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悪役と一緒。  作者: 道野ハル
はじまり、はじまり
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脇役上等




 さあ 明日をさがそう 明日をさがそう♪


 この世界は愛と希望に満ちあふれている♪


 さあ 明日をさがそう 光の海へ漕ぎだそう♪



 中学の時、秋に合唱大会というものがあった。クラス一丸となって歌を練習して、本番で順位を競うのだ。この時期の男子は、大半が一生懸命やるのをカッコ悪いと思っているお年頃で、どのクラスも奴らの参加に手こずる。我が二組も例外ではなく、そんなメンズをグイッと引き込み、指揮者のコを中心に毎日必死に稽古したけど……優勝したのは隣のクラスだった。

 

 そしてそのクラスは、たまたま担任が不在だった。

 


「ひっくっ……優勝できてっ、嬉しいですっ!こ、この優勝をっ、入院してる鈴木先生にっ、送りたいです!」

「三組、よく頑張ったな!」

「鈴木先生も喜んでるぞ!!」

 


 パチパチパチ

 

 パチパチパチ……

 


 体育館に響く惜しみない拍手。その時に思った。ああ、自分は悪役なんだって。いや、悪役というのは言い過ぎかもしれない。でもこれが映画だとしたら間違いなく主役は三組で、他のクラスはその障壁となる単なる脇役に過ぎないのだ。


 人は、誰でも自分が主人公だと思って世界を見る癖がある。でも私はそれじゃないって、この時初めて気が付いた。

 

 しかし、だからといってそのあと道を踏み外したわけじゃない。フツーに卒業して高校行って大学行って、一回就職もしたけど人間関係がちょっとアレだったから会社辞めて、前働いてたバイト先に戻ってきて今フリーターって感じだ。

 

 彼氏はいない、恋愛もしていない。でも友達いるし家族は優しいし、毎日生きてて普通に楽しい。唯一の気掛かりといえば老後の資金だ。実家暮らしだから今までガチで稼いでこなかったけど、30過ぎたらさすがにヤバイなって気がしてきた。ああ……これから毎月二万ずつでも貯めていくか。ポーンと大金をつくることは不可能でも、地道にコツコツやっていくんなら多分私にもできるさ。うん、頑張れ自分。

 

 そんな感じで、山本朱美(32)はごくごく平凡に生きてきたのです。飛び抜けて良いことも悪いこともせず、ほんとフツーな感じで。それで何も問題なかったし、これからもそれでいいと思ってた。思ってた、のに……

 

 

 

 ちゅどーん!

 


「おーほっほっほっ!今日こそその息の根を止めてやるわっ、覚悟しろ、ポリスメンズ!」 

「くっ、またお前か……デストロイザー・アケミ!」



 ザザッ


 

 いつの間にか、私は自分より遥かに年下のイケメンたちの――悪役になっていました。

 

「リュウジ、アタル、変身だ!」

「ああ」

「言われなくてもっ」

「させるか!やっておしまい、お前たちっ」

「「「「「ピギィィィッ!!」」」」」

 


 どん!どどーんっ!

 


 ナゼこんなことになってしまったのかというと……“この物語”を数話ほど遡る必要がある。

 



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