッシーに散歩をススメられた私は、バイト先のご近所をとりあえずグルグル歩き回った。その効果は抜群で、30分もすると頭がスッキリして、“もう言ってしまったものはしょうがない。大事なのはこれからどうするかじゃん?”と広大な気持ちになってきた。で、それなりに歩いたのでそろそろ休もうかと公園のベンチに腰をおろしたところ、赤星くんのお仲間・アタルくんがやってきて謎の質問をボンとぶつけてきたのだった。


 そうそう、それで今に至るのだった。


「うん?突然なに??とゆうか学校は?」

「今日は日曜日です」

「あ、そっか」


 アジトとこっち行き来してると曜日感覚狂うんだよなー。そうか、今日は休日なのか。で、なんだって?なんでいきなりそんな質問??ってゆうかアタルくんとは殆ど話したことないからどうゆうテンションで接すればいいかイマイチ分からないのですが。


「実は俺、前にこれを拾って」

「え?」


 そう言うとアタルくんは感情の読み取れない表情で胸ポケットから一枚のカードを取り出した。……って、あれ?それは、


「!、私のマイナンバーカード!?」

「はい」


 うそっ、落としてたんだ!?バイトの面接以外で使う機会なかったから全然気付かなかった。マズイマズイ、大問題だ!


「アタルくんが拾ってくれたんだ?ありがとう!フロアで落としたのかな?」

「いいえ、ファミレスから大分離れたオフィス街で拾いました」

「え?」


 漆黒の瞳がじっとこちらを見る。……なんか観察されてる気分だ。いや、ってゆうか何でオフィス街?誰かに持っていかれた??


「実は一ヶ月くらい前に、その場所で事件があったんです」

「事件?」

「はい。突如、未確認生命体が現れて建物や人々に危害を加えました」

「え!なにそれ、恐……」


 うん?ちょっと待って。もしかして、それって……


「一体は倒されましたが、実は現場からもう一人逃げ去った者がいて、彼女が消えた場所に山本さんのカードが落ちていたんです」

「……」

「山本さん、下の名前は朱美っていうんですね」

「……ウン」

「消えた彼女も、アケミと名乗っていました」

「……」

「あなた、デストロイザーじゃないですか?」



 ……



 バレた。現場にマイナンバーカード落として正体がバレた。え、そんなことある?そんなバレ方ってある?


「……」

「……」


 切れ長の一重は抜かりなく私をロックオンしている。きゃあっ、イケメンを独り占め……って、テンション上げてる場合じゃない。ヤバイよこれ、徹底的に胡麻化さないと。


「えっと、ちょっと話が見えないんだけどー」

「……」

「その事件があったのはニュースで見たから知ってるけど、なんでそこに私のカードが落ちてたのかは全然分からないよ。それに、そのデス……なんとかって何?何かの犯罪グループなのかな?」

「……つまり、山本さんは、その場所には行ってないってことですか?」

「うん」

「そうですか」



 スッ



 あ、普通に返してくれた。


「すみません、変なこと言って。俺、昔からSFとか好きで不思議なことがあるとつい色々想像しちゃうんです」

「あ、そうなんだ!イマジネーション豊だねえ」

「ええ。失礼なこと言ってすみませんでした」

「ううん、全然。また食べに来てね!」

「はい」



 ぺこっ


 タタッ



 律儀に頭を下げると、アタルくんは初夏の風のように爽やかに去って行った。……ふぃ~、危ない危ない。超大変なことになるとこだった。あー、なんか今の危機に比べたら、告白したとかしないとか輪をかけてどうでもよくなってきたわ。私は今、平和に生きてる。それだけで充分じゃないか。


 そんな感じで悟りを開いて、私は公園を後にした。





 三日後。



「あ、山本さん。こちら新人の緑川くん!」

「え」

「今日から入りました、緑川アタルです。アルバイトをしたことがないので色々ご迷惑お掛けすると思いますが、よろしくお願いします」

「ははっ、しっかりしてるね!とても赤星くんの友達とは思えないよ。とゆうわけだから山本さん、ホール業務教えてあげてね」

「あ、わかりました」

「よろしくお願いします」


 今日から新人さんが入るって聞いてたからどんな子かと思ったら、まさかのアタルくんだった。ちょ、大丈夫なのポリスメンズ?みんな副業しなきゃいけないほど安月給で地球守らされるの?……って違うか。アレかな、私のことまだ疑ってるのかな?まあ警察(しかも宇宙規模)だもんね、そんな簡単に容疑者のこと信じないよね。


「山本さん、俺は何をすれば?」

「!あ、じゃあまずは卓番……席の番号を教えるね」

「はい」

「入口から、時計回りに1,2,3……」



 じっ……



 真剣な眼差しで席の順番を追うアタルくん。……とりあえず業務を覚える気はあるみたいだ。じゃ、こっちもちゃんと教えよう。万年人手不足だから早く一人前になってほしいしね。


「なるほど。入口からは時計回りだけど、お手洗い越えると反時計になるんですね」

「そうそう!ちょっと面倒くさいよね~」

「そうですね」

「よし、じゃあ次は食器下げてみよっか」

「はい」



 ウィーンッ



「!おっ、アタル働いてるね~、どう調子は!?」

「!、ユウジ、リュウ」

「おう」

「(あっ)」


 お馴染みの元気な声に顔を向けると入口に制服姿の赤星くんとリュウくんが立っていた。いやあ、一緒に並んでるとやっぱり眩しい……って、違う違う、目を保養させてる場合じゃない。えーと、なんで二人がここにいるんだ?アタルくんの初出勤を見にきたのか、それとも……


「山本さん、12卓空いてる?」

「!あ、うん」

「やった!座っちゃうね」

「どうぞどうぞ〜」



 ガタ、ガタッ


 パラパラ……



「んー、やっぱシラノ風ドリアかな~」

「相変わらず貧乏人だな」

「い、いーじゃん!うまいじゃん、これ!」

「(……)」


 ……二人とも普通にメニュー見てる。


「……あの二人、アタルくんが働いてるとこを見に来たのかな?」

「多分そうですね。ぜったい面白がってます」

「あははっ、なんか楽しいもんね。友だちが働いてるお店に行くのって」

「……」

「どしたの?」

「いえ、確かにそうだなと思って」

「でしょ?」


 うん、これは本当なのかもしれない。だってリュウくんはともかく、赤星くんだったら絶対顔に出そうだもの。アタルくんのちょっと罰が悪そうなリアクションもリアルだし。よし、とりあえずアタルくんだけマークしておこう。対象が一人なら多分なんとかなるだろう。




 三時間後。



 ざわっ……



「(うん?)」


 業務内容をスポンジのごとく吸収していくアタルくんに、もはや教える喜びを感じ始めていた頃、ふいに店内がザワつき始めた。みんな、何か見てる?好奇の視線を追っていくと――そこには赤星くんとリュウくんがいた。


「っだから、そんな言い方しなくたっていいだろ!」

「俺は事実を言っただけだ」

「そんなふうに言われてもヤル気でないっつーの!!」

「お前のやる気なんて知るか」

「なにーっ!?」


 ああ、絆は深まってもやっぱりこうゆうやりとりは続くのね。そこまで深刻じゃなさそうだけど。でもこれ以上続いたら他のお客さんの迷惑だから、ここは最年長の私が止めに行……



 スタスタ


 ポンッ



「(!あっ)」

「ユウジ、落ち着いて。他の人こっち見てるよ?リュウも煽らないの」

「「!、……」」

「俺そろそろ退勤だから、一緒に帰ろ。ちょっと外で待ってて」

「……おう」

「ああ……」


 さすが仲介グリーン。お見事です。そうだよね、私の出る幕じゃない。こうゆう時はアタルくんが行くのがお決まりなんだ。



 タタッ



「山本さん、時間になったから緑川くんとあがっちゃって!」

「!あ、はい。……アタルくーん!お疲れさま、退勤の仕方教えるね」

「あ、はい」


 アタルくんは私の声に振り返ると、二人に背を向けて何事も無かったような顔でこちらに戻ってきた。



 スタ、スタ……スタ

 


「ふぅ……」

「(!)」

「あ、どうすればいいんですか?」

「あ、うん、まずバックヤードに行って……」

「ええ」


 裏に回り、タイムカードのきりかたを教えて一緒に退勤する。更衣室は男女別になってるから、アタルくんとはこの事務室でサヨナラだ。


「山本さん、今日は色々教えて頂いてありがとうございました」

「とんでもない!アタルくん、覚えるの早いから教えるのスゴイ楽だったよ。あっ、でも無理はしないでね。忘れちゃったり分からないことがあったら何回でも同じこと聞いてくれていいから」

「!……はい、ありがとうございます」


 アタルくんは一瞬目を丸くすると、彼らしくない、どこかぎこちない笑顔で笑った。……ああ、もしかしたら、さっき感じた違和感は当たってしまっているのかもしれない。


 何だかこのまま別れるのはいけない気がして、私は思いきって先ほどの話を切り出してみた。


「い、いつもあんな感じなの?」

「え?」

「赤星くんとリュウくんって」

「ああ……はい」


 切れ長の瞳に、僅かに影が差す。きっと、余計なお世話だ……。だってアタルくんとはまだそんなに話してないし、三人の関係もちゃんと知ってるワケじゃない。だからここで第三者も甚だしい私が何か言うのはお門違いで、誰のためにもならないと思う。……でも、だからって何も言わなくていいのか?それも、なんか違う気がする。


「嫌だよね。ああゆうの」

「え?」

「自分の好きな人同士が揉めてるの」

「……」


 いきなりこんなことを言って確実にキモイおばさんだ。でももう喋り始めちゃたし、続けよう。発した言葉には最後まで責任を持たないと。


「……私、一回就職したことあるんだけど、そこの上司二人がすごく仲悪かったんだ。でも、私はどっちの人も好きだったの。タイプは違うけどそれぞれに尊敬できるところがあって……だから、そんな二人が言い合いしてるのが嫌で、よく間に入って明るく振るまったり、陰で別々に愚痴聞いたりしてた」

「……」

「その時は、自分が緩和剤になって平和が保たれればいいって思ったし、そうゆうことが出来るのってちょっと才能じゃない?って誇ったりもした。でも、きつかった。そのうち言い合いを見る度に体が縮まるようになって、だんだん会社に行くのも嫌になって……辞めちゃった」

「……」

「私はまだ逃げるっていう選択肢があったけど、相手が親友とか家族だったら苦しいよね。離れようと思えば離れられるけど、なんかそうゆうわけにもいかない、みたいな」

「……」

「間に入ったり、誰かのこと考えて動いたりしてるとたまに思うの。じゃあ私のことは一体誰が見てくれてるの?って。同時に、そんなふうに見返りを求めてる自分が嫌になる。けっきょく偽善者かよって。でもさ、でも思っちゃうんだもん。それっていけないこと?いや、いけないとか、そんな気持ちないんだよ。疲れたらイライラするし、怒られたら凹むし、嫌なことされたらお前も不幸になれって思う時もあるって、あってもいいんだって!生まれた気持ちを否定したりひん曲げたりしなくていい、それで関係ない人に迷惑掻けるのはダメだけど思ってるぶんには問題ないっしょ?悲しんでこう!荒んでいこう!!こうあるべきなんてないんだからっ!!」



 ドンッ!


 ……



 うわ、右手がジンジンする。そりゃそうだ壁を叩いたんだもの。……ちょ、これ大丈夫かな?地味に骨折れてたりして



 ぽたっ



「(え)」



 ぽたっ、ぽたっ



 いつの間にか茶色い床に小さな染みができている。……これは、何が起こってるんだ?息を潜めてゆっくり視線を上に向ける。すると――アタルくんが無表情で泣いていた。


「……ア、アタルく……」

「すみませんでした」

「え?」

「俺、山本さんのこと疑ってて、それでここで働くことにしたんです」

「!」


 あ、やっぱりそうだったんだ。


「でも、俺が勝手に疑ってただけなので……ユウジとリュウは関係ないです」

「そう……」

「……ありがとうございます」

「え?」

「なんか、俺だけじゃないんだなって、安心しました……」

「……」

「疑って、本当にすみませんでした」

「!」


 アタルくんは声をつまらせてそう言うと、項垂れるように頭を下げた。そ、そんなに申し訳なさそうにされると、こっちの罪悪感が半端ない……。普段さわやかで落ち着いている彼だからこそ、この心苦しそうな姿にとてつもなく胸を抉られる。だってアタルくんは何も悪くないのに、嘘ついてるのは私の方なのに、なのに、なのにそんなっ


「っごめんっ!!」

「え?」

「私デストロイザーです!!」

「……え」

「……」

「……」


 良心の呵責に耐えられずに、私は暴露した。……ああ、この物語は一体これからどうなってしまうのだろう。


 


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